2013年8月、在宅血液透析(HHD)導入
2021年5月現在、約8年が経過。
"6連日血液透析"(週6回/3h ※㈰のみ4h)を行うようになって約5年。
HDP(Hemodialysis product)
「1回透析時間」×「回数²」
で計算され
実際の代謝物除去量ではなく、時間と頻度だけで評価される
透析スケジュールに注目した適正透析の指標がありますが
この「HDP」の観点からは
頻回血液透析(Dairy Hemodialysis)は、非常に有効と言うことができる。
[su_box title="参考データ" style="soft" box_color="#31ff31"]
- 施設血液透析での標準的な血液透析(週3回、4時間)
- 長時間血液透析の一例(週3回、8時間)
- 現在の私の透析スケジュール(週6回、3時間※週1回のみ4時間)
それぞれのHDPを算出してみると…
- 36(=3²×4)
- 72(=3²×8)
- 108プラスα(=6²×3)
[/su_box]
一方で
頻回血液透析を行う上で、警戒すべきは
VA(バスキュラーアクセス)に関するリスク
注意ポイント
頻回の穿刺や接続による❝VAの荒廃❞
です。頻回穿刺による
- 血管損傷
- 乱流の増加
が、増悪因子として関与していると考えられています。
参考文献
日本透析医学会雑誌「頻回・長時間透析の現状と展望」
頻回血液透析による大きな恩恵を享受する一方で
❝VAの荒廃❞というリスクを抱える私にとって
「新しい穿刺部位の開拓」は、ある意味必須なわけです。
今回は、直近の"新大陸上陸作戦"について
そこに至る経緯から
実際の穿刺、そしてその後について
【在宅透析と穿刺】"新大陸上陸"!? 新しい穿刺部位開拓までの歩み
キッカケ
現在
月に2~3カ月に1回の頻度で
HHD外来とは別に"シャント外来"に通っております。
"シャント外来"というと、何やら特別なことに思われるかもしれませんが
2002年末に先行的生体腎移植手術を行った私にとっては、自然な流れ。つまり
腎移植手術時の主治医に、現在も"お世話になっている"(診ていただいている)ということ。
その主治医とはもう、20数年来の"お付き合い"
全幅の信頼を寄せる医師ですので、外来時は
シャント肢の状態を診て頂くにとどまらず
さながら"メンタルカウンセリング"が如く
様々な悩みを打ち明け、相談させて頂いております。
さて
当該"シャント外来"にて、ここ1~2年前頃から
「(穿刺のし過ぎで)この辺は、もう刺さない方がいいかもね」
という領域が、いくつか生じてきた。
一方で
「この辺りなら、刺せるんじゃないかな?」
といった"新大陸"の提示も頂いておりました。
ただ
"他者穿刺"(透析施設スタッフが患者のシャント肢を穿刺すること)にはEASYな場所でも
"自己穿刺"の立場からは「NOT EASY」な場所が殆ど…
他者穿刺と自己穿刺との差異については、下記ブログをご参照頂きたいのですが
【在宅透析と自己穿刺】自己穿刺を行う者だけが感じるであろう 「自己穿刺特有の難しさ」
いざ刺す!となると、やはり尻込みしてしまうのです。
とはいえ、いつまでも先延ばしするわけにもいきません。
意を決して"新大陸へ上陸"するわけです。
初穿刺、そして成功
さて、いよいよ初穿刺💉
まず場所ですが…
[su_note note_color="#feaaad"]
返血側脱血部位
上腕の、ほぼ肩口の辺り
[/su_note]
自己穿刺をする上で困難な点は、主に2つ。
- 駆血
- 穿刺部位と"目"との距離感
駆血
まず前提として
施設血液透析スタッフの方々が使用される駆血帯と
私が使用しているものとの違いがある。
おそらく、施設血液透析スタッフの方々が使用される駆血帯は、これ?
(画像転用元:infirmiereアンファミエ)
一方、私が使用しているタイプは、これ
(画像転用元:infirmiereアンファミエ)
一見して明らかなのは、駆血の際の圧力のかかり方。
ゴム管のような形状の駆血帯に比べて
私が使用する駆血"ベルト"は「面」で圧力がかかるので
その力がやや分散する(ように感じる)。
上腕のほぼ肩口付近に穿刺するとなると
駆血帯(駆血ベルト)は、脇の下を潜らせることになる。
これは実際にやってみて頂かないと分かりずらいと思うのですが…
駆血"ベルト"では、十分な駆血ができずらい。
"できずらい"というのは、(私にとっては)
血管を十分に隆起させることができない、ということです。
穿刺をする上で
血管が十分隆起し、一定の"張り"があることは重要(少なくとも私にとっては)。
この点、やや不安が残る。
穿刺部位と"目"との距離感
穿刺部位が"中枢"に近づけば近づくほど
必然的に、自己穿刺者の「目」の位置との距離は近くなる。
この感覚は「他者穿刺」では、ないでしょう。
穿刺目標との距離が近いこと、本来は良いことなんでしょうが
"近すぎる"というのも、自己穿刺する上では、結構厄介なんですよ💦
いよいよ穿刺、結果は…
一発で、仕留めてやりましたよ!!
血管の隆起・張り具合は、確かに不十分でしたが
そこは「在宅血液透析導入8年」で培った技術でカバー😄
ただ、一つ厄介な問題が…
通常(私の場合)穿刺から血液回路接続までの順序は…
- 脱血側穿刺
- 返血側穿刺
- 返血側血液回路接続
- 脱血側血液回路接続
今回、"新大陸上陸"ということで
穿刺の成功確率は低いと予想してまして。仮に
通常通り「脱血側」穿刺を行った後「返血側」穿刺を行って
もし"新大陸"「返血側」穿刺が失敗したら、どうでしょう?
当然、針は抜きます。
内筒(金属針)は血管をとらえていた場合などは、止血は十分行わなければいけません。
"脱血側に針が刺さった状態で"…
これは(これまで何度か経験しておりますが)あまり気持ちのいいものではありません。
そこで
- 「返血側」穿刺
- 「脱血側」穿刺
といきたいところですが。
これはこれで、少々厄介な問題がございます。
「返血側」穿刺→「脱血側」穿刺を行った"後に"
「返血側」血液回路接続を行う→「脱血側」血液回路接続、そして血液ポンプを回す…
そうすると、往々にして「静脈圧」がかなり高い値で推移します(※経験上)。
透析開始30分~1時間、ヘパリン(抗凝固剤)が体内に浸透しても
なかなか「静脈圧」は高値のままのケースが多い。
その原因は(※私の推測の域を出ませんが)
「返血側」穿刺→「脱血側」穿刺、そして「返血側」血液回路接続
この"「返血側」穿刺→「脱血側」穿刺"の間に
「返血側」カニューラ先端に"血栓"が形成されてしまう。
針先の血栓って、いとも簡単にできちゃうんですね(※私の推測の域を出ませんが)
結果、透析開始から、その血栓が邪魔をし「静脈圧」が高値となるのではないか。
対処方法は、シリンジを使い、当該血栓を「キュッと」吸い取ってあげれば解決するのですが
当然
- 一旦血液ポンプは止めなければいけないし
- クランピングチューブ及び血液回路の一部に鉗子をかけ
- クランピングチューブと血液回路との接続を解除し
- クランピングチューブにシリンジを接続し、血栓を除去…
嗚呼~面倒くさい…(これ、言っちゃだめなんですけど💦)
したがって、どうしたか。
- 「返血側」穿刺
- 「返血側」血液回路接続
- 「脱血側」穿刺
- 「脱血側」血液回路接続
としました。
「返血側」穿刺直後に血液回路を接続してしまえば
接続の瞬間、一定量の生理食塩水が針先を通って血管内に流れ込みます。
このことで、いくらか血栓形成を抑えられるわけです。
ただ、ただ…最後にもう一つ問題が…
脱血側穿刺する際、「どこでどう駆血するか」ということ。
勿論、「返血側」穿刺部位と「脱血側」穿刺部位との間に駆血するわけですが。
この時は、肘関節付近に穿刺するつもりでしたので
「返血側」穿刺部位との距離は、十分あるとは言い難い。加えて
先にご紹介した私の使用する駆血ベルトは、「ベルト」の名の通り約3㎝程の幅はあります。
(※今考えれば、前腕で脱血側穿刺すれば、それほど問題なかったですね💦)
既に「返血側」穿刺部位にはカニューラが留置されておりますので
あまり強く駆血したくない(※個人的に)。
幸い、私の肘関節付近の血管は、僅かな駆血圧力で血管が十分隆起するので
この時は、さほど支障なく穿刺することができました。
補足情報
穿刺後に心配された「静脈圧」でしたが
逆に、非常に落ち着いていた(むしろ低め)。
外来時「ここは血管真っ直ぐだし」との言葉を裏付ける結果となりました。
初穿刺後(初穿刺痕)
「新規開拓」無事成功。
"この場所"に💉打てるようになったことは、大きい。
今回の穿刺部位から前後約2㎝の領域で穿刺可能と(私個人的には)考えています。
これにより
「もう、ここは刺さない方がよい」といった領域は勿論
近年、頻回に刺している領域を「休ませる」ことができる。
「明後日(非透析日㈯を挟んだ日曜日)も、ここに刺そう😊」
しかし、しばらくは"お休み"しないといけないようです。
下記画像、ご覧ください。
穿刺後2日経過した日曜日夜(透析直前)の"新大陸"の様子です。
明らかな内出血が見られます。
穿刺の瞬間、透析開始直後、そして透析中…
痛みらしい痛みは、特になし(※穿刺時に感じる"いつもの"痛みはもちろんありますが)。
透析中、穿刺部周辺の"腫れ"も見られませんでしたので
「漏れている」との実感は、ありませんでした。
が、穿刺3日後
穿刺4日後
穿刺5日後
内出血の面積は拡がりを見せ、青紫の色も濃くなっている様子が分かると思います。
Twitterで相互フォローさせて頂いてる"KOTARO"医師からは
「ちょっと漏れたんでしょうね」
とのツイートを頂きました。
初穿刺したときに起きるやつですね!
針が刺さった瞬間にちょっと漏れたんでしょうね— KOTARO (@KotaroSuemitsu) May 10, 2021
見慣れない方からすると、非常にインパクトある状態かと思いますが
私自身は先行的生体腎移植、術前に動脈穿刺でHD
その際に前腕"全方位的に"内出血した経験がございますので
それに比べたら"可愛い"もんです。
繰り返しになりますが、痛みは全くありません。
内出血の拡がり/色の濃さは、穿刺後6日で"下げ止まった"様子ですので
日柄で徐々に吸収されていくことでしょう。
まあ、いずれにせよ、当該領域への穿刺は、しばらくお預けですね。
まとめ
新たな穿刺部位を"開拓"するというのは
心身両面において、簡単なことではないと感じております。
医療者の方々からすればEASYでも
自己穿刺する立場からは「そこはちょっと…」という領域は、多くあります。
在宅血液透析の自己穿刺において
決して多くはない穿刺可能領域の中から「ここ!」と
最終的に"ターゲット"を決めるのは患者自身。
他者穿刺と自己穿刺では、条件は全くことなる。
自己穿刺特有の難しさを理解しているのは、患者本人だと、私は思ってます。
現在のシャント肢血管を、できるだけ維持していくためには、分散穿刺はもちろんのこと
此度のような穿刺部位の「新規開拓」は避けられない。
成功/失敗がFifty-Fiftyと分かっていて
自分の腕・血管に、患者自身が針を刺す…
非常に困難なチャレンジではありますが、穿刺が成功した暁には
この上ない喜びと「解放感」「達成感」「安堵感」
様々なPositiveな感情を体感することができますよ。
[su_box title="注意!!" style="soft" box_color="#ff3145"]
新しい領域に穿刺チャレンジする場合は
必ず、事前に主治医にご相談すべきだと思います。
解剖学的知見の乏しい我々素人には
当該領域に、どのような血管が走行しているか、おそらくわかりません。
主治医から以前「ここは避けた方がよい」と言われた、その理由は
近くに動脈が走行しているから、というもの。
素人が十分な確認もせず、むやみやたらに刺して
結果、誤って動脈に刺してしまったら…
非常に危険です。
[/su_box]
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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