施設血液透析の場合、患者さんは(※経験がないので推測ですが…)
予定時間に通院し、指定されたベッド(or リクライニングチェア)で待っていれば
病院スタッフの方がベッドサイドまで来て穿刺をし、透析が開始される(かと思います。
つまり
透析を行うのに、透析装置等の準備が必要なことは知っているものの
それを「患者が行う」という発想は、ないでしょう(持つ必要もありませんしね)。
在宅血液透析(HHD)、言わずもがな 透析"前"の準備全て、患者以外、誰もやってくれません。
この「透析"前"準備」のことを「プライミング」と思わず言ってしまう場合もありますが
「プライミング」をメディカルに正確に説明すると
血液透析におけるプライミングは、ダイアライザと血液回路内の微細な塵、膜の保護剤などを洗浄、回路内を生理食塩液や透析液で充填し空気を除去し、治療が開始できる状態にすること
(引用元:一般社団法人 S-QUE研究会)
という意味。つまり一応、個人的には
"広義のプライミング"と"狭義のプライミング"とは分けて考えています。
HHD導入することを決め、実際にトレーニングを行う患者さんは(おそらく)
HHD管理医療施設側から"広義のプライミング"に関するマニュアルは頂くと思います。
ただ、逆に言えば
"HHD導入検討段階"の方は目にすることは(おそらく)ないと思いまして
今回、あくまで
「私がHHD管理医療施設で学んだ"広義の"プライミング手技」という但書はつきますが…
その全行程をご紹介致します。
Table of Contents
【在宅透析の準備】血液透析前準備、"広義の"『プライミング』ご紹介
準備するもの
- 透析液
- 生理食塩水
- 血液回路
- ダイアライザー
- ヘパリン(抗凝固剤)
- 鉗子×4本
※握力の弱い方(私がそう)は、透析液蓋を開けるための"補助具"必要
「鉗子×4本」には、一応意味がありまして。
4本というのは"過不足のない本数"、つまり作業全行程を終えた段階で
もし1本足りなければ、どこか"余計な場所"に鉗子をかけている ことになりますし
もし1本余っていれば、どこか鉗子を"かけ忘れている"場所がある ということになります。
液置換
とにもかくにも、透析装置(コンソール)の電源を入れます。
透析液 写真にあるように 我が家では透析装置の左横に置きます。実は…
妻が、前日の透析終了時の段階で備品庫から 透析液を取り出し、段ボールから"中身"を出し
透析装置の左横に置いておいてくれてます、ありがたい🙏
透析液タンクのキャップは"補助具"(開栓器)を使用します。
もしかしたら、6㍑タイプの透析液なら"素手で"開けられる方もいるかと思いますが
9㍑は、まあ無理でしょう、相当固いですよ。
透析液タンクの"開いた口"に専用のホルダーを付け
原液ノズル(透析液を吸入する役目?)を透析液ボトル内に"差し込みます"。
『液置換』ボタンを長押しします。
「透析A液と透析B液を、RO装置経由で流れる清潔な水で希釈させ
患者に合わせた濃度の透析液を生成し、透析機器本体の配管内を循環させる…」
100点満点の答えではないでしょうが、この程度の理解で患者は十分でしょう。
液置換開始、写真にあるように終了まで約10分。
その間、同時進行で 次からご説明する、透析備品の「組立て」を行っていきます。
組立て
血液回路 外袋から中身を取り出します。
写真にあるように、中身と取り出した段階では
「動脈側回路(赤)」と「静脈側回路(青)」とが"引っ付いて"いますので
それぞれを「ペリ!ペリ!ペリ!」と剥がしながら分けておきます。
まずは「静脈側回路(青)」の組立て。
「静脈側エアトラップチャンバー」を左側の"チャンバーホルダー"に取り付けます。
- 薬液注入ライン
- 静脈圧モニターライン
- 静脈側アクセスライン
- 静脈側ダイアライザー接続ライン
これらも、先の「動脈側回路(赤)」「静脈側回路(青)」と同様"引っ付いて"いますので
それぞれを「ペリ!ペリ!ペリ!」と剥がします。
「薬液注入ライン」先端のキャップとクランプを閉じ、鉗子をかけます。
施設血液透析ではこの「薬液注入ライン」は、例えば
透析終了時に造血剤(ミルセラ等)を注入するのに利用するんでしょうが
HHDは(今のところ)全く使っておりません。
鉗子をかけるのは「念には念を」という意味だと、私はとらえております。
「静脈圧モニターライン」は、先端の"トランスデューサー保護フィルター"を介して
透析装置にある"静脈圧ポート"と接続させます(捻じって)。
「静脈側アクセスライン」は長く、丸まった状態。
これも"引っ付いて"いるので「ペリ!ペリ!ペリ!」と剥がし、ほどきます。
"気泡検知器"を通して…
"静脈側患者接続部"を余液受けに固定します。
私なりのコツがあるとすれば…
丸まった状態の「静脈側アクセスライン」をいっぺんに「ペリ!ペリ!ペリ!」と剥がしほどくと
アクセスラインの長さは相当あるので
作業工程で、例えば"静脈側患者接続部"が地面に着く等、扱いにくくなる。
"気泡検知器"を通すに必要な分だけ剥がして
"気泡検知器"に通し終わったら、残りを徐々に剥がしていって最後
"静脈側患者接続部"を余液受けに固定する、というのは、如何ですか?
この時点で「静脈側ダイアライザー接続ライン」はまだ、どこにも接続していないので
私は「ブラブラ」させたままにしてます。
次、「動脈側回路(赤)」の組立て。
「静脈側アクセスライン」同様、長く、丸まった状態。
これも"引っ付いて"いるので、必要な分だけ「ペリ!ペリ!ペリ!」と剥がし、ほどきます。
「動脈側回路(赤)」と「静脈側回路(青)」と異なる点、それは
"ポンプセグメント部"を境に、役割の異なる二つの"領域"を持つ、ということ。
先ずは一方の"領域"から。
動脈側回路の"ポンプセグメント部"を血液ポンプへ取り付けますが
これ、最初は慣れないかもしれませんね。
「血液ポンプを手動で回しながらポンプセグメント部を"巻き込みいれる"」
って感じなので。 まあ、やっていくうちに慣れますよ。
左側の"チャンバーホルダー"に"動脈側エアトラップチャンバー"を
逆さまに取り付けます。
"逆さま"に取り付ける理由は
「しっかりとエアを抜くため」
と私は解釈しております。
私は、このタイミングで「抗凝固剤」を
"抗凝固剤注入ライン"先端と、ねじ込みながら接続し
抗凝固剤を、透析機器の"シリンジポンプ"に取り付けます。
抗凝固剤"内"にあるエアを抜くのにひと手間ありますが
これも、やっていくうちに慣れるでしょう。
実はこの工程
管理医療施設での作業マニュアルでは、もっと"後"に行うことになってますが
「私の」作業工程の流れでは"このタイミング"の方がスムーズなので…
「動脈側アクセスライン」は「静脈側アクセスライン」同様長く、丸まった状態。
"引っ付いて"いるのを「ペリ!ペリ!ペリ!」と剥がしほどきながら
"動脈側患者接続部"を余液受けに固定します。
ダイアライザーと血液回路との接続。
マニュアルには
"ダイアライザーの「赤」が上になるように、ホルダーへ取り付けます"
とありますが…
最終的には、写真にあるように「青」が上の状態で"狭義の"プライミングを行います。
(※ダイアライザー内のエアをしっかり抜くため?)
>ダイアライザーの「赤」が上になるように、ホルダーへ取り付けます。
の部分は、作業工程上この方が"都合が良い"というだけで
「赤」「青」それぞれちゃんと血液回路と接続し
最終形(=ダイアライザーの「青」が上)になってさえいれば良いと、個人的には思ってます。
"狭義の"プライミング
血液回路内に生理食塩水を充填させる工程です。
今一度、"狭義の"プライミングについての説明をご紹介。
血液透析におけるプライミングは、ダイアライザと血液回路内の微細な塵、膜の保護剤などを洗浄、回路内を生理食塩液や透析液で充填し空気を除去し、治療が開始できる状態にすること
(引用元:一般社団法人 S-QUE研究会)
先に、「動脈側回路(赤)」は
「"ポンプセグメント部"を境に、役割の異なる二つの"領域"を持つ」と申し上げましたが
ここでは"もう一方の領域"を使います。
生理食塩水ですが「透析液」同様
妻が、前日の透析終了時の段階で備品庫から取り出し
透析機器の"点滴棒"のフックに引っ掛けてくれてます、ありがたい🙏
"生食ライン先端針"を、生理食塩水のゴム栓部に刺し込むのですが…
その前に!!
「クレンメ」を閉じておくこと、忘れずに!!
"生食ライン先端針"を生理食塩水のゴム栓部に刺し込んだ後
"点滴筒"を押しつぶして、その中に生食を溜めるのですが
「クレンメ」閉じていないと、当然"ダダ流れ"ですので。
クレンメを開けると生食が流れ出し
先ずは「動脈側アクセスライン」が生食で満たされます。
回路内の気泡はしっかり抜き、約100㎖程度生食を流したら
動脈側患者接続部から"適当な場所"で鉗子をかけます。
"適当"と敢えて表記したのは…
もちろん
管理医療施設から頂いたマニュアルには「○○㎝位の距離に鉗子をかけ」とありますが
自己穿刺のフェーズ、クランピングチューブと血液回路との接続フェーズ
「動脈側/静脈側アクセスライン」にかけた鉗子が
患者にとって"邪魔にならない程度の位置"というのがあると思うので
HHDを継続していく中で"適当な"鉗子位置を見つけて下さい。
鉗子をかけたら、動脈側患者接続部を余液受けからはずし
動脈側アクセスラインを"点滴棒"のフックに(鉗子の握り部分を)かけます。
血液ポンプを回し(血液ポンプボタンを押し)
生理食塩水を100㎖/minを流し、血液回路内に充填させていきます。
途中どうしても
動脈側回路の"ポンプセグメント部"に大きなエアが残ることがあります。
この大きなエアの抜き方、"我流"です。
研修で教えてもらったやり方では"抜けない"場合は多々あるので…
"我流"では…
一旦、血液ポンプを止めて
"ポンプセグメント部"の上部(※エアはこの部分に残るので)のみ
血液ポンプから外すことでエアを抜いています(あくまでご参考ということで)。
動脈側エアトラップチャンバーが生食で満たされたら(=エアがぬけたら)
写真にあるような、本来の向きに戻します。
生理食塩水はダイアライザー内も満たしていきます。
その後、静脈側エアトラップチャンバーには
"ある程度"(チャンバー内8分目位?)生食を満たさなければなりませんが
ここで「何もしない」と
静脈側エアトラップチャンバー内は生食は"ダダ流れ"。
そこで(上記写真では分かりづらいかと思いますが…)
- 「静脈側エアトラップチャンバー」と「気泡検知器」との間に鉗子をかけ、且つ
- 静脈圧モニターに接続してあった「トランスデューサー保護フィルタ」を外します
「なぜ、そうすると生食が溜まるの??」
ん~ここでは割愛💦
静脈側エアトラップチャンバー内に"ある程度"生食が満たったら
- 静脈圧モニターに再度「トランスデューサー保護フィルタ」を接続し
- 「静脈側エアトラップチャンバー」と「気泡検知器」との間にかけた鉗子を外します
その後
ダイアライザーを一旦取り外し
静脈側(青)を上にしたまま、手でダイアライザーを「トントン」軽く叩きます。
目的は、ダイアライザー内の気泡を取り除くため。
生理食塩水は残り700㎖のところまで、つまり生食1パック1.5ℓですから
約800㎖流します。
「静脈側エアトラップチャンバー」内の"下部"には
どうしても気泡が溜まってしまいます。それを除去するため
鉗子の"持ち手"部分をつかって(鉗子を本来とは反対の持ち方で)
静脈側エアトラップチャンバー下部を「カン!カン!」叩いて、エアを除去します。
この時、誤って
ご自身の指を叩かないよう、お気を付けください。
マジ、痛いっすよ💧
ここでまた"我流"の作業工程があるのですが…
私はこのフェーズで「気泡検知器」の扉を開け
そこを通っている血液回路内に気泡が無きことを確認し
あったら、その時点で除去(行先は上方の静脈側エアトラップチャンバー)しておきます。
これは意外と盲点だと、個人的には思ってます。
準備段階で(回路設置時以外で)「気泡検知器」の扉を開ける、ということは教わってません。
扉が閉まっている状態では、その「内側」は見ることができません、つまり
気泡があっても気づくことはありません。
もし気泡があったら…
もちろん、血液透析開始したら「警報」は鳴ります。
施設血液透析であれば「警報」を聞きつけたスタッフが駆けつけ、気泡除去を行うでしょう。
在宅血液透析の場合は?当然、患者自身で行います。
「準備も完了、自己穿刺も上手くいった、透析開始。さあ、ゆっくりしよ!」
と思った矢先の警報音…もう気分最悪です。
問題の気泡、見つけられるチャンス、あったじゃないですか、そうです。
"狭義の"プライミングの工程で「気泡検知器」の扉を開けさえすれば、見つけられます。
「最悪の気分」を回避するため、ここは我流の手技をとらせて頂いております。
ガスパージ
「ガスパージ」に関しては、上述の「液置換」「プライミング」と異なり
ググっても、正確でメディカルな説明をしているサイトが、あまり見当たりません。
"カプラーとダイアライザーをジョイントして、
液置換で生成した透析液をダイアライザー内で循環させる"
私はこの程度の理解です。
「ガスパージ」は
「液置換」が終わらないと、透析機器画面上の「ガスパージ」ボタンが押せない仕様になっています。
カプラーを持ち上げ
まず「赤」カプラーを"バイパスコネクター"から外しダイアライザーと接続
次に「青」カプラーを"バイパスコネクター"から外しダイアライザーと接続します。
この「カプラーを"バイパスコネクター"から外す」作業は、少々繊細。
ただ何の気なしに外すと、液置換により生成された透析液が「飛び散り」ます。
ご注意を。
「ダイアライザー」と「静脈側エアトラップチャンバー」との間に
鉗子をかけることも、お忘れなく。
写真にあるように
ダイアライザーは「赤」がやや上になるようにセットします。
そして『ガスパージ』ボタンをON。
終了までは約5分、勝手に終わってくれます。
私の場合、残りの工程(生食を約200㎖流す)は
自己穿刺をする直前に行います、つまり
「ガスパージ終了」と「自己穿刺」との間に
入浴したり
夕食したり
仮眠をとったりします。
残り
「さって!(透析)やりますか!」
私の中で気持ちが固まったら、残りの工程を行います。
生理食塩水を残り約200㎖流します。これは
血液回路内の気泡の有無をはじめとした
「"広義の"プライミングの最終チェック」
の意味ととらえ
準備に落ち度がないか、確認作業を行います。
生理食塩水パックの目盛500㎖のところまで流したら
静脈側患者接続部位から"適当な"場所に鉗子をかけます(※"適当"の意味は上述参照)。
"動脈側"患者接続部位に鉗子をかけるのとは、ちと違います。
血液ポンプが回っている最中に鉗子をかけます。
そのままポンプが回り続けると当然「静脈圧」が上がり、仕舞には警報が鳴ってしまいます。
マニュアルには「静脈圧50~100mmHg」になるようポンプを止める、とありますが
私は、もっと高めの値でポンプを止めてます。
私の場合、このフェーズのあと"のんびり"してしまうこと多々あるので💦
時間が経てば経つほど「設定された静脈圧」は下がってしまうのです。
そのことも考慮にいれて、マニュアルの設定値より高めの静脈圧なのです。
ダイアライザーは
- 「赤」を上
- 「青」を下
にセットします。
クレンメは閉じます。加えて
生食ラインの根本に鉗子をかけます。これは
「透析中に生食が血管内に流入しないため」
もちろん
透析後半時に起き得る「低血圧」に対処するため
クレンメを開け、生理食塩水を注入させる処置はありますが
"除水をしているそばから生食入れる"
なんてあったら、いつまで経っても除水完了しません…
これで
"広義の"プライミング完了です。
お疲れさまでした。
まとめ
一連の手技を「言語のみ」で紹介することは
本来無茶な所業です。ただ、別の言い方が許されるのなら
「言語化できる」だけ、その手技が身体に"染みついている"
とも、我ながら思います。
最後にもう一度、注意喚起をさせて下さい。
私自身、在宅血液透析導入もうすぐ丸8年
もちろん、管理医療施設で学んだ手技工程は基本としつつも
若干"私仕様の"順序となっている部分も、あります。
長年やってくると「自分にとって最適な作業工程」というのは見えてくるものです。
よって
あくまで「イチ在宅血液透析患者の作業工程の一例」という認識で
ご覧いただければ幸いです。
本旨は重複致しますが、在宅血液透析を導入した場合
HHDに関する全ての手技工程については
患者様ご自身がお世話になる、HHD管理医療施設の"HOW TO"を
厳守することが基本。
ご自身のライフスタイルにあった"我流"の手技工程が見えてくるのは
基本原則を順守し続けた結果でしかありません。
くれぐれも、その点誤解無きよう、お願い申し上げます。