『頻回・長時間透析の現状と展望』日本透析医学会雑誌52巻9号
『一歩先の透析医療~理論と実践~』山川智之編著
上記参考文献内には
在宅血液透析を達成するための装置に必要な機能や条件について
課題や考察を述べた記載箇所がございます。
在宅血液透析導入から8年目の私が当該箇所を読んでみて
実際に在宅で血液透析を行う立場から
「そう!そう!」と思うところもあれば
「なるほど~考えもしなかった」と思うところもあります。
そこで今回は
当該参考文献で医療者が挙げる
在宅で血液透析を行うことを想定した場合に現状考え得る課題(特に機器類)をご紹介しつつ
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【在宅透析の機器】専門家が挙げる在宅血液透析機器の"課題"を実体験から検討してみる
『頻回・長時間透析の現状と展望』日本透析医学会雑誌52巻9号
透析装置に関する記述は、7つある各論のなかの
6.透析装置(頻回・長時間透析に適した装置)
となります。
上記4社への聞き取り調査という形で
今後の展望や、未来志向型の提案を示しております。
RO(Reverse Osmosis)装置
まず、RO(Reverse Osmosis)装置についての今後の展望として、各社からあげられたことは…
- 専有面積が小さく
- 静かな動作音で
- 消耗部品の交換作業が容易
- 個人用透析装置との洗浄・消毒の連動が可能である
ということでした。
ちなみに…
現在我が家で使用させて頂いているRO装置については
下記ブログをご参照頂くと、よりイメージできると思います👇
専有面積が小さく
我が家で使用しているのは、日本ウォーターシステム株式会社の「個人用MHシリーズ」
取扱説明書によると、装置の寸法は
幅330(mm)奥行430(mm)高さ1015(mm)
HHD導入初めに機器を設置してからは、日々の生活で大きな移動はない。
(清掃するのに少し"ズラす"ことはありますが)
現在のものは"二代目"ですが(HHD導入5年経過で入れ替え)
「もう少し小さければイイな~」などと思ったことはないですね。
亡くなった父が遺してくれた持ち家があり
透析室としては十分過ぎるほどスペースを確保出できているので
あまに機器の大きさに関心がないのかもしれませんが
各々患者の居住スペースによってはRO装置はじめ透析機器が
「場所とるな…」と
懸案事項となる場合もなくはないので
"小型化"
というのは、メーカーである以上、使命としてあるのかもしれません。
静かな動作音で
RO装置はじめ透析機器から発せられる動作音については、既に記事にしております👇
細かな部分は上記ブログご参照頂くとして…
"初代"から比べ"二代目"のRO装置、かなり静かになったと思いますよ。
これは偏に、企業努力だと思います。
消耗部品の交換作業が容易
これは患者の範疇ではないですね。
現在、3カ月に1回のペースでHHD管理病院のスタッフが、機器メンテナンスに来訪されます。
作業の様子は拝見させて頂いておりますが「作業が容易性」など、素人が解る由もありません。
個人用透析装置との洗浄・消毒の連動が可能である
一日の透析が終わり、透析装置ディスプレイの「洗浄」ボタンを押すと
RO装置も作動し、機器の自動洗浄が開始されます。
私にとっては今や当たり前の光景ですが
"個人用透析装置との洗浄・消毒の連動"
というのは、装置特長の一つなんですかね。
東レ・メディカル社のHP見ても、RO装置の特長として
個人用透析装置との連動運転により、透析準備から終了後の洗浄に至るまで本装置側の操作が不要となります。
(引用元:東レ・メディカル『個人用透析用水作製装置 TW-S』)
との記載があります。
参考文献『頻回・長時間透析の現状と展望』日本透析医学会雑誌52巻9号
6.透析装置(頻回・長時間透析に適した装置)に
《洗浄・消毒》の観点から、個人的に目を引く記述がございましたのでご紹介致します。
在宅血液透析専用装置VIVIA(Baxter)という
2014年に販売されるも2016年に販売中止になった機器があるそうです。
この装置は熱水消毒装置を内蔵し、ダイアライザ、回路の継続利用を可能にしていた。そのことにより準備、片付け、廃棄の手間が減り、頻回透析を容易に行えた。
以前、私の生体腎移植手術の主治医で現在もシャント外来でお世話になっている医師から
「ダイアライザや血液回路の"リサイクル"」の話を聞いたことがあります。
在宅血液透析では当然、設置された透析機器を使用するのはその患者本人のみ、つまり
施設血液透析のように
同じ透析機器を異なる患者が"入れ代わり立ち代わり"で使用することはない。
透析備品(ダイアライザ、血液回路)の"使いまわし"というと聞こえは悪いが
透析機器及び透析備品を使用するのは当該患者だけ、従って必要な消毒・洗浄が出来れば
透析備品(ダイアライザ、血液回路)の"再利用"は可能で、ひいては
医療費の削減にもなる、と。
在宅血液透析専用装置VIVIA(Baxter)について軽く調べた印象では、上記を可能にするもののよう(あくまで推測)
個人的興味として、一度当該装置の情報を収集して一つの記事にしたいな、と思っております。
血液透析装置
血液透析装置への展望としては
- (透析液の)粉末溶解可能な装置
- 操作タッチパネル
これらを在宅血液透析向けに変更が可能かという点を言及しております。
(透析液の)粉末溶解可能な装置
(透析液の)粉末溶解可能装置は海外向けの装置として製造はされているようですが
国内での認可が得られないため、現状国内使用は不可能なのだそうです。
この「透析液の粉末化」については『一歩先の透析医療~理論と実践~』にも記述がございました。
透析液原液に関しては、現状のプラスチックタンク容器はかさばる。これを粉末タイプに変えると容積が減り、配送、廃棄物処理が簡単になる。粉末化できなくても、プラスチックタンク容器をソフトバッグに変えるだけでも配送、廃棄の負担は減る。
(引用元:『一歩先の透析医療~理論と実践~』P262)
毎月初め、9㍑タイプ(9㎏×2=18㎏)&6㍑タイプ(6㎏×2=12㎏)の透析液を何個も何個も
配送トラックから積み下ろし、"備品庫"のある我が家の2階まで運ぶ配送担当者の姿を見るにつけ
「ホント!!ありがとうございます!!」と言いたくなる。
"プラスチックタンク容器はかさばる"とい点について
確かに、物品配送のタイミングでは在庫分含め瞬間的に量がMAXになるので
かさばるっちゃかさばる。ただ、これも先にRO装置のところで述べたように
我が家の透析部屋には十分なスペースはあり、もともと和室だったので押入があり
その押入をそのまま備品庫として使用、そちらも十分なスペースは確保できていると思うので
私的には"かさばり"にあまり困ってはおりません。
それよりも
粉末を溶解して生成した透析液の"水質"を透析毎に調べるような手間があると不便だな、と
上記動画はNxstage社透析機器のプライミングの様子ですが
07:30~
何やら水質をチェックしております。
"chlorine"とあるので、生成された透析液というよりは精製水の塩素濃度を見てるようですが
動画にあるような作業が増えるのは、患者としては困りますね。
操作タッチパネル
現在のところ、在宅透析専用のタッチパネルはなく、機能を制約することによって必要最小限の操作が可能である。在宅血液透析専用画面の開発に関しては、認可や制約を受ける可能性があり、今後の課題である。
(引用元:『頻回・長時間透析の現状と展望』)
とあります。
透析機器のディスプレイに関しては、その使用(仕様)に慣れてしまった今となっては
別段「在宅透析専用」に作り込みしてもらう必要性は、あまり感じません。
日々の透析時に使用するボタンはぼぼ決まっていますし
「スタッフ専用」のボタンに関してはロックかかってますので
患者が勝手に操作できないようになってます。
Outset.Medical社の【Tablo】などは
患者がより視覚的に操作が出来るような仕様になっているようですが👇
高齢化社会に突入し、在宅血液透析患者の"高齢化"が現実的なものとなれば
プライミングはじめ機器の操作性の簡便化は求められる点かとは思いますが
在宅血液透析"全体"で考えると、機器の操作以外の部分で
正直、ご高齢の患者さんには少々厳しいフェーズはありますので
個人的な意見としては、ディスプレイの在宅専用化は優先度あまり高くないかな、と。
まとめ
『頻回・長時間透析の現状と展望』日本透析医学会雑誌52巻9号
未来志向型の提案としては、患者・介助者の負担軽減を中心に提言されております。具体的には…
- カセット式回路
- 透析通信システム整備
- 抜針事故防止機能
- 操作の簡便化
- 装置の小型
- 全自動化
- 穿刺補助
この中で、私個人的には「穿刺補助」(穿刺補助具)の開発には期待をしたい。
現状、自己穿刺用の補助具はあるっちゃあるようですが、実用化しているかは不明。
見た感じ、使い勝手は未知数。
正直な感想としては
「もうちょっと、どうにかならんもんですかね?」というもの。
ただ、開発者・技術者の方々には勝手ながら大きな期待をしております。
《透析通信システム整備》《全自動化》については
実は丁度、前回の外来時、主治医と話をした分野。
私としては《透析通信システム整備》されれば、患者(患者側の透析機器)と病院側との
治療データが双方向に繋がり、結果
「バイタル結果等の経過表への記入作業がなくなるかも!」
などと安易な発想を抱いていたのですが、コトはそう単純じゃないと
主治医の話を聞いて感じました。
装置の《全自動化》
聞こえは便利で良い、と思いがちだが(私もそう思っていましたが)
主治医曰く《全自動化》が進み過ぎると、患者が、透析中の自身の体調を診なくなる、と。つまり
現在のようにバイタルチェックして、それを紙に手記入する"手間"をかけることで
患者は自身の体調を確認することができる。
それが全て《全自動化》となると、患者は"怠惰になる"(※これは私が思ったこと)。
専門の医療従事者の監視下から離れた場所で、血液透析という高度な医療行為をする上で
患者を診るのは、患者自身(もちろん介助者もいるが)。
当該医療行為の成否は、患者の「自己管理」にかかっていると言ってよい在宅血液透析において
患者が"怠惰になる"ような技術進歩は、再考する余地はありそうです。
また《透析通信システム整備》についても
万万が一、システムがハッキングされでもしたら
勝手に除水速度が上がったり、目標除水量が増量したり…
「死に直結する」危険性をはらんでるわけで、これも手放しでは推奨される類のことではないな、と。
ただ、主治医も言うように
《自動化》《システム化》の流れは、時代の流れでもあるので、ある程度は仕方ないところ。
その意味で、まだまだ発展途上の医療行為
これを行っている透析患者全体のたった0.2%の一人として
出来る限り、日々の透析で感じたことを、医療者側にフィードバックすること
これは使命だと思っております。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。