ここで主にご紹介した内容は
- パンデミック状況下で透析を必要とする患者が増え、結果、透析機器が不足していること
- 透析患者増の原因の一つがサイトカインストーム、つまり、感染に対し免疫系が過剰反応し全身に血栓が形成されてしまうこと
これを受け、前回
を投稿せて頂いたのですが
記事内容は、どちらかというと項目「2」の対応策、つまり
サイトカインストームで形成された血栓除去の代替案
のご紹介であったかな、と。
項目「1」の直接的な対応策は、ないものか。
そこで注目されているのが、今回ご紹介する
CHF Solutionsという米国企業の
Aquadex SmartFlow Systemという
限外濾過装置
です。
参照元:Medgadget
引用記事はこちら↓
Aquadex Ultrafiltration for Critical COVID Patients: Interview with John Erb, CEO at CHF Solutions
Table of Contents
【透析と感染症】透析患者は知っておくべき。パンデミック下で透析機器に代わりうるモノ
Aquadex SmartFlow Systemとは
限外濾過とは
透析膜の片側の溶液に圧力がかかると、溶液は膜の反対側に押し出されます。これを限外ろ過と呼んでいます。血液透析の場合、血液側から透析液側へ圧力がかかっており、血液中の水分や塩などが押し出され、体内にたまってしまった水分などを除去します。
引用元:扶桑薬品工業株式会社
Aquadexの仕組み
The system was initially used
to remove the extra 4-5 liters of fluid cardiology patients have
during cardiac procedures.
This extra fluid must be removed
before the patient can come off of the ventilator and leave the ICU.
元々は
心臓手術患者の血液4〜5リットルを体外へ出す
ために使用されていたようです。
ここの話は❝管轄外❞なのでスルーさせて下さいm(__)m
個人的には、人工心肺装置❝的❞なモノをイメージしましたが・・・
いずれにせよ、記事によれば
COVID-19患者の体液管理の必要性を認識し始めていた医師たちは
患者の体液バランスを維持するための装置として
CHF Solutions社のAquadexに、まさに白羽の矢を立てたわけです。
Aquadexの仕組みについては
Aquadex is a portable ultrafiltration system that removes excess fluid from the body.
It removes 5-40 mL of blood per minute,runs the blood through a filter to remove excess fluid and
the blood is returned to the body.
The blood is out of the body and filtered for one minute.
- 身体から余分な水分を取り除く(除水)、携帯型限外濾過システムである
- 1分あたり5〜40㎖を脱血、血液をフィルターに通して余分な水分を除去して血液を体に戻す
- 1分間の体外循環で血液が濾過される
と、シンプルに説明されていおります。
Aquadexが必要とされる背景
内容としては
で述べさせてい頂いたことと、ほぼ同じですが
"finding alternatives to dialysis machines"
❝透析機器に代わるものを見つける❞
という視点が、新しいものでした。
(だから今回ご紹介したのですが)
まさに、この記事のキモ。
COVID-19に感染し重症化、腎不全となった場合
当然、人工血液透析を施すべきですが
重症患者数が
透析機器や備品の数のみならず
透析スタッフの数を上回っている現在の状況下では
血液透析機器が利用可能になるまで
患者の状態を出来るだけ安定させておく、乱暴な言い方をすれば
❝時間を稼ぐ❞必要がある、というわけです。
Aquadexと透析機器
Aquadexと透析機器の違い
透析患者としては、ここが一番気になるところ。
本文では透析機器について
- 腎不全となった場合に対処するための強力かつ重要な治療法であること
- 1分あたり300〜500㎖の脱血ができ、1時間あたり約2000㎖をろ過できるが
- 患者には非常に負担がかかる
と説明しております。
1分あたりの300〜500㎖の脱血というのは、外国人仕様ですね。
我々日本人は基本200㎖。
これに対し、Aquadexは
Aquadex takes up to 500 mL an hour and is much gentler on the patient.
1時間あたり最大500㎖のろ過で
患者に優しい。
別の文脈でも
By removing a small amount of blood and quickly returning it,
we’re able to gently treat the patient with little risk of complication.
脱血は少量、それを迅速に戻すことで
合併症のリスクがほとんどない優しい治療を施すことができる。
と述べています。
また
治療に携わるスタッフの負担軽減についても触れています。
Dialysis requires a nephrologist or specialized dialysis nurse
to operate the machine and be present for the duration of the therapy.
In contrast,
any physician or nurse can operate Aquadex and
can leave the room while it’s in use,
reducing required staff support by a factor of four.
血液透析の場合
腎臓専門医または透析専門のスタッフが立ち会う必要がある
一方で、Aquadexは
どの医師や看護師も操作ができ
使用中に部屋を離れることができるため
必要なスタッフサポートを4分の1に削減できる
としていいます。
Aquadexは透析の代替品ではない
しかし
Aquadex isn’t a replacement for dialysis
Aquadexは透析の代替品ではない
この点は、ハッキリ述べておりますし
我々も正しく認識しなければいけないところ。
最適な治療アプローチとしては
Aquadexと透析機器
二つの治療オプションを併用することだ、と。
前述したように
思うような数の透析機器が確保できない状況では
Aquadexで患者の状態を安定させ、上手く時間を稼ぐ。
透析機器が使えるようになったら
透析治療、その合間にAquadex治療、という具合に。
加えて
全身状態によって、直ぐに透析を受けることができない患者なども
Aquadex治療によって助けられる可能性もある、という。
まとめ
私は現在、❝ほぼ❞毎日透析をしております。
❝ほぼ❞というのは
週に一日だけお休みを入れているから。
そんな私でも
たった一日、透析をしないと
浮腫みは感じます。
体液の過剰は
身体に様々な影響を及ぼすという。
個人的にすぐ頭に浮かぶのは
心臓への負担が増すということ。
透析患者の中でも元々心臓に疾患を持つ方
とりわけ高齢者の方々にとって
除水が十分に行えないというのは
非常に由々しき問題です。
その意味で、今回の
透析機器が無い間、限外濾過装置を利用し
体液バランスを保つ、というのは
たとえそれが、透析機器が整うまでの「時間稼ぎ」だったとしても
患者にとっては、ほんの少し安心を与えてくれる。
ただし、ご承知の通り
透析患者は、除水出来ていれば良いわけでは当然ないので
溜まっていく尿毒素を、いかに排出していくか。
私個人的には、やはりそこが解消されてこないと
なかなか心が休まることはないな、と。
私自身
ほぼ毎日透析をやっていることから
ややもすると、日々の飲水量や食事量が多くなりがち。
いっぱい食べて、いっぱい透析、がHHDの良さなので
平時においては問題はないと思うのですが
現在のような有事にあっては
最悪の状況に見舞われたケースを想定して
出来る限り、身体の状態は良好に保っておかねば、と
再認識させられました。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。