パンデミック状況下で不安な毎日を過ごす透析患者を
更に不安にさせるような記事を見つけました。
Twice-Weekly Hemodialysis Suggested for COVID-19 Risk Reduction
❝Covid-19リスク低減のため推奨される週2回の血液透析❞
ただ
この記事に対する私個人としての印象は
ややもすれば
読者をミスリードし兼ねないな、ということ。
その理由は
この記事の元ネタである情報ソースと
結論部が異なるのです。つまり
一部を切り取って
Twice-Weekly Hemodialysis Suggested for COVID-19 Risk Reduction
というタイトルのもと、読者
特に透析患者の不安を煽っているのかな、と。
そこで今回は
同記事と元ネタとを照合しながら
私なりに論旨を展開してみようと思います。
ちなみに、元ネタはこちら↓
Journal of the American Society of Nephrology(JASN)の
Twice-Weekly Hemodialysis Should Be an Approach of Last Resort Even in Times of Dialysis Unit Stress
【透析と感染症】Covid-19リスク低減のために推奨される週2回の血液透析
背景
施設血液透析患者にとっては聞き捨てならない
❝血液透析を週2回に❞
という話。
このようなことが議論に挙がってしまう背景には
パンデミック状況下での
患者や医療従事者のリスク軽減、もさることながら
前記事
でご紹介したように
Covid-19の感染拡大にともなう
透析機器や関連備品、透析スタッフの不足
が背景となっていることは、間違いないでしょう。
両記事にも
似たようなニュアンスの記述はありました。
❝血液透析を週2回に❞とする根拠
❝血液透析を週2回に❞
と言うからには
それなりの効果を期待してのこと。
Twice-Weekly Hemodialysis Suggested for COVID-19 Risk Reduction
では、下記事項が列挙されています。
this approach could result in less exposure to COVID-19,
reduction in dialysis staff work,
greater spacing of patients,
decreased transportation requirements, and
conservation of personal protective equipment.
- Covid-19の曝露減少
- 透析スタッフの作業減少
- 患者間隔の広がり確保
- 輸送要件の減少(患者が施設へ移動しなければいけないことを指してる?)
- 個人用保護具の保全
実はこの筆者
ちゃんと元ネタを踏襲はしていて
記事中にちゃんと、元ネタで記述されている
❝血液透析を週2回に❞に対する反論的論説を
あるドクターの見解として紹介しているのです。
しかし、下記のように
Collectively,
the data from studies looking at outcomes of twice-weekly versus thrice-weekly hemodialysis
suggest that
twice-weekly treatment is less dangerous than commonly supposed,
週2回の血液透析は
一般的に想定されているよりも危険性が低い。
とする他のドクター見解を
患者にとっては一番デリケートな問題にもかかわらず
一見唐突過ぎる形で紹介しているので
私個人的には
筆者が、このネガティブな部分にフューチャーさせようとする
変な意図を感じざるを得ないのです。
❝血液透析を週2回に❞に対する反論
Journal of the American Society of Nephrology(JASN)の
Twice-Weekly Hemodialysis Should Be an Approach of Last Resort Even in Times of Dialysis Unit Stress
では
血液透析の週2回は、あくまで一つのオプションである
という、かなり慎重な見方を本筋としてます。
慎重である理由として述べられているのは
まず、そもそも論として
the data comparing outcomes with twice- and thrice-weekly HD
are extremely limited and simply insufficient
血液透析を週2回と週3回で比較したデータは
非常に限られており、単純に不十分である。
という点。さらに
this approach could be counterproductive and
could result in increasing risk to the health and welfare of patients
with resultant increasing—rather than decreasing—health care utilization,
透析回数を週3回から週2回へ移行することは
逆効果になる可能性があり
患者の健康と福祉へのリスクが高まり
結果としてヘルスケアの利用率が増加する可能性がある。
また
別方向からのアプローチとして
a change to twice-weekly hemodialysis
will result in 33% reduction in revenue of dialysis facilities and
its attendant consequences on employment and staffing of dialysis facilities.
週2回の血液透析への変更により
透析施設の収益が減少し
透析施設の雇用および人員配置にも影響が生じる。
との見解も述べられています。
❝血液透析を週2回に❞は最後の手段
❝血液透析を週二回に❞
というのは、最後の手段
その前にやれることはあるだろ、と。
it would be prudent for us to exhaust other alternatives
before considering twice-weekly hemodialysis.
週2回の血液透析を検討する前に
他の代替案をやりつくすことが賢明だ。
具体的には
週3回から週2回へ一足飛びに移行するのでなく
徐々に進めていく。
❶_あくまで週3回の透析を維持しながら
透析時間を2.5〜3.5時間に短縮する。次に
殆どの患者は週3回の透析を維持する一方で
❷_腎機能が有意に残存している患者を対象に
週二回の透析へ、それも選択的に移行する。
そして、最後の手段として
❸_殆ど患者を週2回の血液透析に移行する。
ただ、これを行うにしても
- 徹底して食事制限(特に塩分、カリウム)
- 状況に応じた薬の処方(利尿剤や血清カリウム抑制剤)
- 頻回な高カリウム血症のモニタリング
等を、組み合わせる必要がある、という。
※この場合の利尿剤は、腎機能が有意に残存している患者を対象か
まとめ
It is too early for us to say that
this is the optimal approach.
(血液透析を週二回とすることが)
最適なアプローチである、と言うのは時期尚早。
とするのが前提ではあるが
前例のないパンデミック状況下で
透析患者が非常に脆弱であることには、変わりはない。
Hence,
we should retain twice-weekly hemodialysis as an option
but only as an option of last resort, and
it should be implemented with
substantial boosting of clinical and biochemical monitoring and supportive care
to minimize harm to patients.
週2回の血液透析をオプションとして保持する必要があるが
あくまで最後の手段のオプションである。
患者への危害を最小限に抑えるため
臨床的・生化学的モニタリングと支持療法を強化して実施すべきである。
と、記事をまとめています。
今回
記事の内容もさることながら
世の中に数多溢れる情報から
適切なモノを取捨選択できる目を
患者自身も持つ必要があるな、と
改めて認識させられました。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。