日本透析医学会雑誌
「頻回血液透析」「長時間血液透析」に関してかなり突っ込んだ
しかし、内容はかなり高度、記述も難解。
全3回に渡り、同文献について
私が理解出来た部分を、私なりに表現してきました。
やや冗長な記事となってしまいましたが
現在の自身のHHDに、内容を上手く落とし込むことができれば
HHDのメリットを今以上に享受することができるかもしれない。
今回は「頻回・長時間透析の現状と展望」で示されていた内容に
現在の私のHHD各種要件を当てはめ
【在宅透析とは】HHDのメリットを享受するため「頻回・長時間透析の現状と展望」をしっかり現状に落とし込む
透析時間の検証
時間の概念について「維持血液透析ガイドライン」を見ると
透析時間
- "短時間"は1.5~3時間未満
- "標準時間"は3~6時間未満
- "長時間"は6時間以上
標準血液透析の1回透析時間は"4h"。
一方
現在の私の1回透析時間は
基本"3h"、週1回"4h"。
これを踏まえ
「血液浄化」「除水」両側面から検証してみる。
血液浄化
尿素のような小分子は
透析性が良好でかつ体液隔壁間移動抵抗も小さいため
透析効率が高い。
一方、リン(P)については、尿素に比して
体内における分布スペースが大きく、また
隔壁間の移動が複数あると想定される。
溶質の除去効率は、透析前半が高いので
現在のように、HHDで連日透析を行っていれば
仮に当日体調不良等がある時は、無理に予定透析時間を行おうとせず
短時間つまり1.5~3時間未満程度の透析時間が確保できれば
尿素のような小分子の除去には有効、と考えられる。
リンに関しても
十分な除去量を達成するためには、1回3時間の透析が必要だが
現在の透析設定時間は"3h"を基本としているので
特に問題はなさそうだ。
ただし
β₂ミクログロブリン(β₂M)のような「隔壁間移動抵抗」のある中分子物質や
体内における分布スペースが大きいリン(P)などは
透析を長時間行うことによって
深部区画からの除去が増え
溶質の総除去量が多くなる。
このことを考慮すると
現在週1回"4h"としている透析時間を
長時間つまり6時間以上行うことがベターであるとは考えられる。
ただ、6時間の血液透析というのは(経験はあるが)なかなかの長さである。
オーバーナイト透析と違い、透析中ず~と起きているのもシンドイ。
非透析日は週にたったの1日。
現状、月1回の血液検査の結果で
血中のβ₂ミクログロブリン(β₂M)値に問題は全く見られないので
今以上の肉体的・精神的負担をかける必要性は、あまり感じられない。
透析生活は長期戦。
しばらくは、現状の透析設定時間で静観しても良いでしょう。
除水
除水について考慮しなければいけないことは
注意ポイント
- 除水速度が速く(大きく)なることで、❝プラズマ・リフィリング❞が追随できず
結果、透析低血圧や臓器虚血を発症、悪化させることになる、ということ。 - 心血管系合併症の最大要因となる
透析毎に細胞外液量が大きく変動するという❝非生理的❞状態をつくらないこと。
「維持血液透析ガイドライン」には
平均除水速度は、15㎖/kg/時以下を目指す
とある。
この❝15㎖/kg/時❞というのは
透析が中2日空いたスケジュールの限界値であり
4時間透析で体重の6%の除水を行うことに相当する。
参考
仮に体重60㎏の場合、除水量は3.6ℓ
4時間透析での除水速度は"0.9ℓ/h"
現在の透析設定時間"3h~4h"を
透析回数週3回という標準血液透析の観点で見れば
除水速度0.9ℓ/hを維持するため、厳しい飲水制限が必要だが
連日透析している現状では、特に飲水制限をしていなくても
毎回除水速度平均0.5~0.7ℓ/hで透析を行えている現状ゆえ
除水の観点で透析時間を現状より伸ばす必要性はない、と考える。
参考
ちなみに
私のHHD管理施設からは除水速度のMAXは
"0.8"ℓ/hとの指示を受けています。
透析頻度の検証
血液浄化
透析頻度と血液浄化との関係を考える時
透析後の"リバウンド現象"の影響が重要と思われる。
"リバウンド現象"とは…
透析終了後から溶質が細胞内から細胞外(血管内)に移動し
血中の溶質濃度は急速に上昇することを指す。
深部区画からの溶質除去が増える長時間透析を行えば
"リバウンド"は小さくなる。
頻回透析は
体内の溶質濃度のピーク値は低くなり、変動幅も小さくなる
結果、"生理的"状態(normal physiology)に近づく、というメリットがある。
「維持血液透析ガイドライン」の頻回・長時間透析の定義にある
❝頻回長時間血液透析(週5回以上、6時間以上)❞を
今の生活に取り入れるのは、現実的ではない。
したがって
頻回透析といった場合の私の透析時間は"2h~3h"。
透析時間が短いと溶質除去は
尿素のような「体液隔壁間移動抵抗」が"小さい"溶質が中心で
深部区画から「体液隔壁間移動抵抗」の"大きい"中分子を十分除去しきれていないため
透析終了後の"リバウンド現象"が生じる。
連日3hの透析では、どの程度"リバウンド"の影響が生じているのか。
そもそも
"リバウンド現象"の具体的な弊害は、どういったものなのか。
私の読む限り「頻回・長時間透析の現状と展望」には
その点述べられていなかったように思う。
現在の私の採血スケジュールは月1回。
採血曜日
週唯一の非透析日である土曜日の"翌日"つまり
「日曜日」の透析開始直後に採血を行う。
あくまで私見ですが
上記スケジュールでの採血の結果は
日曜日~金曜日までの連日3h透析(※日曜日だけ4h)の
成果を反映していると考えて差し支えないと思われる。
現状、血液検査に異常値を示す項目は特に見当たらない
よって、"リバウンド現象"のような負の要因が顕在化しているわけではない。
ただ、今後
長期間の透析生活によって、色々とほころびが生じる可能性は秘めていると思われ
引き続き注視していく必要はありそうです。
除水
連日透析を行っていれば、透析1回の除水量は少なくてすむので
上記に挙げた「除水について考慮しなければいけないこと」
2項目の影響はあまり受けないと考察される。
強いて気を付けることと言えば
週唯一の非透析日に飲水過多にならないようにすること。
ただ、その時は予定透析時間4hを伸ばせばよい。
HDP(Hemodialysis product)の算出
HDP(Hemodialysis product)は、透析スケジュールに注目した適正透析の指標で
「1回透析時間」×「回数²」
で計算される。つまり
実際の代謝物除去量ではなく
時間と頻度だけで評価される。
- 施設血液透析での標準的な血液透析(週3回、4時間)
- 長時間血液透析の一例(週3回、8時間)
- 現在の私の透析スケジュール(週6回、3時間※週1回のみ4時間)
それぞれのHDPを算出してみると…
- 36(=3²×4)
- 72(=3²×8)
- 108プラスα(=6²×3)
前記事でも述べましたが
HDP(Hemodialysis product)に関してはエビデンスレベルがまだまだ低い状況。
私の現在の「108」という値が具体的に
どこに・どれだけの優位性があるのかは、不明。
頻回・長時間透析に関するデータが今後さらに増えることで解析精度は増し
より具体的な評価指数が示されることを期待したい。
バスキュラーアクセス管理
週6回の頻回透析を行う私が
警戒すべきVA(バスキュラーアクセス)に関するリスクは
注意ポイント
頻回の穿刺や接続による❝VAの荒廃❞
です。
頻回穿刺による
- 血管損傷
- 乱流の増加
が、増悪因子として関与していると考えられています。
VAトラブルの内「狭窄」に関しては過去1度経験しておりますが
その時の狭窄は、造設時当初からやや細いと言われていた血管箇所であり
「頻回の穿刺や接続による❝VAの荒廃❞」
といえるものではありませんでした。
HHD導入開始から丸7年が経過。
現在までの血液透析回数は約1800回
週3回の標準血液透析に換算すると既に
"12.5"年経過していることになります。
これまで正直
シャントの勉強についてはやや疎かにしてました。
透析患者の腕の資料写真というのは、正直申し上げて少々グロいものもあります。
自分もそうなる可能性があるにも関わらず、見ることを避けていました。
HHDでは患者自身で身体のちょっとした異変に気づく必要があります。
そのための"引き出し"を多くしといて損はありません。
今後、当ブログでも積極的に、シャントに関する情報を投稿していこうと思っております。
まとめ
前記事でも述べ、重複致しますが…
頻回・長時間透析に関する❝エビデンスレベルが低い❞とされる中
"720人"(わが国の慢性透析療法の現況(2018 年 12 月 31 日現在)より)
私含め、現在HHDを行う患者の責任と役割は、決して小さくはないと思います。
まだまだマイナーな頻回・長時間透析医療の未来のために
自らの経験を的確にフィードバックする。
そのためには
現在お世話になっている医療施設の医師その他医療従事者と
適切な距離感と、適度な緊張感を保ちつつ
しっかりとした信頼関係を築くことは重要。
とは言え
医療者側と患者側との関係性は
一方のみの働きかけで築けるものではありません。
ひと昔「「もの言う株主」という言葉が流行りましたが
その意味で我々患者側も
情報に対して受け身一辺倒にならず
自身の受けている医療行為について"能動的"に学び
建設的な「もの言う患者」となるのも
悪いことじゃないと、私は思いますが…いかがでしょうかね?
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。