「透析」について
一般の方々が抱くイメージは、どういったものでしょうか?
「透析」について
透析導入となった患者様の多くが抱くイメージは、どういったものでしょうか?
それらについての一つの回答として
National Kidney foundation HP内に
Fueled by passion and urgency, National Kidney Foundation is a lifeline for all people affected by kidney disease. As pioneers of scientific research and innovation, NKF focuses on the whole patient through the lens of kidney health. Relentless in our work, we enhance lives through action, education and accelerating change.
『Filtering Dialysis Myths from Facts』
(「事実を通して、透析に関する"神話"を覗いてみよう」といったところか)
という記事がございました。今回は、同記事内にある
透析に対する8つの「神話」についてご紹介するとともに
透析患者である私の実体験をもとに
加えて、在宅血液透析患者としての私の視点も交えて
検証してみようと思います。
"Myth"を直訳すると「神話」となりますが
意味するところは…
「こう考えられているけど、実際はそうとも言えないよ」
といった、ある種の「先入観」といったところか。
Mythの意味としては、Cambridge Dictionaryにあった
"a commonly believed but false idea"
がしっくりくるかと。
Table of Contents
透析に対する8つの「神話」を、在宅透析患者が実体験をもとに検証してみる
National Kidney foundation HP内にあります
『Filtering Dialysis Myths from Facts』ですが
"神話"(Myth)と"事実"(Fact)を対比する形をとっています。
この構成に準じて話を進めて参ります。
Myth_01:The only option for receiving dialysis treatment is to travel to a center at least three times per week for hours at a time.
「週3回数時間の通院血液透析が、透析療法の唯一の手段である」
といったところでしょうか。
Dialysis can be done in many ways: You can do dialysis in a hospital or an outpatient dialysis clinic or in your own home. Hemodialysis at a dialysis center is typically done three days per week for four hours at a time. But you can also do hemodialyis or peritoneal dialysis at home.
現在、腎臓病患者様の前は複数の選択肢があります。
- 通院血液透析
- 腹膜透析
- 腎移植
- 保存的腎臓療法(Conservative Kidney Management:CKM)
「透析」が必要と診断された患者様及び、現在「透析」を行っている患者様の多くは
"体内の余分な水分と尿毒症物質を除去" する手段が
「通院血液透析」一択ではない
ということは、なんとなく認識していると推察してます。
中でも「腹膜透析」などは、その言葉だけは聞いたことはあるかと。
ただ、「透析」が必要と診断された患者様が最初に頭をよぎるのは、やはり
"週3回病院に通って4~5時間、自分の血液をグルグルまわすヤツ"(=通院血液透析)
なのではないでしょうか。したがって
腎臓が機能しなくなった人間が、生きる唯一の術(the only option)は
「通院血液透析」
と思ってしまうのは、必然なのかもしれませんね。
そんな中、私は「在宅血液透析」
透析患者総数の、たった0.2%の「在宅血液透析」を
数ある腎代替療法の中から選択し、現在施行しております。
在宅血液透析含め
腎代替療法それぞれの、一般的に言われているメリット、デメリットについては
"ググれ"ば、色々分かります。
それを患者様自身が精査して、自己責任で選択する。
どれが良い悪いという類の話ではありませんが
もし今、在宅血液透析導入を考えている患者様がいらっしゃって、彼等が
「現役」在宅血液透析"イチ患者"の声を
私の情報発信活動を通じて見聞きし
それらが皆様の"判断材料の一つ"となれば、幸いです。
Myth_02:Dialysis is painful.
Some patients may have a drop in their blood pressure that could lead to nausea, vomiting, headaches or cramps. However, by following your kidney diet and fluid restrictions these types of side effects can be avoided.
言わんとすることは
"食事と水分を適切にコントロールすることで、患者を悩ます気分不快を抑えられる"
If you are on hemodialysis, you may have some discomfort when the needles are put into your fistula or graft, but most patients report that this gets easier with time as your arm becomes used to the needles.
要は
"穿刺の痛みは、時間とともに慣れる(becomes used to the needles)"
とありますが…
穿刺時の疼痛緩和として局所麻酔薬
ペンレステープ/エムラクリーム等を使用している患者様、多いかと思います。
"痛みと上手く付き合っている"患者様はいらっしゃる一方で、それでもやはり
「穿刺は、痛い(>_<)!!」
と感じ、不快に思う患者様もまた、多くいらっしゃるのではないかと推察します。
在宅血液透析での自己穿刺時
私は局所麻酔薬の類を使っておりませんので
毎穿刺、痛いは痛いですよ💦慣れるもんじゃないです。
それでも、局所麻酔薬を使わない私なりの理由がありまして…
その件についてご興味のある方は、下記ブログ参照👇
by following your kidney diet and fluid restrictions
食事や水分制限については
そのこと事態が「苦痛」と感じる患者様も多いのではないでしょうか?
[painful]の意味をcausing emotional or physical pain
(引用元:Cambridge Dictionary)
肉体的側面だけでなく"精神的側面"をも包含すると
他者から(医療者、同じ透析患者問わず)
「こうすれば大丈夫」と言われても
「いや、そうは言ってもさ、キツいよ…」
と言いたくなる患者様のいらっしゃるでしょう。
Myth_03:Dialysis is a death sentence.
Dialysis is a treatment that helps clean your blood of fluid and toxins when your kidneys are no longer able to do their job well. Needing to start dialysis can feel overwhelming and scary but dialysis treatments allow you to live.
一般の方々の中には、透析を「=死」といった
極端な意味でとらえている方も多いのではないでしょうか。
(最近こそ少なくなりましたが)
民放テレビ各局が放送する"医療情報バラエティー番組"で
「そのまま放って置くと、大変なことになりますよ」
なんて言うもんだから、無理もない…
ただ、私自身
先行的生体腎移植手術を受けるも、移植腎廃絶
現在、在宅血液透析を施行する身として
「死」を、漠然とではありますが意識はしてます。
勿論、いつ何時も、というわけではありませんが
移植腎が廃絶し、透析患者となったことで
(※近い時期に、父をがんで亡くしたこともあり)
「死」を、これよりも身近に感じるようになったこと
「生」は有限である(当たり前のことですが…)
と、意識するようになったことは確か。
"生"が"有限"である、ことの意識が
- 「自分のオリジナリティは何か」
- 「今の自分にしかできないことは何か」
を考えるキッカケとなり、結果、現在の
在宅血液透析並びに腎移植に関し、それを経験した患者目線のLIVE感ある情報を発信する
プロジェクト『腎生を善く生きる』を開始するに至った
とも言えるかもしれません。
Myth_04:Dialysis is expensive or unaffordable for the normal patient.
在宅血液透析イチ患者としては
一部当たってるが、一部当たってない。
透析患者は基本、身体障害者1級の認定を受けていると思われるので
医療費については、一部国が負担してくれています。
(この実情を快く思わない方々も、一部いらっしゃるみたいですが…)
ただ、在宅血液透析に関しては
実費は"それなり"にかかります。
在宅血液透析導入時にかかる費用、私の場合は…
- 家(部屋)のリフォーム代
- 水回りの工事費
- リクライニングチェア & 医療用テーブル購入費
等々。
導入後にかかる費用、主には
- 水道光熱費の大幅増
※お金に"キッチリ"の方なら、導入前後での水道光熱費の差異が分かるでしょうが、私は💦
「在宅血液透析と費用」に関しては
在宅血液透析を管理運営している各医療機関のHPでご紹介がございますので
そちらをご参照下さいませ。
Myth_05:Dialysis patients can't travel.
透析患者の旅行を手助けする会社なども、今はあるみたいですね。
ライフスタイルや価値観は人それぞれ。
旅行についても、同様。
私個人的には
色々な手続きをしてまで、海外旅行に行きたい!!との気持ちは
"今は"無いんですね。
現状、非透析日が1日(土曜日)あるので、一泊二日の旅行は可能。
温泉にゆっくり浸かって、おいしいもの食べて…これで十二分です。
イチ透析患者である私の「旅行」に対する思いについては
過去のstand.fm(※現在休止中)でお話しておりますので
興味のある方は、是非👇
For those on home dialysis - either peritoneal or home hemodialysis - you can work with your dialysis team to arrange for supplies to be delivered to your destination and most home dialysis machines are portable and come wiht a traveling case.
米国の透析機器メーカー『NxStage社(NxStage Medical, Inc.)』
同社の製品「System One」についてご紹介した下記ブログ👇
ブログ内にある動画に、在宅血液透析機器一式移動時の荷姿が映像にありますが
その様はさながら、バンドのツアーのようです。
(参照:Traveling with the NxStage systems
サイト下部動画24:48~)
したがって、(イチ患者の個人的な見解ですが…)
医療機関と同等のコンソールを使用し在宅で血液透析を施行する
日本の在宅血液透析患者が、在宅血液透析機器一式を旅先に運ぶ
"are portable and come wiht a traveling case"するのは
現実的な話ではないかと。
Myth_06:Dialysis patients do not have the time or energy to work.
「労働」に対する考え方が多様化している今
「透析患者と仕事」との関わり合いを、一元的にとらえることは難しい。
元も子もない言い方をさせてもらえるなら
"人による"んでしょう。
ちなみに私は、週6回の連日血液透析を行いながら
被雇用者としてのフルタイム労働は、難しいと判断
現在の情報発信活動を"生業"としています。
「週6回で難しい?じゃあ、透析回数減らせば?」
そう考える方もいらっしゃるかと思いますが…
上記VTube動画でもお話しましたが、私は
"実際の代謝物除去量ではなく、時間と頻度だけで評価される"
[HDP]という指標を
"個人的に"重視しています。この[HDP]の値を上げるため
HHD導入当初から透析「回数」を増やすことを意識し
結果、現在の透析スケジュール(週6回、3時間※週1回のみ4時間)になったわけです。
在宅血液透析で連日血液透析することが、少しでも延命に繋がると
あくまでイチ患者として考える私としては
「透析回数減らせば?」との問いは
本末転倒、ある種"愚問"となるわけです。
一方で
私以外の在宅血液透析患者様の中には
「以前と変わらず、バリバリ働きたい!!」との理由で
在宅血液透析を導入された方も、いらっしゃるかと思います。
が、私は"それ"ができなかった、という話。
Myth_07:Dialysis patients have no say in their treatment.
You are the most important part of your dialysis care team. Each person is unique so be sure to share how you feel and what your goals are with your healthcare team. Sometimes it is easier to talk with your healthcare team off the dialysis unit floor, so don't be afraid to ask for a private meeting.
医者は患者を選べないように、患者も医者を選べません。
正確には、患者は医者を選べない"わけではない"でしょうが
おいそれと違う病院、違う医師へ"鞍替え"するのは難しいとの印象。
"経験者は語る"として、私も
腎保存療法を受けていた病院及び主治医から
腎移植を受ける病院へ転院する際は
診察室で、腎保存療法の権威(主治医)から激しい叱責をくらったという
苦い経験がございます💧
通院血液透析に関していえば
優先順位としては、自宅から出来るだけ近くの医療機関を選択するでしょう。
その医療機関と合わず、他への転院も可能ではあるんでしょうが
なるべく、穏やかな気持ちで「定住」したいものですよね。
人との出会いは、巡り合わせ。
患者と医師・医療スタッフとの出会いも、同じ。
私個人としては、
腎臓移植手術しかり、今の在宅血液透析しかり
主治医及び関係スタッフの方々には、非常に恵まれたと感じてます。
ただ、患者は、医師やスタッフに対し「おんぶにだっこ」では、いけません。
まして、ワガママ放題、モンスターペイシェントと化しては、絶対いけません。
色々な方々への感謝の気持ちを、常に忘れずに。
Myth_08:As a dialysis patient, I worry I will be a burden to my family.
it is important to remember that you are more than your kidney disease or dialysis treatment! (中略) Be open and honest with your loved ones about how you are feeling and give yourself the space and time you need to adjust to dialysis treatments. Once you adjust to your "new normal" on dialysis you will find you will be able to take on new roles and responsibilities at home again too.
"I will be a burden to my family."
たしかに、時々思います。
在宅血液透析について言えば
家族特に介助者には、その「重荷」を背負ってもらうしかありません。
介助者本人が、「重荷」と感じる感じないは別にして
透析日は、彼女又は彼を
身体的・時間的に拘束してしまうことは事実ですから。
ただ、必要以上に、患者が自身のことを卑下することはないと思います。
"Be open and honest with your loved ones"
自分の思いをしっかり伝え、相手の言葉にしっかりと耳を傾ける。
月並みですが
パートナーとの信頼関係を、正しく築くことが大切。
とはいえ、夫婦でも親子でも、いつもいつもハッピーというわけじゃないですから。
そこで、私はいつも妻には
「ありがとう」
と、"あえて"言葉に出して伝えるようにはしてます。
言葉は「言霊」ですから。
関係改善のための小さな"努力"はしてます。
まとめ
以上、透析に対する8つの「神話」を
実体験を基に、再考してみました。
National Kidney foundation で述べられている医療関係者様方が提示する「答え」は
その道のプロが、専門的見地から提示している「事実」なので
間違いではないのでしょう。
ただ、人それぞれ、患者それぞれ。
おかれた環境、現在の病状等でとらえ方、感じ方は違って当然。
したがって、発信者/発話者が"医療のプロ"であっても
それを見聞きする患者側は、頭では「先生の仰る通り」と理解しても
「そうは言ってもね…」と思うことは、大いにあるでしょう。
その点、イチ患者として"患者目線の"広義の医療情報を発信する立場としては
そんな捉えどころのない患者様個々の思いをできるだけ推察して、受け手に
[sympathy]:"(an expression of) understanding and care for someone else's suffering"(引用元:Cambridge Dictionary)
を感じて頂けるようなものも表現できればと思ってます。
それには、〇〇"でない"患者様が(受け手として)いらっしゃるという視点、例えば…
- 思うような食事/飲水制限が(理由があって)できていない患者様もいる
- ペンレステープ/エムラクリームを使用しても穿刺を痛いと感じる患者様はいる
- 在宅血液透析を導入したくても(理由があって)導入できない患者様もいる
- 腎移植を受けたくても受けられない患者様がいる(移植腎廃絶した患者様はいる)
等も、必要かと。
なぜ、そんな風に考えるのか、それは
私自身が〇〇"でない"患者の立場(一人)としての実体験があるから。
巷に数多ある「腎移植」関連の情報を
私自身が〇〇"でない"患者の立場(一人)として見聞きして
正直、良い思いをしていない、という実体験があります。
私は、聖人君子ではありません。
移植腎廃絶した腎移植患者として
巷に溢れる腎移植に関する"美談"を見聞きして
多少なり心が乱れてしまう。
それ(腎移植に関する"美談")が世間で求められている
需要と供給がマッチしている現状を頭では理解はするものの
多少なり心が乱れてしまうわけです。
逆の立場、つまり私が各種情報プラットフォームを通じて
「在宅血液透析、最高!!」
といった発信に終始してしまうことは
在宅血液透析を"導入したくても(現状)できない"
患者様の心を、ある意味逆撫ですることにもなりかねない。
在宅血液透析並びに腎移植に関し、それを経験した患者目線のLIVE感ある情報を発信する
この発信する情報は
"一方通行であるべし"
と、上記ブログでお話させて頂きました。
イチ患者イチ素人(私)の発信する情報は、あくまで"一方通行"
それでいて
- 捉えどころのない患者様個々の思いをできるだけ推察して、受け手に"sympathy"を感じて頂けるようなものも表現する
- それには、〇〇"でない"患者様がいらっしゃるという視点も必要
言っていることが、ある意味「二律背反」難しいミッションですが
ことは人の命に係わる領域(医療情報)ですから
注意してもし過ぎるということはないかと、私は医に関しては素人なのですから尚更。
こんな堅物で頑固な思考の持ち主の私ですが💦
引き続き懇意にして頂ければ幸いですm(__)m
今回も最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございました。
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