以前、ネットの掲示板(某知恵袋)に
「透析治療って、痛いの?苦しいの?」
という、ド直球の質問が挙がってました。
質問者曰く
❝40℃の高熱や骨折でも弱音を吐かなかった自分からしたら
透析をする祖母が痛い・苦しいと言うのが意味不明、何を甘ったれたことを言ってるんだ❞、と。
当然?ベストアンサーでは、こっぴどく諭されてましたが・・・😅
上記例は少し極端としても
世の中の大半の方は、透析治療を正しく理解していないかもしれませんね。
本人にご縁がなければ理解する必要性もないでしょうから
そこについてとやかく言うつもりはありません。
しかし
腎不全が末期に差し掛かり、透析が現実味を帯びてくると、話は違う。
不正確な情報が目や耳に入ることで、透析治療がなにやら得体の知れない行為に思えてくる。
そして、思うかもしれません。
「透析治療って、痛いの?苦しいの?」と。
❝なにやら太い針を毎回刺すらしい❞ ということ位は、認識しているんでしょうか。
ただ
私自身、人工血液透析を続けていると
透析の痛み・苦しみは
"肉体的"な痛み・苦しみ
だけでなく
"精神的"な(心の)痛み・苦しみ
をも感じるようになる。
透析8年と、まだまだ"ひよっこ"の私ですが
現状で感じる、透析治療に関わる患者の
肉体的/精神的「痛み」「苦しみ」 を、私なりの言葉で伝えてみたいと思います。
【透析と痛み】肉体的な痛みだけではない、透析患者が抱える❝心の痛み❞
透析患者の体にどのような変化が起こるのか
全般的な内容は下記書籍を参照しました。
以前の記事でもご紹介したもので
血液透析(=在宅血液透析)導入の際
透析に関する最低限の知識は吸収しておこうと購入したものです。
※ちなみに、私が現在持っているものは古く
最新版は下記の書籍になろうかと思いますので
ご興味のある方は、是非。
透析患者の体のヒミツ(上記書籍より引用)
透析患者の体
- 尿が出なくなる
- 老廃物が溜まる
- 水が溜まる
- 食塩の過剰摂取で体重が増加する
- ぼーっとする
- 眠れなくなる(睡眠障害)
- 喉が渇く
- 徐脈・心停止をひき起こす
- 食事摂取によりカリウムが溜まる
- 食事摂取によりリンが溜まる
- 低栄養になる
- 貧血になる
- 骨がもろくなる
- 血液が酸性になる
- 血圧が上がる
- 透析中に血圧が下がる
- 体がかゆくなる
- 排便コントロールが不良になる
- 下肢がつる
- 血管が詰まる・細くなる
- シャントに異常が起こる
- 目の病気になる
- アミロイドが沈着する
- がんになる
- 心臓が弱くなる
- 足の病気になる
- 感染症を起こす
- 頭痛を起こす
- 脳梗塞を発症する
- 末梢神経障害を発症する
血液透析8年の私が思う
ポイント
- 現在までに経験し、特に苦労した症状
- おそらく在宅血液透析のお陰で、今のところ避けられている症状
- 現段階で症状として表れていないが、常に意識はしている症状
これらが混在した形にはなりますが
私なりに深堀りさせていただきます。
肉体的痛み/苦しみ
12.貧血になる
「腎性」の貧血とは
腎臓から、赤血球の産生を促進する造血因子である"エリスロポエチン"の産生が低下し
Hb値(ヘモグロビン値)が基準値をキープできなくなった状態。
公益社団法人 日本人間ドック学会HPによると
男性の基準範囲は13.1-16.3g/dL。
これに対し 日本透析医学会の
「2015 年版 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」には
1)成人の血液透析(HD)患者の場合、
維持すべき目標Hb値は週初めの採血で10g/dL以上12g/dL未満とし、
複数回の検査でHb値10g/dL未満となった時点で腎性貧血治療を開始することを推奨する。
とあります。
私の場合、月一回の外来時、造血剤を投与してもらいます。
言い方を変えれば
月一回の外来時、造血剤を投与してもらわないと
上記ガイドラインで推奨されている
「10g/dL以上12g/dL未満」はキープできない、ということ。
また
「10g/dL以上12g/dL未満」をキープ、ということは
公益社団法人 日本人間ドック学会HPによる
男性の基準範囲13.1-16.3g/dL のレベルまで造血剤は投与しない、できない、とも言えます。
どうしたって、健常の方に比べて「疲れやすい」のです。
16.透析中に血圧が下がる
この点については、過去の記事をご参照下さい。
17.体がかゆくなる
透析患者のかゆみの原因は多岐にわたるようですが、よく知られている原因は
- 乾燥性皮膚
- 尿毒症物質
でしょう。
A.乾燥性皮膚対策としては、お風呂上り
顔から足の先まで、全身に保湿クリームを塗ってます。
20代、後天的アトピー性皮膚炎で苦労した経験があり
元々乾燥肌でもあるので、皮膚保湿は念入りに行ってます。
B.尿毒症物質に関しては
HHDで「いっぱい透析」することで
尿毒素が蓄積しないことを祈るだけですね。
19.下肢がつる
透析の後半や、除水過多時に起こりやすいようです。
外来時、施設内の透析患者さんをチラ見するのですが
うめき声をあげながら痛みに耐えている高齢者の方、よく見ます。
足がつる=筋収縮が突然起きた時、どう対処したらよいか
特に高齢の方々は、よく分からないんじゃないでしょうか?
また、分かってはいるものの、身体が言うことをきかない。
筋痙攣、筋収縮が起きているのをただ耐える、これはもう拷問です。
どこの筋肉が攣っているのか、その筋肉を伸ばすための手技はどのようなものか
知識としてあれば少しは違うと思うのですが、難しいでしょうね。
23.アミロイドが沈着する
β₂ミクログロブリン(β₂-m)が
主として軟骨、関節滑膜、靭帯などに沈着して
関節炎、ばね指、手根管症候群などを引きおこす。
β₂-m除去率の高いダイアライザーにすれば良い、という話ではなさそうで
ダイアライザーの膜穴が大きいと、その分必要な養分までもが流出してしまう。
β₂-m値は、毎月の採血で個人的には一番気にしている値。
β₂-mのような高分子を効率よく除去するのに
- 長時間透析が良いのか
- 頻回透析が良いのか
これ!といった解はまだないようですね。
数少ないHHD患者である私の透析実績が
未来の透析医療のお役にたてれば本望です。
精神的痛み/苦しみ
06.眠れなくなる
不眠には
主観的不眠と客観的不眠(睡眠障害)がありますが
ここでは客観的不眠のみにフォーカスします。
いわゆる「不安で眠れない」というやつ。
自分が透析患者であることを理解するということは、同時に
「余命が健常者の半分」などといった"客観的"データも認知するということ。
付随して
注意ポイント
24.がんになる
25.心臓が弱くなる
27.感染症を起こす(昨今のコロナ禍では、特に)
29.脳梗塞を発症する
といった、多くの疾患が発症するリスクが高い。
生体腎移植手術をし、長きに渡り免疫抑制剤を服用していた私などは
普通の透析患者より、どうしてもがんのリスクは高くなる、と
主治医からは聞かされています。
毎日、大病に怯えていたら、おちおち夜も眠れないですよ😞
参考書籍には
睡眠剤に頼らず不眠を解消するためには、一つには不眠の原因を見つけることが重要です。
などど、至極当たり前のことが書かれておりますが😹
どうしても、睡眠導入剤を処方してもらうこと、今でもあります。
07.喉が渇く、11.低栄養になる
「しっかり食べて、しっかり透析」が在宅血液透析のメリットの一つ。
幸い現在の私は、❝好きなものを好きなだけ食べる❞ことが出来ております。
水分摂取は多少意識はしているものの、大半の透析患者さんに比べれば十二分にマシ。
注意ポイント
- 飲みたいだけ飲めない
- 食べたいだけ食べれない
週3回4時間の施設血液透析患者さんが抱える
水分制限・食事制限に対する心的ストレスはかなりなもの
と、想像します。
まとめ
最近ある方の
❝(透析って)どういうときに痛いんだろう?❞
というツイートに対して、勝手ながら下記のようなコメントをしました。
血液透析に関連する"痛み"の感じ方は、
透析という医療行為に対しての、患者の受け止め方でも違う、
と個人的に思います。
HHDの場合、痛いと分かっていて毎日自分で自分の腕に穿刺します。
私は透析を「延命治療」とは思ってません。
"人生を善く生きる"ため毎日折れそうな気持ちを鼓舞してますよ。
と同時に
透析の苦しみは、
患者の年齢はもちろん、どんな基礎疾患を患っているかにもよるでしょう。
実際透析する私にも想像出来ません。
「もう止めたい…」と、ギリギリのところで頑張っている多くの患者さんに対しては、
軽々しい言葉はかけられません
とも。
色々な年齢層にまでSNSが普及したことで
病気に苦しむ患者の方々が、自身の胸の内を
まだ見ぬ"ネット民"に向けて発信することもあろうかと思います。
ただ
SNSに呟ける方々はまだマシで
誰にも思いを伝えられず人知れず苦しんでる患者さんも、多くいるのでは。
~共生~
現実を受け入れ、
自分としっかり向き合う。
「善く生きる」ことの意味を
問い続ける旅の途中で、
出会うであろう全ての人が、
善く生き、
悔いのない人生を送るための、
一助となる。
健常の方よりは彼らの立場に近い、私のようなものが
彼等の声なき声「心の痛み」を、推測し言語化する。
当ブロブの上記ミッションにも通ずることではないか。
この理念に恥じぬように。
今一度、気が引き締まる思いがいたしました。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。