Covid-19の爆発的感染の中、透析患者のリスク、特に
公共交通機関の利用や
同一箇所で多数の患者との同居が避けられない
施設血液透析(CHD)について
高い感染リスクが指摘されています。
そんな中、海外などのメディアでは
これを機に、患者を施設透析から在宅へ
といった話を、しばしば目にします。
現在、在宅血液透析(HHD)を行う私としては
確かに、より多くの透析患者で在宅血液透析が可能となれば
今回のような有事に見舞われても感染リスクをいくらか回避できるな
と思う一方で、そうはいっても
❝実際やってみると、結構大変ですよ❞
と言いたい自分もおります。
そこで、今回は
私にとっては、もはや当たり前に行っている在宅血液透析ですが
改めて、実際やってみて感じる
HHD患者に求めれれる資質を
【在宅透析の条件】HHD生活を続けるため患者に求められる資質
はじめに
前記事
ここで私は、HHD患者に求められる力として
「徹底した自己管理能力」
を挙げさせて頂きました。
「徹底した自己管理能力」という言葉は
これからご紹介する
HHD患者に必要なさまざまな資質を包含する言葉
と、ご理解頂ければと思います。
つまり
「徹底した自己管理」を果たす上での❝武器❞
のようなイメージでしょうか。
メンタル面
冷静さ(Coolness)
在宅血液透析では
穿刺時、透析中、針抜時等
さまざまな場面で、トラブルが起こりえます。
トラブルについては
トレーニングやマニュアル書によって
事前に頭の中に入れておくことは可能ではありますが
それはあくまで机上でのこと。
実際に直面するトラブルは
事前に見聞きしていたそれとは、やはり違います。
2D(マニュアル書)と3D/4D(現実)との違いといったところでしょうか。
HHDの経験を積むことで
起こりうる❝トラブルデータ❞を蓄積させることはできますが
そのトラブルにいちいちパニックになっていては
折角メモリーされている❝処理データ❞も、迅速に引き出せません。
目の前で生じたトラブルに対して
迅速且つ適切な判断、行動がとれるためにも
冷静さ(Coolness)
は必要と思われます。
清潔さ(Cleanliness)
透析用に使用している部屋は
当然、医療行為をする場所なので
常に清潔な状態を保っていなければいけないと思います。
ただ
レイアウトの都合で、透析備品が積み重なって煩雑になっていたり
生活スペースとの区切りがなかったりすると
清潔の保持がおざなりになりがち。
部屋をまめに掃除機かけたり
周辺をアルコールで消毒したり。
この度のCovid-19感染拡大で
「公衆衛生リテラシー」の必要性
については耳にされたかと思いますが
在宅血液透析においても、患者に高い
「公衆衛生リテラシー」は要求されると思います。
勤勉さ(Diligence)
透析機器の操作を文字通り機械的に覚えることは
ちゃんとトレーニングを行えば、さほど問題ではない。
ただ
大人であれば、どんな場面でもそうだが
与えられたことをただやるだけでは不十分で
進んで自己研鑽に励む姿勢が必要だと、個人的には思うところ。
自身の病気について、例えば
- 腎臓という臓器の働きについて
- 腎不全について
- 血液透析について
- 透析機器の仕組みについて
- 腎移植について
透析患者が知るべき情報は多くあり、特に在宅血液透析では
在宅で自身が行う医療行為については自己責任となるわけですから
積極的にそれらを学ぼうとする姿勢は大切かな、と。
素人が中途半端に知識を得ることのリスクは、たしかにあります。
知識を過信せず
支えてくれる医師や看護師の方々に対し常に謙虚であれ。
それさえ忘れなければ、自身で身に着けた知識は
トラブルに遭遇した時などに
臨機応変な対処ができる可能性を広げてくれると思います。
我慢強さ、忍耐力(Patience)
これは主に、自己穿刺時に必要な資質です。
自己穿刺については
これまでいくつかの記事でご紹介させて頂いております。
自己穿刺の稀有なところ、それは、
「能動的側面」と「受動的側面」を併せ持つ
ということ。
つまり、
針を持つ手(私の場合は右手)は、腕に針を「刺す」という能動的行為だが、
シャント肢側は、他人穿刺同様、腕に針を「刺される」という受動的行為。
針先と皮膚との距離が近づく刹那、
この「能動的行為」と「受動的行為」とが同時に行われる。
まさに、
sadisticな自分とmasochisticな自分とが、
脳内で、せめぎあいを展開するのです。
色々策を講じたところで
結局、穿刺は痛い。
自己穿刺は
自身で痛いと感じながら
針を押し進めていかなければいけません。
痛みに我慢して進めた結果、失敗。再穿刺
再穿刺も失敗、再々穿刺・・・
在宅血液透析生活では
いつ気持ちが切れてもおかしくない場面が
何度と訪れます。
我慢強く、忍耐強く。
ただ、勘違いしてはいけないのは
❝我慢大会❞ではありません。
担当医師から聞いた話ですが
我慢して穿刺し続けた結果、失敗
酷く腕を腫らして外来した患者さんがいたとか。
「くれぐれも無理はしないように」
とのことです。
フィジカル面
筋力(Strength)
シャント肢に血液回路が接続され、透析が開始されると
身体の自由度は、かなり制限されます。
施設透析と違い、在宅血液透析では
ずっと寝た姿勢でいられるわけではありません。
透析機器ディスプレイに表示された数値を透析経過表に記入したり
警報が鳴ったら、画面操作を行わなければいけません。
当然その都度
横になっている身体を起こす必要があります。
両手が自由なら、なんてことない起き上がりも
片方のシャント肢が制限されている中では
全身を上手く使う必要があります。
ある程度の腹筋・背筋は必要。
私の場合、首をつかって状態を起こす動作をよくするので
首を屈曲・伸展する筋肉も必要。
正直、年齢があがってしまうと
この点は難しくなってくるかな、と思われますが。
手先の器用さ(Sophistication)
透析の手技について
一般的には慣れだと思われてるのではないか、と。
トレーニング時、スタッフの方々も
「皆さん、問題なくやれてますよ」と
優しくお声がえして励ましてくれはしますが
実際やってみて、個人的に感じるのは
やはり、元々手先が器用なほうが良いな、と。
指先の巧緻性ですね。
例えば、自己穿刺の際
まず、指先まで全神経を集中させます。
穿刺し金属針を抜き
医療用テープでカニューラや、血液回路を腕に固定する。
その際
手際良くやらないと、針先に血栓が生じてしまうし
固定作業が雑だと、カニューラが抜けたり
といった事故をも起こしかねないですから。
とは言うものの
器用、不器用は、生来のこともあるので
自分は不器用だ、と思う方は
まずはなにより、慎重に手技を行うことですかね。
まとめ
「徹底した自己管理」を果たす上での❝武器❞として
いくつか求められる資質について、お話を進めて参りました。
ただ、大前提として
現在HHDを行っている患者、全ての方々が共通して持っているもの、それは
「生」への強い執着
ではないかと、私は思います。
在宅血液透析をやっているにも関わらず
施設血液透析と同日数同時間の透析では、意味がありません。
長時間透析か頻回透析どちらか、または両方。
いずれにしても
長く続ける、毎日続けることは
言葉では簡単ですが、やるとなると大変です。
なにか、気持ちの拠り所がないと続けられないか、と。
その拠り所は、やはり
「生」への強い執着心
だと思います。
「今日は休んでもいいかな」と諦めることは簡単。
在宅血液透析生活を維持するには
強い意志を持ち続けられるかどうかだと、私は思います。
と言いつつ
無理をし過ぎない
といのも、継続する秘訣ではあるんですがね。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。