「腎臓病患者と食事」との関係については、大雑把に下記のように言われます。
- 厳しい食事制限を強いられる、慢性腎不全末期
- 移植腎保護のため、それ相応の食事制限はある、腎移植後
そして、現在
在宅でほぼ毎日、血液透析をする私は、ぶっちゃけ
好きなものを、好きなだけ食べてます😁。(注:もちろん、食べ過ぎは❌)
- 「慢性腎不全末期」
- 「腎移植後」
- 「在宅血液透析期」
3つの異なる病状、状況下で
それぞれ異なる食事との向き合い方をしてきた、私。
上記過去記事「まとめ」で少し触れましたが
慢性腎不全末期の食事制限については
ドナーである母が、徹底した栄養管理のもと
それでいて非常に美味しい料理を、毎日提供してくれていたこともあり
「食事制限が辛い」
と思ったことは、なかった。
とはいえ
現在の食生活とは、かなり差があったことは、たしか。
ありがたいことに、好きなものを好きなだけ食べてる今
ポイント
- どれほどの食事量をしていて
- 食事制限の厳しかった「過去」と、どれほどの差があるのか
Table of Contents
【透析と食事】❝しっかり食べてしっかり透析❞。食生活の「過去」と「現在」を比較する
現在(在宅血液透析期)
話をシンプルにするため
極端な"架空のケース"を想定します。
在宅血液透析患者(40代男性)の、ある1日の食事量
朝食
エネルギー(kcal) | 食塩相当量(g) | たんぱく質(g) | |
トーストセット | 312 | 1.0 | 7.2 |
ドリップ珈琲 | 6 | 0.0 | 0.3 |
スティックシュガー | 12 | 0.0 | 0.0 |
コーヒークリーミー | 12 | 0.0 | 0.2 |
(参照元:デニーズHP)
昼食
エネルギー(kcal) | 食塩相当量(g) | たんぱく質(g) | |
牛丼(並)
とん汁たまごセット |
974 | 5.92 | 36.3 |
(参照元:すき家HP)
夕食
エネルギー(kcal) | 食塩相当量(g) | たんぱく質(g) | |
All Beef ハンバーグ&海老フライ | 563 | 2.3 | 25.9 |
にんにく醤油 | 75 | 1.8 | 1.5 |
ライス(大) | 437 | 0.0 | 6.5 |
みそ汁 | 25 | 1.9 | 1.9 |
シーザーサラダ | 149 | 0.9 | 4.8 |
こだわりアイス
&ソルベ バニラ |
138 | 0.1 | 2.4 |
(参照元:デニーズHP)
1日摂取量の総計
エネルギー=2,703kcal
食塩相当量=13.92g
たんぱく質=87g
過去(慢性腎不全)の食事
「慢性腎臓病 生活・食事指導マニュアル 〜 栄養指導実践編 〜」によると
慢性腎臓病患者(※ここではステージG4と想定)に対する食事指導として
減塩6g/日未満、3g/日以上
たんぱく質制限食(0.6~0.8g/kg体重/日)
高K血症があれば摂取制限
*エネルギー必要量は健常人と同程度(25~35 kcal/kg 体重/日)
とあります。
たんぱく質については
当時の自分の体重が、現在のDWとほぼ同じ60kgと仮定すると
摂取量は、48g(=0.8×60)と、現在(上記モデルケース)の約半分。
ただ、実際はもっと痩せていたので、より少ない摂取量。
塩分制限と合わせ、かなり厳しい食事制限だったことがわかります。
ほぼ毎日食する「白米」に含まれるたんぱく質の摂取量を制限できれば
その制限できた分を、肉・魚などを使ったメインディッシュに投入できる。
ということで
お米は、下記のような「低たんぱく米」を食べてました。
冒頭に申し上げたように、毎日の食事に不満は全くありませんでしたが
それでも、なかなか十分なエネルギーを確保することは、難しかった。
たんぱく質制限によるエネルギー不足を解消するため
腎不全患者の皆様にはお馴染みの
「元気ジンジン」「ハイカロリーゼリー」等
補助食品で、カロリー不足を補ってました。
私が食べていた頃から、約20年弱は経過しているわけですから
上記商品なども改良されて、結構美味しくなってることでしょう。
参考
食事制限時に摂取していた「エネルギー補助食品」や「低たんぱく米」ですが
もちろん、病院から無償提供されるわけではないので
全ての購入費用は、自費。
しかし、これらの費用
医療費控除の対象には、ならないんですね。
当時、税務署に税務相談した際は
「薬じゃない」
との一点で、即却下。
現在でも、その点に変化はない様子。
国や行政は、食事療法を続ける腎臓病患者に対する評価を
少し見直してもらいたいです。
過去(生体腎移植後)の食事
実際、経験して思うのは、腎移植は
「手術が終わったらOK」
といった類のものではなくて
時の経過とともに、色々な要素が複雑に絡み合い
まるで❝綱渡り❞ような医療だな、ということ。
- 長い透析生活を経て移植手術を受けたか
- 腎保存期で移植手術を受けたか
手術前の患者の全身状態によっても
術後の食事へのアプローチは、変わるでしょう。
参考資料として
日本腎臓学会誌「総説 腎移植シリーズ: 腎移植と生活習慣病」をご紹介しておきます。
腎移植患者の食事指導における注意点としては、下記にあるように
多くの項目が並びます。
- 慢性腎臓病(chronickidneydisease:CKD)
- 適正体重の維持
- 電解質異常の合併(カリウム・カルシウム・リン異常)
- 高血圧の合併
- 糖尿病の合併
- 高脂血症の合併
- 高尿酸血症の合併
- 免疫抑制薬の副作用
また、同文献には
腎移植患者の安定期腎機能は個々の症例により異なるが
~(省略)~
単腎であることから移植腎はGlomerular hyperfiltration( ※1 糸球体過剰濾過)
に陥っている 。このような腎機能、腎血行動態異常を考慮すれば
蛋白制限食は必須である。しかし
~(省略)~
少なくとも移植手術直後の周術期には術後異化亢進状態という病態でもあり
極端な蛋白制限は避けたい。
との記述もあることからわかるように
各ステージ毎に食事のコントロールが変わる。(※1は、私が加筆。)
当時を振り返ると
移植手術により、厳しい食事制限から幾らか解き放たれたのは事実
例えば
- 低たんぱくのお米が、普通のお米に変わった
- 肉・魚類を、細かく計量せずに食べれるようになった
しかし、多くの腎移植患者の方々同様
せっかくもらった腎臓を大切に、一日でも長く機能してもらうため
「ある程度の塩分制限、たんぱく質制限はしなければ」
という意識は、常に頭にはありました。
まとめ
一般的に、在宅血液透析のメリットとして
❝栄養状態の改善❞
が、よく言われます。
私も上記過去記事で
「低栄養状態の起因する感染症のリスク」という観点から
施設透析に比べた在宅透析の有意差をご紹介しました。
しかし
日本透析医学会雑誌「在宅血液透析患者の栄養状態の評価」を読むと
身体構成成分、血液生化学検査結果においては、
HHD患者とCHD(※2 施設血液透析)患者の間に
栄養学的な有意差はみられなかった。
今後、HHDにおける高い透析量、十分な栄養摂取量、
高いQOLが栄養状態に及ぼす影響を追跡していく必要があると考えた。
と、締めくくられているように
HHD患者数が極端に少ないことからくる、不十分な検証ゆえ
現時点ではHHDを
「いっぱい食べて、元気に長生き!」
などとは安易に結論づけることは、出来ない。(※2は、私が加筆。)
ただ、実体験として
食事に対するストレスが無い、というだけでも
確実にQOLが向上していることは、実感できている。
権威による専門的な臨床結果が少ない現実においては
このブログのような"unofficial"な場所から
「HHDする私は今、こんな元気ですよ~」と発信することは
多少なりとも有意義なものとなるのでは
そんな思いも込めて
今後も、実のある記事を投稿して参ります。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。