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メリット/デメリット 在宅血液透析

【在宅透析の課題】在宅血液透析の適応/患者に求められる「自己管理能力」

2022年3月3日

公益社団法人 日本透析医会

腎不全対策委員会在宅血液透析部会が

2020年8月に発行した『在宅血液透析管理マニュアル(改訂版)』

※初版は2010年2月

こちらの"Ⅱ. 在宅血液透析の適応"

在宅血液透析を導入する患者の、言わば

「条件」を幾つか挙げております。

今回はその中の一つ…

[su_note note_color="#ff919a"]

"患者本人に自己管理能力があること"

[/su_note]

ここにフォーカスをします。

在宅血液透析導入から9年目(2022年3月現在)のイチ患者である

"私が考える"「自己管理能力」がどういうものかを

お話して参ります。

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【在宅透析の課題】在宅血液透析の適応/患者に求められる「自己管理能力」

はじめに

在宅血液透析は、医療者が不在の状況で、患者の責任の下で施行される治療である。治療が安全に安定的に行われるためには、患者が治療プログラムに見合った自己管理を行わなければならない。

(引用元:『在宅血液透析管理マニュアル(改訂版)』)

全くその通りなのですが

患者が、在宅血液透析を実生活に落とし込んだ時、具体的に

どのような場面で、どのような「自己管理」が求められるか

正直見えにくいですよね。

そこで

在宅血液透析導入から9年目(2022年3月現在)のイチ患者である

"私が考える"「自己管理能力」を、独断と偏見でザックリ…

  1. 透析中の自己管理能力
  2. 透析物品の自己管理能力
  3. 透析日程の自己管理能力

とに分けてみました。

透析中の自己管理能力

[su_note note_color="#d8d5d5"]

病院に到着、体重を測りベッドに横になる

スタッフがやってきて穿刺、血液回路が接続され透析開始

透析中は思い思いの過ごし方で透析終了を待つ

透析終了後はスタッフが抜針/止血

※止血の仕方はまちまちか?(自己止血 or 止血バンド)

止血されていることを確認後、体調に問題なければ離床

[/su_note]

施設通院血液透析患者様が透析日

施設へ到着してからの大まかな流れは、こんな感じであろうと思います。

これに対し、在宅血液透析では患者は

  • 透析前も
  • 透析中も
  • 透析後も

「仕事」があります。中でも

日々、在宅で血液透析していて難しいと感じるのは

透析"中"の体調管理です。

ここで言う難しさというのは

決め通りのバイタルチェックを行うこと、ではなくて

"自身の身体との対話"

つまり

モニターの数字には表れてこない、身体からのメッセージを敏感に察し

適切な措置が行えるかどうか、という点。

一般的に、収縮期血圧(上の血圧)が基準値(私は100)を下回ると

アラートが鳴り、除水が止まる仕様/設定が施してあると思いますが

そこに至るまでの体調の変化は、個人個人違うでしょう。

在宅血液透析導入当初の私は

気分不快の最初の兆候として、身体特に上半身が鬱陶しくなりました。

(ムズムズするような感じ)

次に、脈拍が上がってきた"ような感じ"がしてました。

この、〇〇してきた"ような感じ"を、私は大事にしています。

実際、その時点でバイタルを測定しても、思ったほど頻脈となっていない場合はあります。

しかし

自身に起きる些細な変化を早めにキャッチすることで

ある程度、肉体的・精神的に余裕のある状態で

その時々の状況に応じた迅速な対応、例えば…

  • 除水スピードを落とすのか
  • 除水を一旦止めるのか
  • もう、その日は透析は止めるか

等々、が行えるわけです。

恥ずかしながら私、過去に一度(厳密には二度?)

透析中に気を失ったことがございます。

[su_box title="補足" style="soft" box_color="#0f50fb"]

本来

医療者不在の在宅血液透析で、患者が透析中意識を失うことなど

決して起きてはいけません!!

起きてはいけませんが…起こってしまった。

私の場合

「在宅血液透析」が初めてであるだけでなく

「血液透析」そのものが初めてでして。

※通院血液透析を経験することなく、移植腎廃絶後、即、在宅血液透析導入

そのため

透析中の気分不快がどのようなものなのか

身体にどのような症状が起きるのか

"データベース"がなかったわけです。

色々な気分不快が生じても

「透析とは、そういうもの」

として、症状を我慢してしまっていたんですね。

(※理由にはなりませんが💦)

(詳細、下記ブログ参照👇)

[/su_box]

施設血液透析患者様が透析中、血圧が低下し意識を失ったとしても

当然ながら、病院スタッフが素早く処置して下さいます。

在宅血液透析では、"必置"である介助者が(私の場合は妻)そばにいるわけですが

医療のプロではないですから。したがって

想定しうるアクシデントは、出来る限り未然に防ぐ

そのためにも、透析中の徹底した自己管理、つまり

"自身の身体との対話"ができるか否かは、重要な要素かと思います。

ちなみに、想定しえない不測の事態にどう対処するか…

ここは、残念ながら、経験がモノを言う領域かもしれません。

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透析物品の自己管理能力

在宅血液透析に必要な医療備品は、非常に多いです。

[su_note note_color="#fffbc6"]

  • 透析液
  • 生理食塩水
  • ダイアライザー
  • 血液回路
  • 抗凝固剤(ヘパリン)
  • 穿刺針
  • 消毒綿
  • 消毒キット
  • シリンジ
  • 洗浄用次亜塩素酸
  • 洗浄用酢酸

[/su_note]

正しい在庫管理のもと、適切な数を発注しなければなりません。

次回発送日前に欠品なんて事態は、避けなければなりません。

病院側からも不測の事態を想定して1~2週間は余分に発注するよう言われていますが

自宅の備品庫のスペースの問題もあることから

やみくもに多く発注するわけにはいきません。

発注時、一番気を遣うのは、透析液と生理食塩水。

ヘパリンやダイアライザー、血液回路などは、その大きさから

最悪、欠品したら病院へ取りに行くことも可能といえば可能ですが

ここに注意

くれぐれも誤解のないように。

自分の発注ミスで、このようなことをしないことが大前提。

病院はじめ多くの関係者の方々にご迷惑をおかけするので、絶対に避けるべき。

透析液と生理食塩水、特に透析液はそういうわけにはいきません。

参考

  • 透析液6㍑タイプ1セット約12㎏
  • 透析液9㍑タイプ1セット約18㎏

HHD管理医療施設からは、備品発注の締め日が指定されています。

もしも発注を失念したら…

生命に関わることなので、施設側も

「締め日を過ぎたから絶対に発注を受け付けない」

なんてことは無いと思いますが(※私の勝手な推測…)

病院スタッフはもちろん、各製薬関連会社様、各配送業者様等々

多くの方々に多大なご迷惑をおかけることになります。

追加費用を払えばよい、という問題ではないです。

色々な関係者様方のご苦労とご協力の上で

在宅で血液透析が行えているということを、患者は忘れてはいけません。

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透析日程の自己管理能力

「(透析と透析の間を)中2日空けないこと」

これは、HHD管理医療施設主治医からの指示、つまり

「通院」ではなく「在宅」を選択した場合の、謂わば"マスト"条項。

ここを順守すれば、ある意味

「何時間透析しても、何回透析しても、構わない」

というのが在宅血液透析。※あくまで可能性の話…

私の主治医は"患者の意思を尊重する"立場をとって下さっているので

[su_box title="補足" style="soft" box_color="#0f50fb"]

医師は患者を"見て"いるようです。つまり

  • この患者は、自己管理がしっかりできている
  • この患者は、自己管理ができていないので、指導が必要

といった風に。

自分で言うのもナンですが、私は自己管理はしっかりしている方だと思います。

幸い、主治医からも

「DAISUKEさんは、しっかりやられてるから」

というお言葉を頂いており、ある意味、自己管理のできている"私だから"

主治医が"患者(私)の意思を尊重する"立場をとって下さっている

とも言えるかも。

[/su_box]

HHD導入当初から、透析スケジュールの決定権限は、患者(私)にありました。

「何時間透析しても、何回透析しても、構わない」

そこで私が"個人的に"意識している指標があります。

HDP (Hemodialysis Product)

「1回透析時間」×「回数²」

で計算される。つまり

実際の代謝物除去量ではなく

時間と頻度だけで評価されるものです。具体例を示すと…

  • 施設血液透析での標準的な血液透析(週3回、4時間)
  • 長時間血液透析の一例(週3回、8時間)
  • 現在の私の透析スケジュール(週6回、3時間※週1回のみ4時間)

それぞれのHDPを算出してみると…

  • 36(=3²×4)
  • 72(=3²×8)
  • 108プラスα(=6²×3)

HDP(Hemodialysis product)に関してはエビデンスレベルがまだまだ低い状況なようで。

したがって、私の現在の「108」という値が具体的に

どこに・どれだけの優位性があるのかは、不明ではありますが

私"個人的に"は大切にしている指標ではありますので

在宅血液透析導入当初から、HDPを少しでも上げるために

透析「回数」を増やすことを意識し、結果

現在の透析スケジュール(週6回、3時間※週1回のみ4時間)となった

ということになります。

ただこれ、患者様によっては

「透析スケジュールを、自由に決めていいですよ」

と言われると、かえって困る…

という方も、いらっしゃるかもしれません。

[su_note note_color="#80f9fd"]

「自由とは、同時に責任を伴うものである」

[/su_note]

これは

2006年サッカーWCドイツ大会へのぞむジーコジャパンの時

中田英寿選手(氏)が言った言葉。

何が言いたいか…

自分で自由に決めた透析スケジュールに対して

自身で責任を負う必要(覚悟?)はあるかと。

そういった意味で

透析日程に対して自己管理ができること

これも、在宅血液透析患者に求められるマストの要素かと思います。

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まとめ

thanks,

以前、こんなことがありました。

月1回のHHD管理医療施設への外来時

待合室で座って主治医との問診を待っていたら

通院血液透析患者のお一人が

施設へ入ってくるなり、近くにいたスタッフに大声で

「在宅透析ってのがあるらしいじゃん、病院通わなくっていいんだって??」

と、仰いました。

その患者さん

たまたま近くにいた院長(私の主治医)に呼ばれ、院長室へ。

数分後

院長室を出てきたその患者さんに

先ほどの威勢は、すっかり消えておりました。

きっと、院長から諭されたのでしょう(※あくまで推測)。

その患者さんは、在宅血液透析の

「通院の必要がない」こと"のみ"に食いついて

「在宅、イイじゃん!俺にもやらせてくれよ!!」

となったのかと(※あくまで推測)。

しかし、無責任を承知で言わせて頂ければ

上記のようなメンタリティーで在宅血液透析を導入しても

長く続けることは、非常に難しいかもしれません。

[su_box title="補足" style="soft" box_color="#0f50fb"]

介助者が医療者で、患者自身は何もしない

といった例外はあるかと思いますが…

[/su_box]

一方で、こんな患者さんの話を聞いたことがあります。

その方は女性で、まだ幼いお子様がいらっしゃるようで

「この子たちを残してまだ逝くわけにはいかない」

との強い決意で在宅血液透析を導入

毎日、在宅で血液透析を行っているといいます。

在宅血液透析をめぐる両極端なケースをお伝えしましたが

患者がどの治療法を選択するかは、患者各々の判断、つまり

「どちらが正しい、どちらが間違い」

という類の話ではない、ということ。

先に登場した

「在宅透析ってのがあるらしいじゃん、病院通わなくっていいんだって??」

と息巻いた患者さんも

正しく"在宅血液透析"というものをご存知なかっただけ。知った上で

「じゃあ、俺には無理!通院でいいや」

とするのは、その患者様の判断であって、他人がとやかく言う話ではない。

一方

「この子たちを残してまだ逝くわけにはいかない」

との強い決意で在宅血液透析を導入された患者様は

在宅血液透析を導入することが、少しでも延命に繋がると

"その患者様は"考え、在宅血液透析を導入するという判断をした、という話で

これについても、他人がとやかく言う話ではない。

現在の私は、非透析日は土曜日1日だけ

「嗚呼~また今日も透析か…」と

時に気持ち折れそうになりながら

ほぼ毎日が"透析日"の生活を送るのは

先の女性患者様に近い理由、つまり

「一日でも長く生きたい」という

ある種の"生への強い執着"故のこと。

しかし、くどいようですが

あくまでイチ患者である"私は"、在宅血液透析にそこ、つまり

「延命」を求めた、というだけの話。

[su_box title="補足" style="soft" box_color="#0f50fb"]

透析機器メーカー『NxStage社(NxStage Medical, Inc.)』のHPには

在宅血液透析のメリット(Benefits)として

Improved 5-Year Survival

を挙げていることから

在宅血液透析が、平均余命の観点から優れている点を

示唆しているとも言えなくもないですが…

現状日本では、在宅血液透析を行う患者数が非常に少ない

諸々のデータを取るにも母集団がまだまだ小さく

「在宅血液透析やれば、長生きできますよ」

なんて安易なことを、医療関係者の方々も言えないんじゃないか、と推察されます。

[/su_box]

[su_note note_color="#93fd80"]

在宅血液透析並びに腎移植に関し、それを経験した患者目線のLIVE感ある情報を発信する

[/su_note]

というプロジェクト『腎生を善く生きる』で

私が皆様にお伝えしていきたいことは、決して

「在宅血液透析、最高!!」

といったことでは、ありません。

どちらかと言えば

「在宅血液透析、私はイイと思ってますが、実際大変ですよ」

というテイストかと。そこは意識してます。

その「実際大変ですよ」の一つが、今回お話した

「徹底した自己管理」かと。

"言うは易く行うは難し"

半端な気持ちでは、在宅血液透析を継続することは難しい、というのが

HHD導入から9年目を迎えた(2022年3月現在)

イチ患者の、偽らざる本音です。

現在、腎臓病患者様の前は複数の"選択肢"があります。

[su_note note_color="#ffd8f4"]

  • 通院血液透析
  • 腹膜透析
  • 腎移植
  • 保存的腎臓療法(Conservative Kidney Management:CKM)

[/su_note]

そして「在宅血液透析」

一般的に言われているそれぞれのメリット、デメリットについては

"ググれ"ば、色々分かります。

それを患者様自身が精査して、自己責任で選択する。

どれが良い悪いという類の話ではありませんが

もし今、在宅血液透析導入を考えている患者様いらっしゃって、彼等が

「現役」在宅血液透析"イチ患者"の声を

複数の情報プラットフォーム(ブログ/YouTube/Twitter/Instagram等)を通じて見聞きし

それらが皆様の"判断材料の一つ"となれば、幸いです。

~共 生~

現実を受け入れ

自分としっかり向き合う。

「善く生きる」ことの意味を

問い続ける旅の途中で

出会うであろう全ての人が

善く生き

悔いのない人生を送るための

一助となる。

この理念(ポリシー)の下

引き続き、発信活動に注力して参ります。

今回も、最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございました。



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