腎臓移植患者がウイルス感染すると、なぜ重篤な状態につながる可能性が高いのか?
そりゃ、当たり前です。
免疫抑制剤を服用しているから。
私自身、透析患者である前は、
腎移植患者
でありましたから、
新型コロナウイルスが猛威を振るう現在における、
腎移植患者の方々の胸中、
少しは理解しているつもりです。
そこで、今回は、
私の移植腎保存期当時を振り返りながら、
腎移植患者が、
いかに、ウイルスに対し脆弱であるか、をまとめていきます。
ただ、目的は、
その脆弱性にのみ焦点を当てるわけではありません。
ウイルスに対する正しい防御策を講じるため、
腎移植患者が、自身の免疫力について
最低限の正しい知識を身に着けることにあります。
参考まで、
透析患者の、ウイルスに対する脆弱性については、
透析患者がウイルス感染すると、なぜ重篤な状態につながる可能性が高いのか?我々透析患者自身が知らなければいけないこと
Table of Contents
【腎移植と感染症】レシピエントがウイルス感染すると、なぜ重篤な状態につながる可能性が高いのか?
私の免疫抑制療法
私が生体腎移植手術を受けたのは、今から約18年前の2002年末。
その当時の私が服用した免疫抑制剤の❝3本柱❞は、
- シクロスポリン or タクロリムス
- ミコフェノール酸モフェチル
- 副腎皮質ホルモン
です。
シクロスポリン or タクロリムス
総称名はそれぞれ、
「ネオーラル」と「プログラフ」
両者とも、リンパ球の一つであるT細胞の活性を抑制する薬。
移植手術直後から数年(詳細な年数は忘れました)は「ネオーラル」、
その後、移植腎が廃絶するまで「プログラフ」を服用。
腎生検で拒絶反応が確認され、
その進行を抑えるために、
「ネオーラル」から「プログラフ」に切りかえた、
と記憶しております。
蛇足ですが、
「ネオーラル」の、あの臭いが苦手で、
アロマを含ませたマスクをしながら飲んだり、
鼻を洗濯バサミで挟みながら飲んだり、
色々しました。
「プログラフ」に変わったときは、
効果云々よりも、
あの臭いから解放される~と、
安堵したこと、覚えてます。
ミコフェノール酸モフェチル
総称名は「セルセプト」
代謝拮抗薬に分類される薬剤で、
細胞分裂を阻害する薬。
移植腎保存期、全期間を通じて、
一番、服用する量が変動した薬でした。
拒絶反応が起きたり、感染症を起こしたり、好中球が下がったり・・・
その都度、数を増減させて、
体調の変化を観察してましたね。
飲む量が多いうえに、カプセル1錠が大きいので、
毎月、院外処方でもらう時は、結構な量でした。
副腎皮質ホルモン
いわゆる「ステロイド」剤、
薬名としては「プレドニン」です。
手術前から術直後数カ月は、
5㎎単位の「プレドニン」を相当量服用しましたが、
その後、服用量は減り、
1㎎単位の「プレドニゾン」を服用してました。
前記事
在宅透析患者が、過去の腎臓移植手術を振り返る(エピソード5)
などでも書きましたが、
入院中に、免疫抑制剤の専門書を読み、
そこで、
「シクロスポリン」や「ミコフェノール酸モフェチル」の作用を知りました。
実は、手術を受ける前は、
免疫抑制=ステロイド
との認識しか持ち合わせていなかったので、
術前から各種免疫抑制剤を服用していたのですが、
この「プレドニン」に対する不安がとりわけ大きく、
最初に飲んだ、あの夜の病室での光景は、
今での覚えてます。「嗚呼~いよいよだな~」って思いましたね。
腎移植手術~移植腎保存期
腎移植は、
手術が終われば一安心、
というものではありません。
術直後から数カ月、1年、3年、5年~と、
その時々で、身体の状態は変化します。
急性拒絶反応
術後1カ月に起きる拒絶反応。
私も起きました。
今思うと、あの時期の拒絶反応は「痛かった」ですね。
まあ、自分ではどうすることもできないし、
先生方にも最善を尽くして頂いたので、致し方無いのですが。
当時の主治医とは今での付き合いがございます。
(シャントを診てもらってます)
今でもたまに、
「あの時の拒絶反応をもう少しコントロール出来ていればね」
とおっしゃいます。
今は当時より免疫抑制剤も良くなっているようなのでね。
サイトメガロウイルス感染症
これは厄介でした。
術後1カ月で急性拒絶反応が起こり、
パルス療法等で、拒絶反応は落ち着いたのですが、
その後も熱が完全に下がらない。
そこで調べてみたら
「サイトメガロウイルス感染症」
だったわけです。
「サイトメガロウイルス」
なにやら強そうな名前です・・・
通常の自己免疫下では感染しない常在菌である「サイトメガロウイルス」
こいつが、
移植手術直後から急性期の、
身体が超低免疫状態にある時に、
ムクムクと出てきて、悪さするわけです。
熱といっても、高熱というわけでなく、
地味に高いという感じの熱が、長~く続く。
抗ウイルス薬を点滴投与し、
全快するまで1カ月近く入院してましたね。
サイトメガロウイルス感染症の前後、
どちらかはっきりとは覚えてませんが、
この時期、「歯」もやられました。
虫歯治療済の歯の根っこが、やられました。
これも、サイトメガロウイルス感染症と理屈は一緒で、
通常の自己免疫下では悪さしない常在菌が、
移植手術直後から急性期の、超低免疫状態にある時に、
歯槽骨を攻撃しまして。
痛かった~~~!
結局、その歯は抜歯しました・・・
慢性拒絶反応
術後6カ月~数年
徐々にCR(クレアチニン)の値が上昇。
腎生検をし、病理検査に出すことで、分かります。
慢性拒絶反応との診断が下った時、
移植腎の❝命❞が有限なのだと、理解するのです。
悲しい現実です、だって、
悪化の流れはもう止められないわけですから。
❝一日でも長く、この腎臓と一緒に生きたい❞
そんな思いでした。
好中球減少症
免疫抑制剤の服用期間が長くなってくると、
その副作用(骨髄抑制)で、好中球が下がります。
外来の採血で、あまりに好中球の値が低く、
緊急入院となること、数回ありました。
当然、個室入院です。
まとめ
移植腎保存期、
外出する時は、いつもビクビクしてました。
外出時、近くでマスクせず咳する人を見ると、
あからさまに嫌な顔したりしてましたね。
(注:もちろん、本人には気づかれないように・・・)
「皆さん、ちゃんとマスクしましょうよ!」
と言いたいところですが、無理な話です。
当時から思うこと
そもそも、赤の他人に感染予防策を求めるのは❝お門違いだ❞、と。
悲しいかな、これ現実なんですね。
だから、
自分の身は、自分で守る!
これに尽きると、私は思います。
今は免疫抑制剤は飲んでいませんが、
「易感染宿主」であることに、変わりのないのが、今の私の現状。
自分の身体についての正しい知識を持ち、
自分にとっての最善の予防策を講じる。
日々の厳しい自己管理が当たり前となっていれば、
ウイルスの脅威に対し、いたずらに恐怖のみを抱き続けることは、なくなります。
とはいえ、さすがに、
今回の新型コロナウイルスには、ナーバスにはなります・・・
腎移植患者並びに透析患者のみなさん
正しい予防策を講じて、
この危機を、なんとか乗り切って下さい!!
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。