腎移植待機者にとって
此度のコロナ禍で、安全に移植手術が行われるのかどうか
非常に心配するところ。
過去には
COVID-19の感染防止の観点から
「免疫抑制状態(易感染状態)となる移植手術の延期は止む無し」
とする記事もご紹介しました。👇
"第2波"が懸念される中、今回は
このような現状においても
"transplantation should continue during COVID-19 pandemic"
❝COVID-19パンデミック下であっても、移植手術は続けるべき❞
とする記事を
【腎移植と感染症】COVID-19パンデミック下であっても、移植手術は続けるべき
紹介する記事は、Healioの
Expert says transplantation should continue during COVID-19 pandemic
という記事です。
transplantation benefits may outweigh any potential risks
A speaker…discussed transplantation in the midst of the COVID-19 pandemic,
arguing transplantation benefits may outweigh any potential risks.
ある国際サミットの席上で、COVID-19パンデミックの最中での移植についての議論がなされ
❝移植の利点は、潜在的なリスクを上回る可能性がある❞
との主張があったようです。
今回の発言の中心は、ワシントン大学のOlivia Kates医学博士。
She added that she agrees with guidelines released by CMS
which recommend transplants should continue even in the context of the pandemic,
as long as these can be done safely.
「CMC」というのはCenters for Medicare & Medicaid Services
アメリカ保健福祉省内の連邦政府機関。
そこが出したガイドラインに
transplants should continue even in the context of the pandemic,
as long as these can be done safely
❝移植が安全に実施できる限りにおいて
パンデミック状況下でも移植を継続すべき❞
と謳っている点を、まず述べてます。
transplantation itself does not seem to confer an increased risk
We do not want to see patients get COVID-19 as a result of a transplantation
移植の結果として
患者がCOVID-19を感染するのは望ましくないとしながらも
If a patient can have a transplant,
they may be able to avoid more health care contacts and potential COVID-19 exposure through dialysis.
❝患者が移植を受けられた場合でも
潜在的なCOVID-19に曝されることを避けるかもしれない❞、と。
おそらくその根拠思われる内容が、次に続きます。
Kates emphasized that
evidence from a variety of studies does not demonstrate an increased risk for developing COVID-19 with transplantation.
まず
移植でCOVID-19を発症するリスクが増加する
などということを
さまざまな研究で特に実証されているわけではない点を強調します。
Rather, she said, the major factors of COVID-19 risk are
age, comorbid conditions, Black race and health care exposure.
むしろ、COVID-19リスクの主な要因は、年齢や合併症等だ、と。
ここで、私個人としては唐突に
"Black race"
という表現が出てきたので、調べてみました。
アメリカのブルッキングス研究所というところが
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の発表したデータを元に
人種別の感染者数、死亡者数を分析した結果
すべての年齢層において黒人やラテン・ヒスパニック系のほうが、白人に比べて
新型コロナウイルス感染症による死亡率が高くなっていることを明らかにしたという。
雇用や住宅、教育、健康など、様々な面で
人種間に存在する社会経済的不平等が
感染リスクを高める要因となっているようです。
(参考資料:Race gaps in COVID-19 deaths are even bigger than they appear)
話を戻します。
While patients with kidney disease who are either on dialysis or who have received a kidney transplant
are more likely than the general population to have these risk factors,
she argued transplantation itself does not seem to confer an increased risk.
透析患者や腎移植患者は、たしかに
一般の健常者に比べ、ウイルスに対する危険因子を有する可能性が高いが
❝移植そのものが、ウイルス感染のリスク増加をもたらすとは思えない❞
と、彼女は主張しています。
ここから
私個人的には、新しい視点に話が向かいます。それは
生体ドナーの感染防止対策についてです。
living donors must be considered in making recommendations for transplantation during the pandemic
she acknowledged that
living donors must be considered in making recommendations for transplantation during the pandemic.
❝パンデミック禍での移植を進める上では
生体ドナーに関することを考慮しなければならない❞、と。
どうしても
此度のコロナ禍での腎移植を考える時
移植手術後、免疫抑制剤投与・服用による易感染状態となる
レシピエントに目が行きがちですが
ドナーがウイルス感染してしまっては、手術そのものが行えないわけですから
当然と言えば当然。
この点を、彼女は逆説的に表現しています。
Although patients who undergo transplantation may see a decreased risk for COVID-19 by limiting exposure,
living donors will increase their risk through greater exposure possibilities.
腎移植患者(レシピエント)は
曝露を制限することでCOVID-19のリスクを低下させられるかもしれないが
ドナー(生体ドナー)は
より大きな曝露により感染リスクを増大させる、と。
レシピエントは
予め免疫抑制剤による易感染状態になることが想定されているので
医療機関も相応の対応をする一方で
ドナー側の術前術後の感染防止ケアが
ややおざなりになりがちだ、という風に私は理解しました。
ドナーに対する感染防止を決しておざなりにしてはいけない、なぜなら
Because we have a special ethical responsibly to the living donor population,
我々は、生体ドナーの方々に対し
特別な倫理観を持つ責任がある。
臓器を提供する側の持つ倫理観については
脳死の問題も含め、非常にデリケートではありますが
個人的には非常に関心のある分野でもありますので
追々、時間をかけて勉強していきたいとは、思っております。
また、話がそれましたので、戻します。
Thankfully,
these transplants are, in many cases, not urgent and can be safely deferred.
ありがたいことに
これらの移植(生体腎移植)は多くの場合
緊急ではなく、安全に延期することができます。
「生体腎移植は緊急性はないので、延期できる」
と安易に言い切られてしまうことには
透析患者の一人としては、やや抵抗感はありますかね。
透析患者の中には一日でも早く
❝この長く苦しい透析から解放されたい❞
と切に願い、移植を待っている方もいらっしゃるでしょうから。
ただ、日本においては
生体ドナーの多くは、レシピエントの親族であるので
愛する親族をリスクに晒してまでも、今すぐ移植手術することは…と
熟考し、手術を延期するのでしょう。
非常にセンシティブな問題です。
最後に、免疫抑制について触れております。
腎移植後における免疫寛容
It may not be necessary, or even helpful, to decrease immunosuppression
when these patients become sick.
患者が病気になったとき
免疫抑制を減少させることは必要ではないかもしれませんし
役に立たないかもしれません。
腎移植患者は、ある意味
「一生、免疫抑制剤を服用し続けなければならない」
と思っている(私を含めた)多くの患者さんからすれば
これだけを読んでも、少々理解に苦しみます。
そこで、私なりに調べてみました。
恐らくですが
「腎移植後における免疫寛容」
のことを一部指しているのかな、と。
移植医療の世界では
"免疫抑制薬を使わず移植臓器予後の改善を目指す"
ことが検討されているようです。
免疫寛容とは、
免疫抑制薬を使用せずに移植臓器機能が維持される一方で、
自己とドナー以外に対しての免疫反応は正常に保たれている状態
(引用元:日経メディカル)
たしかに、これが臨床で可能となれば
腎移植患者(レシピエント)は免疫抑制剤を使用しなくてよい
つまり、自己免疫を保持でき
此度のコロナ禍における感染リスクも低減する可能性がある。
感染リスクが抑えられれば、腎移植手術は継続できる、ということか。
「免疫寛容」については、私も勉強不足、理解不足です。
ご興味のある方は
日経メディカルの記事をご参照下さい。👇
まとめ
私を含め
透析患者で且つ腎移植手術待機者である患者が
パンデミック状況下で留意しなければいけないことは、実にシビアだ。
末期腎不全ゆえ自己免疫機構が脆弱にも関わらず
ウイルスに曝露される恐怖を抱きながら、生命維持のため透析施設へと向かう。
運よくドナー(生体及び死体)と巡り合えても
患者自身の感染リスクもさることながら
ドナーの感染リスクをも考えなければならない。
「ウィズコロナ(With corona)」などと
"ウイルスとの共存・共生を指す価値観・世界観"を持て、と言われても
こちとら、そう話は簡単じゃ~ね~んすよ😠。
情報過多な世の中。
末期腎不全含め重い基礎疾患を持った患者は
世間大多数の関心とは一線を引いて
自分の身を守るための正しい情報を能動的に得て理解する
その努力は必要ですね。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。