こんなことが現実となる日が、近い将来来るかもしれません。
USA TODAYの記事
"Drone carries human kidney over Las Vegas desert in what could be the future of organ transportation"によると
MissionGOとNevadaDonor Networkの研究者は、先週、ラスベガスで
ドローンを介して人間の臓器と組織(共に研究目的)を運ぶ2つの成功したテスト飛行を発表しました。
現状、"モノ"の輸送にドローンを利用するための研究は
各社行われております。
Uber Eats👆
Amazon👆
DHL👆
記事によると
- 研究用角膜が約2.5マイル(約4㎞)
- 研究用腎臓が10マイル(約10㎞)
ドローンによって目的地まで輸送されたようです。
2020年8月末時点での「腎臓移植希望登録者数」は
12,772名
私を含めた献腎移植手術を待つ患者にとって
非常に興味深い記事
"Drone carries human kidney over Las Vegas desert in what could be the future of organ transportation"
Table of Contents
【臓器の輸送】ドローンにより輸送された臓器が、移植を待つ患者の元へ届く未来
輸送問題で貴重な臓器が破棄される現実
公益財団法人 日本臓器移植ネットワークHPの
"臓器搬送費"に関する箇所で
臓器搬送費は、場合によってはチャーター航空機やヘリコプターなどで運搬しますので、高額になる場合もあります。
とあるので、現状日本での臓器搬送は
陸路、場合によっては空路
ということのようです。
日本と米国、国土の面積差があるので
輸送方法の選択基準に、多少差がありそうですが…
一般社団法人 日本移植学会HPによると、"阻血時間"
(提供者体内で臓器血流が止まってから移植者体内で血流再開させるまでの、移植臓器に血液が流れていない時間)について
体温のままで臓器障害が進行している温阻血時間と、臓器保存液などで冷却して臓器障害が抑えられている冷阻血時間に大別され、その合計が総阻血時間です。許容される総阻血時間の目安は、心臓4時間、肺8時間、肝臓や小腸12時間、腎臓や膵臓24時間程度
とあります。
同記事でも
A kidney can survive outside the body for 36 to 48 hours after it has been recovered,
しかし、現状は
臓器を輸送できるフライトがないために、臓器が生存不能となり
結果、破棄される場合もある、という。
organs are discarded if no flights are available to transport them before they become nonviable.
アメリカでは、此度のパンデミックにより、利用可能な航空機フライトの数が大幅に減少したようで
ユナイテッド航空とアメリカン航空は9月のフライト数をほぼ半分に削減
サウスウエスト航空は25%削減
したとのこと。
実際(※この記事からは、全ての原因が輸送にあるかは不明ですが…)
米国は年間約3,500の腎臓が廃棄されている、との報告があるようです。(おそらく2018年度か?)
A study published in August 2019 in the journal JAMA Internal Medicine found the United States discards about 3,500 kidneys a year.
(その他、参考記事として
US discards thousands of donated kidneys each year as patients die on waitlist, study says)
とはいえ、輸送時の臓器保存方法も日々進歩しているようで
移植臓器を"過冷却"することで
保存期間が3倍になったという米国の研究報告もあるようです。(下記参照)
'Supercool' method triples organ survival
(BBC NEWS)
輸送時間短縮だけでない、ドローン輸送の"他のメリット"
ドローンにより輸送時間が短縮できれば、当然
摘出した臓器の機能保存につながり、術後の臓器生着にも好影響を与えそうだ。
輸送時間に関しては
特に大都市圏においては、大幅な搬送時間短縮が見込めるという。
Drones also could shorten transportation time, decreasing the time an organ is outside the body and improving chances of function after transplant. Hours of traffic in a metropolitan area could be reduced to minutes via drone.
残念ながら、現在の"有人輸送"では事故の可能性は避けられない。
同記事では、2007年にミシガン湖上空で起きた、移植臓器搬送中のヘリコプターが墜落
医師含む医療従事者6名全員が死亡した事故をご紹介しております。
日本でも、2020年2月
福島県郡山市、臓器移植用の心臓を搬送していたヘリコプター不時着、横転。
医療従事者含む7人の重軽傷者を出す事故がありました。
搬送中の臓器(心臓)は
事故現場から県警のパトカーで福島空港に搬送、臓器移植担当者に受け渡されたものの
残念ならが、移植手術は医学的理由から断念されたようです…
移植臓器の"無人輸送"つまり、ドローン輸送が可能となれば
貴重な提供臓器のみならず
医療従事者等の"人命"を失うことも、ないわけですね。
ドローン輸送の問題点
ドローンの"弱点"、それは
輸送物の重量制限があること。
従来型のドローンでの輸送可能重量は、22ポンド(約10㎏弱)。
これがドローン技術の進化により、より重い重量の輸送が可能
複数の臓器や、それを冷却する多くの氷、その他医療機器を輸送できるよう
更には
輸送中の臓器の"品質"をモニタリングできる、GPSソフトウェアの導入にも
現在、研究者たちは取り組んでいるとのこと。
larger aircraft to transport heavier cargo to include more ice, multiple organs and medical devices for organ preservation.
GPS software that monitors the quality of the trip and the organ from the hospital's operating room to the transplant center
ドローン輸送、今後の見通し
現段階では、ドローンによる臓器輸送の
「信頼性」と「安全性」を担保するには
まだまだ何百回ものフライトをし、実証していく必要がある。これは大事。
上記で、"有人輸送"の事故事例をご紹介したが
ドローンだからといって「事故ゼロ」になるわけではないですから。
しかし、NevadaDonor NetworkのCEOは楽観的。
We’re in the beginning stages of providing this mode of transport on behalf of the heroic donors and their courageous families.
まとめ
ドローンの"平和利用"には、大いに賛成。
Amazonの商品を、ドローンが自宅へ届ける、などの報道には関心がなかったが
輸送する"モノ"が「臓器」となれば、話は別。
上記記事内
「Distribution of the percentage of kidney transplantations by kidney donor type and country, 2016」
でご紹介したように
日本の腎移植の"ドナータイプ"の約90%が"living donor"
献腎移植希望者の待機年数は
5,3877.7日(約14年9カ月)
これだけの年数を待機して、やっと手にした移植の機会。
これを「輸送トラブル」で失うことは、あまりに切ない。
技術がいくら進歩しても
「事故ゼロ」となることは、難しい、それでも
献腎移植待機者の一人としては
"限りなくゼロ"に近い状態まで「信頼性」と「安全性」を担保してもらい
その上で、提供臓器の"鮮度"ができるだけ高い状態で
手術が受けられる
そんな未来が来ることを、期待して止まない。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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