透析時間は人それぞれ。
(注:ここでは除水時間・血液浄化時間を指し、その前後の時間は含みません)
メモ
- 施設透析患者の基本は4h
- 長時間透析を許容している施設は5~6h
- オーバーナイト施設ではそれ以上?
在宅で血液透析をほぼ毎日行う私は「3h」。
昔からよく、社会人に対しては
❝自己啓発のため通勤時間を有効活用せよ❞
❝そこで差がつくのだ!❞
と説かれる。
「わかっちゃいるけど...朝は眠いし満員電車だし、帰りは疲れて眠いし満員電車だし...」
もちろん私も経験あるのでその気持ち、よーく分かります。
でも
そんな状況にあっても
自己啓発に励み、自己のスキルを磨き続けている方
世の中にたくさんいらっしゃるでしょう。
私は時々、この理屈、つまり
「自己研鑽のために時間を有効活用する」という点を
【透析中の過ごし方】に置き換えて考える。
また、もしかしたら
透析をしていない(透析をよく知らない)人は、こう考えるんじゃないですか?
「透析中はただ寝てるだけでしょ?じゃあ勉強できんじゃん」と。
言いたいことはよくわかる。
実際
透析中勉強に励む患者さんは、世の中にはたくさんいると推察します。
彼等に対しては、ただただリスペクトの気持ちしかないです。
さて、自分はどうか?
理屈は分かるし、どちらかというと気持ちは前向き。
しかし
なかなか難しい、透析患者の事情があるんですよ。
今回は、【透析中の過ごし方】に関連して
私がこれまで透析中に経験した「気分不快の事例」等をご紹介しながら
「透析中に勉強するって、結構大変なんですよ」
ということを申し上げたい。
結果
Table of Contents
【透析中の過ごし方】透析中の勉強。実際はなかなか難しい患者の事情
はじめに
私の学生時代の勉強スタイルは、とにかく「書いて覚える」でしたけど
今の時代は、一昔前と随分違うでしょうね。
- 紙の参考書が電子書籍になり
- 授業はオンラインとなり
- 見て覚えるだけでなく❝聞いて覚える❞。
今はそれらの"複合技"で知識の吸収を図る。
とはいえ
「勉強する」となれば、ちゃんと椅子に座り
ノート・参考書・筆記用具
パソコンやスマホ・タブレットを机に置いて学習するのが、定石。
この「当たり前の勉強スタイル」を維持することが
血液透析をしていると、いかに難しいか。その理由を
ポイント
- 肉体的制約
- 精神的制約
にわけて、ご説明いたします。
1.肉体的制約
動きの制限
シャント肢の動きの制限
血液透析患者が透析中、どのような態勢を強いられているか、というと...
シャント肢脱血側・返血側に穿刺針が刺され、クランピングチューブをテープで固定
テープで固定されたクランピングチューブと血液回路とがジョイントされる。
このことにより
血液回路を介して、患者の腕と透析機器とが常時繋がっている状態となる。
血液回路の長さには、ある程度❝遊び❞があるものの
穿刺されたシャント肢及び上体そのものの可動域には、当然制限がかかる。
余程大胆な動きをしなければ、シャント肢から針が抜けることはない。
そのことより、個人的に厄介なこと、それは
❝シャント肢を動かすと、静脈圧の値が変動してしまい
値が上がり過ぎると「静脈圧上限」警報が鳴る❞
ということ。
それでも
施設透析なら、病院スタッフが警報の解除操作をしてくれますが
在宅では
患者自ら立ち上がって(寝たままでは透析機器のディスプレイに手が届かないので)
アラームを止め警報アラートを解除、血液ポンプの再稼働操作を行わなければならない。
したがって
「あまり腕は動かしたくない」との意識は
透析中、常にあるのです。
上体の動きの制限
後述する「気分不快」と関連することとしてあるのが
血圧が低下した場合。
その場合は、施設・在宅問わず
患者の上体をフラットな状態にし
血流を出来るだけ頭に戻してあげる処置を行います。
症状によっては、足を挙上させることもあります。
この点について、少し考え方を変えると
❝透析中の血圧低下を、できるだけおこさせないよう
患者は透析中、上体を出来るだけ倒しておいた方が、良い❞
ということになります。
患者によっては、基本姿勢がほぼ座位の状態で
血圧低下や気分不快が生じたら、都度背もたれをリクライニングする
という方もいるでしょうが
あまり落ち着かない気が、個人的にはします。
継続する痛み
ここでは、穿刺部位の痛みにフォーカスします。
痛みは、時間の経過で変化します。
穿刺の痛みは、瞬間的なもので済めばよいですが
穿刺針が血管周囲の神経にちょっとでも触れたりすると
「ビリッ!」と、電気が走るような痛みもある。
痛みは穿刺後、すぐに静まる場合もあれば、長引く場合もある。
すんなり血管内にカニューラが留置できても
カニューラ先端が血管の内側の壁に当たることで
別の種類の痛みが生じる。俗に言う
❝血管痛❞
と言われるものの一種ですかね。
カニューラのポジションを多少動かすことで、痛みが静まることはありますが
経験上
透析開始時から❝血管痛❞を感じる時は
その痛みが静まるまで、相応の時間は費やします。
(※ちなみにここでは、血液がシャント肢内で漏れて腕が腫れる、といった状況は考えません。
その場合は当然、一旦針を抜き再度穿刺し直すので)
透析中、❝血管痛❞が持続するような時は
少しでもシャント肢を動かすと痛みが増幅するので
余計に動きの制限が加わります。
気分不快
血液透析が開始された直後
約200㎖の血液が体外に脱血されます。
比較的血圧が安定している私でも
血液ポンプが回り始めた直後は、頭が"フワッと"する時があります。
気分不快の種類や程度は、患者それぞれ。
専門的事象は医療機関のHP等をご参照頂くとして
ここでは、私の実体験をご紹介。
多くの透析患者同様、私も
血圧が低下することで生じる気分不快は、頻繁におこります。
頭が"スーッと"するような感覚もあれば
全身が"ムズムズ"することもある。
透析を継続しているうちに、症状が緩和されるときもあれば
都度、除水速度を一次的に遅くすることで、症状が落ち着くのを待ち
症状が落ち着いたら、除水速度を元に戻す。
気分不快が生じている時は、症状が落ち着くのを待ち
とにかく透析が終わってくれることだけを、考えてしまいます。
記憶力や思考力を働かせて勉強しよう
なんて余裕は、私の場合は全くありませんね。
2.精神的制約
精神的制約については、在宅血液透析ならではかもしれません。
通常の施設血液透析では
穿刺したら、後は透析時間終了を待つだけ。
透析中、何か起こってもスタッフが対応してくれる。
この「安心感」が、在宅血液透析ではないんですね。
在宅血液透析の管理医療機関によっては
介助者に対して、患者同様のトレーニングを課し
透析中、患者の身体に変調をきたしたときの対処まで求めるところも、あるでしょう。
その点、私の場合(私のHHDを管理してくれている医療機関)は
血液透析に関連する全てを、患者一人で管理・実行する事を前提とし
そのためのトレーニングを行います。つまり
透析中の不測の事態への対処は、原則、患者である私自身が行うことになります。
その「責任感」のような「危機感」のようなものが
私の潜在意識の中には常にあります。
そのことから導き出されること、それは
❝透析中、絶対に寝ないこと❞
施設透析では
透析中、ぐっすり眠ってらっしゃる方、多くお見受けします。
在宅の私は、眠らない、眠れない。
なぜか?
寝てしまった場合
はてな
誰が透析経過を見るのですか?
誰が不測の事態に対処するのですか?
実は過去、透析中睡魔が襲った際
何度も、過呼吸やパニックに似た発作を起こしたことがあります。
その時の状況を、あえて言語化してみると...
参考
睡魔が訪れ"ウトウト"している時、それは
❝覚醒❞と❝睡眠導入❞との狭間で神経が揺れ動いてる状態。
「寝ちゃ駄目だ!寝ちゃ駄目だ!」
それでも、睡眠導入に傾きかけた刹那
潜在意識にある「責任感」「危機感」が、フッと頭をよぎり
「やばい!!」となる。ただ、その瞬間
今自分がいる場所が、覚醒しているのか睡眠導入期なのか
状況が不確かなことで頭がパニックを起こし
息が吸えなくなり、息苦しくなったり、動悸が激しくなったり...
文字を見ると眠くなるのは"人の常"(ですよね?)
あんな苦しい思いをしてまで勉強するとなるには
相当の覚悟が必要か、と思ってしまうのです。
まとめ
冒頭、私が
当たり前の勉強スタイルを維持することが
血液透析をしていると、いかに難しいか。
などと申し上げましたが
そんな不自由を克服し、強い気持ちを抱き
血液透析中に勉強し知識を吸収している患者さんは、多くいらっしゃると思います。
あくまで「私」が難しい、だけ。
透析中の勉強を実践されている方に対しては
ただただリスペクトの気持ちしかございません。
かく言う私も、それなりに頑張った時期がありまして
それは約3年前、行政書士試験を控えた時期。
辰巳の肢別本(民法・行政法)をタブレットにインストして
問題解いて解説読む、といった勉強を
透析中に行っておりました。
ただ、このときも
「気分不快が全く無い」というのが大前提で
身体に不快感が少しでも生じると
文字を目で追う余裕が全く無くなります。
明確な目標が設定されており
高いモチベーションを維持していれば
透析中に勉強すること、不可能ではありませんが
透析中に勉強を続づけるには、前提として
注意ポイント
- 気分不快がないこと
- 動作制限の少ない教材を使用すること
この二点は必要条件かな、と。
私も自己啓発へのモチベーション"だけ"は持ち続けてはいるので
アプリや電子書籍の読み上げ等
私なりの工夫をしながら、しっかり❝学び直し❞をし続けたいです。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
追伸
上記「電子書籍の読み上げ」に関してご興味ある方は下記記事ご参照下さい。