在宅血液透析導入の際
患者が一番気になる「自己穿刺」
以前の記事で
自己穿刺一連の手技を細かく言語化することで
動作の❝棚卸し❞を行いました。
「もっと穿刺が楽にできるような補助具ないのかな~…あるじゃん!!」
試したいのはやまやまですが
わざわざ購入する、そこまでの気概はないので😅
現在の自己穿刺の一連の手技の中で
仮にこの補助具を使用した場合
私にとってどれほどの効用があるのか
イメージの中で勝手に割り出してみたいと思います。
Table of Contents
【在宅透析と自己穿刺】HHD自己穿刺用補助具、その使い勝手をイメージしてみる
参考文献
日本透析医学会雑誌43巻3号
はじめに
同文献の冒頭、在宅血液透析(HHD)について
慢性腎不全の治療法として高い効果が認められつつも、爆発的な広がりは影を潜めている。
その治療法の低い選択性の理由として、
自己穿刺に対する敬遠と介助者の必要性等があげられている。
(中略)
患者本人が一人で透析治療の全行程を行うことができれば、
介助者のストレスの軽減を図ることができると思われる。
また、透析開始時に患者が一人で容易に自己穿刺が可能となれば、
HHDを治療法の選択肢として捉える患者が増加すると期待される。
とある。
同文献の発行年を見ると2010年、今から10年前。
当時の自己穿刺は、介助者の❝介助有りき❞の手技だったんでしょうか。
現在、血液透析の全行程を患者である私自身で行っていることからすると
若干「時のズレ」を感じますが…
いずれにせよ
自己穿刺の容易性の向上を目的として自己穿刺をアシストするデバイスを開発した
とのこと。
在宅血液透析を目的とした自己穿刺補助具
独立行政法人工業所有権情報・研修館ホームページ内にございます
「特許情報プラットフォーム」で公開されている内容を一部表示させて頂くと…
参考
【公開番号】特開2011-15839(P2011-15839A)
【発明の名称】自己穿刺用補助具
私の思う「自己穿刺用補助具」のストロングポイント
前記事でご紹介しましたが
私の自己穿刺の手技工程は下記の通り。
穿刺前準備
- 穿刺部位の位置決め
- 穿刺針の準備
- 駆血ベルトの仮止め
- 穿刺部位消毒
- テープ裁断
- 穿刺部位付近へのテープ貼付
- シャント肢駆血
- 手枕セット
- 穿刺針の保持
- 穿刺針持ち手を手枕で支持
- 穿刺針進入角度の決定
- 穿刺針先端の皮膚アプローチ
同補助具を使うにしても
穿刺する際、上腕を適当な強さで駆血し十分に血管を怒張させる。
(引用元:日本透析医学会雑誌43巻3号「在宅血液透析を目的とした自己穿刺補助具の開発」)
とあるので上記の
7.シャント肢駆血
は、しないといけないようです。
台座の部分とアームの部分が、支柱を介してジョイントされていて
バネの張力を利用して
台座に置いたシャント肢を、アーム部先端の突起部分で挟み込むようです。
私の手技の特徴として
6.穿刺部位付近へのテープ貼付
という工程があります。
穿刺の際、皮膚に一定程度張りがある方が、針が皮膚及び血管に刺さりやすい。
施設スタッフの方々は
穿刺針を持っている手の反対側の手、いわば❝余っている手❞で
患者の穿刺部位付近の皮膚を押し引っ張ることで、皮膚に十分な緊張を持たせ穿刺できます。
自己穿刺では手❝余って❞ないので
苦肉の策として、医療用テープを使って
穿刺部位付近の皮膚を引っ張りながらテープ止めをします。
こうすると、かなり皮膚に緊張感を持たせられ、針が刺さりやすい。
この「皮膚及び血管の固定」については、同文献でも触れています。
在宅血液透析の場合、
施術者の介助に頼らず患者本人が穿刺する場合、血管の伸展固定が十分に図れず、
血管の移動によって穿刺に少なからず困難をきたす場合がある。
(引用元:日本透析医学会雑誌43巻3号「在宅血液透析を目的とした自己穿刺補助具の開発」)
そう!そう!
分かってんじゃん👍👍
導入当初、つまり私の場合は血液透析そのものが初めての頃。
シャント肢静脈血管がまだまだ未発達であったことも手伝って
針を押し込む際、皮膚及び血管が❝ヨレて❞しまって、穿刺しずらかった。
今は今で
シャント肢静脈血管が発達したことは良いことなのですが
その分血管壁に厚みが生まれ、針を刺し込む際、以前より力を加える必要が出てきました。
血管壁が生む抵抗力に、皮膚の張力が負けてしまうと
穿刺針の、皮膚及び血管への刺し込みが困難となる。
この補助具は、この
「血管(及び皮膚)の伸展固定」
を果たしてくれるというわけです。
この補助具の❝一番のストロングポイント❞なんじゃないか
というのが、私個人的な感想です。
ただ、シャント肢を台座とアーム部で挟めば
「血管の伸展固定」出来る
というわけではなさそうで
ちょっとしたコツがいるようです。
突起部にて押圧することによって血管を固定する。
さらにその押圧状態から患者の腕を穿刺方向にわずかにずらすことにより、
血管を伸展固定できる。
(引用元:日本透析医学会雑誌43巻3号「在宅血液透析を目的とした自己穿刺補助具の開発」)
私の場合、脱血側・返血側も
末梢側から中枢側に向けて穿刺します。
このケースだと
腕を中枢側に引きながら血管を伸展固定し中枢側に位置する血管に穿刺する。
(引用元:日本透析医学会雑誌43巻3号「在宅血液透析を目的とした自己穿刺補助具の開発」)
補助具に挟んだシャント肢を少し手前に「引っ込める」イメージでしょうか。
「自己穿刺用補助具」その他の効用
穿刺前半
- 金属針穿刺
- 血液逆流確認
- 針全体のフラット化
- カニューラ先端の押し込み
穿刺後半
- 更なるカニューラ押し込み
- クランピングチューブとシャント肢とをテープ止め
- 金属針抜き取り
「自己穿刺用補助具」の役目は、❝穿刺前準備❞段階でほぼ完結されていて
上記の「穿刺前半」及び「穿刺後半」の手技においては
補助具があることで省略できる工程が、見当たりません。
ただ、この補助具
「止血」の補助具としても有用だそうです。
具体的には、
一連の血液透析治療が終了し抜針の際、皮膚穿刺部を脱脂綿やガーゼ等で覆った状態で、
当該補助具の付勢力を利用して突起部により血管を圧迫して止血を図ることができる。
(引用元:日本透析医学会雑誌43巻3号「在宅血液透析を目的とした自己穿刺補助具の開発」)
とあります。
私の針抜・止血方法は、非シャント肢側の腕を使い
人差し指と中指でクランピングチューブを挟み、指の屈曲でカニューラを抜き
その刹那、同親指で圧迫止血をします。
自分自身の指で圧迫止血している立場からすると
補助具による止血は穿刺部位を「挟んでるだけ」と、やや危うい気がしてしまいます。
もちろん、そんなことはないでしょうけど…
まとめ
在宅血液透析が語られる中で「自己穿刺」はいわば
❝ボスキャラ❞的な一面があり
導入を検討されている患者の精神的な障壁になっていること、推察します。
とはいっても
HHDを「やる!」と腹が決まれば
怖いのナンの、と言ってられません。
私も導入トレーニング初日の初穿刺。
担当技師のほぼ❝100%補助❞での穿刺でしたが
メチャメチャ緊張したこと、覚えています。
しかし、実際問題
直前になって逃げだすわけにはいきませんから
その時になったら緊張や恐怖、というより「諦めの境地」ですよ😣。
自己穿刺の際の心境は
時と共に揺れ動くものです。
導入当初は緊張、恐怖、諦め
そこから在宅で数をこなしていくと、少しずつ自信がついてきます。
ところが
時に「穿刺スランプ」に陥ることがあります。
連続穿刺ミス、連日穿刺ミス
上手く刺せていたところが、上手く刺せなくなる。
相変わらず痛いし…
どんな優れた補助具が開発されても、実際にやるのは患者自身。
テニスや卓球はメンタルのスポーツとよく言われます。
メンタルの乱れがプレーの乱れに繋がる。
自己穿刺も、それに近い気がします。
メンタルが乱れていると、穿刺の成功確率は下がる気がします。
いかに平静な気持ちで、毎回の穿刺に臨むことかできるか。
補助具の進化よりも大事なのは、そこだと私は思いますけどね。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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