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腎臓移植 透析全般

【腎移植に関する本】『だれが修復腎移植をつぶすのか ー日本移植学会の深い闇』を読んで※2022年6月改訂

operation

生体腎移植を希望する組合せにおいて腎移植の医学的適応性がない場合、同様の問題を抱える組合せを多数集め、それらの組み直しを試みることで、移植の可能性を高める制度である。

(引用元:組み直し腎臓交換の制度設計に関する生命倫理学的考察)

非医療者(医の素人)でイチ患者の私ですが、私なりに

「組み直し腎臓交換(Paired Kidney Exchange :PKE)」について学び

ブログ並びにYouTube(VTube)で関連文献を皆様にご紹介致しました。

<VTube>

<ブログ>

上記コンテンツの「まとめ」として、私は下記のように述べました。

前生体腎移植患者で 現在在宅血液透析患者兼献腎移植待機者である立場としては

「組み直し腎臓交換」というテーマを機に

倫理観や宗教観、死生観について、もっと掘り下げて勉強してみたくなりました。

これを機に手に取った書籍が

「だれが修復腎移植をつぶすのか ー日本移植学会の深い闇」

著者:高橋幸春、発行:東洋経済新報社

「病気の腎臓を取り出し、それを移植した医者がいる!!」

との報道がメディアを騒がす数年前に

私自身が生体腎移植手術受けていたこともあり

当時それなりの関心はありました。

今でも❝万波医師❞という名前だけは憶えています。

しかし今回、同著書を読んでみて

そこに書かれている内容が

当時抱いた自身の認識とあまりに乖離しており

少々驚いております。

巷で目にする「書評」のように

作品の良し悪しを述べるようなことはしません。

生体腎移植を受け、それが廃絶し

現在HHD、献腎移植手術待機者である私だからこそ感じえること

素直に述べていきたいと思います。

注意!!

今回は、同作品の良し悪しを述べるわけではなく

ましてや

「修復腎移植の是非」などについての

個人的な見解を述べるつもりも、毛頭ありません。

そもそも

そのようなことを述べるに足る見識は、持ち合わせていません。

ネタバレになりますが

同著書の論調は終始「修復腎"肯定"派」ではありますが

だからといって(同著書をここでご紹介するからといって)

「私はどちらかといえば、肯定派/否定派」

なども表明するつもりもありません。理由は上記と同じ。

あくまで…

「腎移植領域で、こんな本がありますよ」

「興味ある方は、是非!」

程度のもの。

常々、私が思っていること、それは

自身の病気に関わる領域に関し

患者は受け身一辺倒ではなく、能動的に学ぶべき

素人なりに、浅くとも幅広い"球種"を持つことは

自身の病気と付き合っていく上で、必要な心構えではないか、と。

考えを他者に無理強いするつもりなどありません。

自分の考えに基づいた行動の延長として

"一方的に"情報発信しているだけ。

この点、誤解無きよう、お願い申し上げます。

kindle,(Amazonに飛びます)


『だれが修復腎移植をつぶすのか ー日本移植学会の深い闇』

目次

books

プロローグ

万波医師はなぜおとしめられたか

第一章 宇和島臓器売買事件 ー万波医師にかぶせられたいわれなき汚名
  • 事件そのものには無関係だった万波医師
  • 透析患者の急増と、移植用臓器の絶対的な不足
  • 腎移植を受けられるのは希望者のわずか1パーセント
  • 万波医師が疑われた背景
  • 日本移植学会幹部とマスコミがつくりあげた「悪徳医師」
  • 万波批判を煽った移植学会の医師たち
第二章 調査委員会ー一方的な結論で修復腎移植を攻撃
  • 万波医師の真実の姿
  • 高まる批判のなか現れた、万波支持の学者
  • 時代遅れだった移植学会幹部の医学常識
  • 偏見を助長した、調査委員会の調査結果
  • 過去には美談として取り上げられた修復腎移植
第三章 生きる権利ー無視された患者たちの声
  • 宇和島徳洲会病院への圧力と、厚労省の収賄監査官
  • 医師免許を取り上げられそうになった万波医師
  • マスコミが無視した、万波医師と瀬戸内グループの主張
  • 修復腎移植を受けた患者たちの声
  • 修復腎移植で得た「普通に生活できる」喜び
  • 透析では得られない高いQOL
  • 選択するのは患者であって厚労省や移植学会ではない
第四章 立ち上がる患者たちー日本移植学会幹部への損害賠償訴訟
  • 患者たちの声を無視して出された「原則禁止」
  • あり得ない移植学会理事長の自称「移植1000例」
  • 「修復腎移植は生着率が低い」のウソ
  • 法廷で明らかになった、移植学会幹部の主張の矛盾
  • 自家移植が少ない理由
第五章 世界に広がる修復腎移植ー明らかになった日本移植学会の無知
  • 国際的に評価される修復腎移植
  • 「がんが持ちこまれる」の誤り
  • 最新の医学知識を知らなかった移植学会幹部
  • 時代遅れの学説が根拠だった修復腎移植批判
  • 示されなかった「生存率が低い」の根拠
  • 諸要因を勘案して初めてわかる、修復腎移植の本当の成績
第六章 執拗な修復腎移植つぶしー背後に見える年間二兆円の透析利権
  • 万波バッシングの本質は嫉妬!?
  • 副理事長の❝自責の念❞
  • 万波医師と患者たちの深い絆
  • 専門委員会の結論に異を唱えた委員ー報告書には盛り込まれず
  • 万波医師の国際発表を妨害した移植学会理事長ーそれでも高まる海外での評価
  • 移植学会幹部へのノバルティスファーマからの巨額の寄付
  • 医師一人に「一億円の報酬」もある巨大な透析利権
第七章 日本移植学会の暴走ー次々と根拠を失う修復腎批判
  • 承認申請に立ちはだかる移植学会
  • 移植学会の反対理由への反論①ー修復腎移植は世界で行われている
  • 移植学会の反対理由への反論②ー「がんが持ちこまれる」説は崩壊している
  • 移植学会の反対理由への反論③ー全摘を否定する矛盾
  • それでも認められなった修復腎移植の申請
第八章 拡大する日本移植学会の矛盾ー「救える命」をなぜ救わないのか
  • 「結論ありき」だった専門委員会ー無視された委員会からの疑問
  • 標準治療をいい張る移植学会患部のウソ
  • 修復腎をつぶすための暴論
  • 愛知と秋田でも行われていた修復腎移植
  • ❝身内❞に甘い移植学会ー訴訟費用のカンパも
  • 修復腎移植に使える腎臓は2000以上
  • 「臨床研究」としてかろうじて続けられた修復腎移植
  • 生体腎移植にともなう心の痛み
第九章 医療権力の大きな罪ー患者に「座して死を待て」というのか
  • 異例な修復腎移植となった臨床研究15例目
  • 移植学会理事長のかたくなな修復腎移植批判
  • 中国で移植手術を受ける日本人レシピエントたち
  • 次々と生み出される「移植難民」
エピローグ

いまこそ問われる❝医師の志❞

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登場❝人物❞と、その主な主張

courtroom,法廷

本書で登場する❝人物❞と、それぞれの立場を簡潔に表現とすると

修復腎移植の正当性を主張する

万波誠医師と瀬戸内グループ

病気腎移植に真っ向から反対する

日本移植学会並びに

日本移植学会報告を鵜呑みにした

厚労省

日本移植学会を盲信し

万波バッシングに終始した

マスコミ

修復腎移植に生きる望みをかける

透析患者(「移植への理解を求める会」)

となろうかと思いますが

もう少し詳細な内容を下記に記します。

万波誠医師と瀬戸内グループ

同著内で記述されている万波医師の話として…

"小径の腎臓がん患者に対し"

"部分切除し腎臓を「残しておいても大丈夫だ」と説明しても"

"再発の可能性を危惧し"

"患者自身が全摘を強く希望する"

のだそうだ。

こんないい腎臓をもったいないなと思った。

この腎臓をあの患者に移植してあげることができれば、助けられるのではないかと考えた。

それが修復腎移植の始まりだった。

(引用元:だれが修復腎移植をつぶすのか ー日本移植学会の深い闇)

後述する日本移植学会の主張としてあるのは

使える腎臓は戻せ

というもの。

しかし、同医師の話では

自家腎移植は、患者本人への負担とリスクが大きい

摘出腎臓は患者本人に返すのが大原則」のもと

自家腎移植は、一度外へ取り出して修復、その後戻す。

しかし

手術そのものが困難、長時間にわたり

特に高齢者にはリスクは高いらしい。

一時は医師免許はく奪の危機にも見舞われた同医師だが

修復腎移植に対して反対一色の日本国内に比して

海外では

その有効性について脚光を浴びていた、という。

日本移植学会、関連学会並びに厚労省

「修復腎」ではなく「病気腎」という言葉を使用していることからも

日本移植学会、関連学会並びに厚労省の立場がよくわかります。

メモ

"修復腎"を英語表現する場合の用語は

"Restored kidney"

と言うらしい。そこから修復腎移植を

"レストア腎移植"

と表現するところもあるようです。

  1. 修復できるような病気腎を患者から全摘すること自体が問題
  2. 移植を受けたレシピエントに病気腎から悪性腫瘍が持ちこまれる危険性が高い

著者の言葉を借りれば、上記見解は「時代遅れ」。しかし

日本移植学会は、徹底した❝修復腎移植つぶし❞に終始。

2007年、関連4学会(日本移植学会/日本泌尿器科学会/日本透析医学会/日本臨床腎移植学会)は

共同声明で、病腎移植を全面否定

参考資料

「病腎移植に関する学会声明」平成19年3月31日

http://www.asas.or.jp/jst/news/2007/

※上記URLは"保護されていない通信"のため、閲覧する場合は上記URLをコピペして下さい。

厚労省は、移植学会幹部の報告を鵜呑みにし

「病腎移植原則禁止」を、都道府県及び政令指定都市に通達した、とのこと。

参考資料

「「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)の一部改正について(通知)」平成19年7月12日

第12-8

疾患の治療上の必要から腎臓が摘出された場合において、摘出された腎臓を移植に用いるいわゆる◆病腎移植◆については、現時点では医学的に妥当性がないとされている。したがって、◆病腎移植◆は、医学・医療の専門家において一般的に受け入れられた科学的原則に従い、有効性及び安全性が予測されるときの臨床研究として行う以外は、これを行ってはならないこと。また、当該臨床研究を行う者は「臨床研究に関する倫理指針」(平成16年厚生労働省告示第459号)に規定する事項を遵守すべきであること。さらに、研究実施に当たっての適正な手続の確保、臓器の提供者からの研究に関する問合せへの的確な対応、研究に関する情報の適切かつ正確な公開等を通じて、研究の透明性の確保を図らなければならないこと。

(厚生労働省法令等データベースサービス より引用)

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マスコミ

修復腎反対の流れのキッカケは「宇和島臓器売買事件」。

参考資料

実際は

ドナー・レシピエントが巧妙に手を組み病院側をあざむいたわけで

事件そのものには一切無関係だった万波医師。

しかしこれを契機に

病気で摘出した腎臓を用いた修復腎移植に、マスコミの関心があつまった。

  • 一方的な万波バッシング
  • 「悪徳医師」への印象操作

そんな

学会の分析結果を盲信したマスコミ報道を、患者は

患者を置き去りにした一方的な建前論

と、切り捨てる。

「移植への理解を求める会」

著書によると…

透析患者数に比べて移植希望者数が少ないのは

決して、現在の透析療法に満足しているからではなく

あまりに移植の確率が低く、最初からあきらめているから。

そうした背景から

多くの患者が「病腎移植」に踏み切った、という。

2007年、関連4学会

(日本移植学会/日本泌尿器科学会/日本透析医学会/日本臨床腎移植学会)の共同声明を受けて

厚労省は「病腎移植原則禁止」を、都道府県及び政令指定都市に通達(既述)

移植を希望している患者は、機会を失った

  • 「3年でも5年でもいい、透析から解放されて、もう一度元気な生活をしたい」
  • 「病気の再発は生着率が悪くても、少しの期間でも透析から解放されたい」

「移植への理解を求める会」は2008年

厚労省、移植学会幹部らを相手取り、損害賠償請求訴訟を起こす。

参考資料

NPO法人「移植への理解を求める会」

http://www.shufukujin.com/index.html

※上記URLは"保護されていない通信"のため、閲覧する場合は上記URLをコピペして下さい。

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感想

thinking

捉え方は読者次第

この著作を一読し、読者の結論として

なんて卑怯なんだ、移植学会は!

修復腎移植は認めるべき!

とするのは簡単。でも

透析患者や腎移植待機者が読めば

ことはそう単純な話ではないことは、分かると思います。

同じ腎不全患者でも、置かれた立場はさまざま

  • 施設血液透析を始めたばかりの人
  • 施設血液透析を長年している人
  • 施設血液透析をしながらも、透析と"上手く付き合えて"いる人
  • 施設血液透析をしながら、透析に苦しんでいる人
  • 腹膜透析をしている人
  • 生体腎移植を受け、現在良好な人
  • 生体腎移植を受けるも廃絶してしまった人
  • 献腎移植を待つ人
  • 在宅血液透析をしている人

私は現在、在宅血液透析をしている。

私の立場でこの著作を読んでみても

作品中に出てくる透析患者さんの苦しみ、思いを

正しく理解することは難しく

安易に賛成・反対の意を唱えることは、当然出来かねる。

毎日の自宅での血液透析は、確かに大変ではありますが

複数ある「腎代替療法」の中から「在宅血液透析」を選択したことに対し

一定の納得感を抱きながら、毎日の血液透析生活を送っております。

つまり、作品中に出てくる

長く苦しい透析(通院血液透析)生活を強いられた患者さんのような

追い詰められた感は、正直ないのです。

生体腎移植経験者・HHD患者として思うこと

修復腎移植が

医学的・倫理的に、正しいか正しくないか

私には分かりません

法治国家では

法律の範囲内で物事を選択するしかないし

その点は、医師も患者も同じでしょう。

だからこそ、その法律を起草する役人

国会審議で法律を制定する国会議員の責任は重い。

とはいえ

彼ら一人一人が持つ思想、正義、善悪などを

患者が正すことなど、出来るわけもなく

出来ることは、選挙で一票を投じるだけ。

透析生活が辛くて辛くて堪らない人もいるでしょう。

患者の苦しみは患者自身にしか分からない。

だからといって

人生を自ら断つことは、倫理的に許されない(という考え方もある)。

尊厳死の名のもと

医師が患者の命を絶つことも、同様許されない(という考え方もある)。

そのようの状況で道を閉ざされた患者が

法の埒外にある治療に活路を見いだす。分からないわけではない。

それぞれの立場で物事を考える時

得てして人は、となりの芝生を俯瞰してみることが難しい。

  • 透析医療に携わる人は透析最高
  • 生体移植に携わる人は生体移植最高
  • 修復腎に携わる人は修復腎最高、と。

でも

その分野で大きすぎる利権を保持している人たちは

なかなかそれ(となりの芝生を俯瞰してみること)をすることが難しいんでしょうか。

この著作を読む限り

日本移植学会幹部が、執拗に万波潰しに固執したのは

結局はそこ(「自分こそが正しい」)なのかな…

との印象を、読み終えて個人的には感じます。

「そこはわかる、でもそこはだめ」、と

なんでテーブルで議論出来ないんでしょうね。

「もちろん、患者を第一に考えている」という言葉も

なんだか薄っぺらく、説得力には欠けますよね。

そうなると結局、患者が信じられるのは患者自身

選択の余地がなかったとしても、前へ進むために

気持ちの落としどころを見付ける努力をしなければならないのは

患者自身

自分が納得して信じる道を

時間をかけて見つけていく。

その時、患者に必要なのは、今の治療環境(今の体調)が

未来永劫続くわけではないことを理解すること。

例えば…

  • いつまでも、自分が「在宅」で「血液透析」をできるとは限らない
  • いつまでも、自分の移植腎が機能し続けるとは限らない

そうすれば、現状も含めた色々な選択肢を

できるだけフラットに見ることが出来るかな、と。

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まとめ

thanks,

文中「なるほど」と思わせる記述を一つ。

他人に移植された場合

その腎臓と異なる免疫系と生活習慣のもとに置かれるので

がんの再発転移は起こりにくく

一緒に持ち込まれた小さな腎細胞がんや良性腫瘍には

退縮がおこることが多い

(引用元:だれが修復腎移植をつぶすのか ー日本移植学会の深い闇)

これが事実とするならば、日本移植学会の

❝移植を受けたレシピエントに病気腎から悪性腫瘍が持ちこまれる危険性が高い❞

という主張に筋が通らなくなります。

このように

一方の立場の主義主張を盲信し

自身の思考を停止させてしまうと

正しい「目」が持てなくなります

著作というのは、あくまで著者の意見である

このことは忘れないようにしています。

今回の作品では

これでもかというくらい

日本移植学会とその幹部を非難しています。

著者の綿密な取材の裏付けにより

同著作が成り立っていることは十分理解しますが

それでも読者は盲信してはいけない。

作中に描かれているマスコミと変わらなくなる。

恥ずかしながら白状すると

同内容がマスコミを賑わせていた当時

かくいう私も、マスコミ報道を盲信しており

「酷い医者がいるもんだ」

と決めつけておりました。

全く、お恥ずかしい限りです・・・

私にはジャーナリズム精神など持ち合わせていないので

修復腎移植について、これ以上自身で追及することは、ありません。

ただ現在

献腎移植手術を待っている立場である以上

常にアンテナは張っていようかとは、思っております。

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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追伸

修復腎移植に関して

現在までに(2022年6月現在)一定の前進があったようです。

興味のある方は、下記ご参照願います。

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