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【Coffee Break☕】東京オリンピック 男子4×100mリレー決勝/日本のバトンパスについて

2021年8月10日

start,

8月8日㈰に閉幕した東京オリンピック。

大会の総括や、開催そのものの意義といった話は他に譲るとして…

一応、私の専門である(遠い昔の話ですが💦)陸上競技短距離種目

中でも「男子4×100mリレー決勝」について

大会の熱が冷めぬうちに、どうしても書き綴りたいことがございます。

[su_note note_color="#c8feff"]

在宅血液透析並びに腎移植に関し、それを経験した患者目線のLIVE感ある情報

[/su_note]

を発信することを目的とした当ブログですが

ここはひとつ"Coffee Break☕"ということで、ご容赦願いたいと思います。

[su_box title="注意!!" style="soft" box_color="#ff3332"]

これからお話する内容は

競技者として私が実践してきた経験則に加え

その後、複数の媒体で知り得た情報を元に

「私はこう考える」

という類の話であって

"正解"ではない、という点、ご理解願います。

[/su_box]

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【Coffee Break☕】東京オリンピック 男子4×100mリレー決勝/日本のバトンパスについて

「"攻めた結果"」言葉の独り歩きに違和感

東京オリンピック、陸上競技/男子4×100mリレー決勝

メダルを期待された日本チームでしたが、ご存知の通り

1走の多田選手から2走の山縣選手へ、バトンの受け渡しができず

残念ながら「失格」という結果となりました。

いわゆる"総評"をここでするつもりはありません。

私が注目したのは、レース後のSNS界隈で

「バトンパスを攻めた結果だから、仕方がない」と言う風に

"攻めた結果"というフレーズを、非常に多くの方が使用していたこと。

「意味わかって使ってるのかな??」

決してこれはなにも"上から目線"でモノ言うつもりでもなんでもなく…

ただ、しかし

陸上競技の短距離種目、主に100mを主戦場に戦ったことのある"経験者"として

そして

"4継"におけるバトンパスを"攻める"という意味を理解している(つもり)者の1人として

皆が口を揃えて

「バトンパスを攻めた結果だから、仕方がない」

とコメントするという一種の"現象"に、違和感を覚えずにはいられなかったわけです。

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「陸上100m」の競技特性について

前提条件

4×100mリレーのバトンパスを理解する上で、まずは

「陸上100m」の競技特性を理解する必要があります。

ここで、これも誤解を恐れずに申し上げさせて頂くと

少なくとも(遅くとも)100mを11秒前半から「10秒台」で走れる方でないと

(※女子の方は基準が分かりません、ごめんなさい。)

これから申し上げる内容を"肌感覚"で理解することは難しいかなと。

「俺(私)中学/高校の時、陸上部だった」方であっても、そう。

ただ、その"肌感覚"をなんとか言語化するよう努めますので

少しでもイメージを膨らませるお手伝いができたら幸いです。

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最低"3区間"

100mを走るスプリンターは、「100m」という距離を

少なくとも3つの区間に分けて考え、トレーニングを行い、レースに臨みます。

[su_note note_color="#bdfdba"]

  • 加速局面
  • トップスピード維持局面
  • 減速局面

[/su_note]

これが、日本選手権に出場するレベルの選手になると、区分けが4~5になるという。

(転用元:為末大学 Tamesue Academy)

100mのレースでは、どんな人でも、あのウサイン・ボルト選手でも

後半は「減速局面」を迎えます。

よく、陸上100mの中継で実況の方が

「後半伸びてきた!!」と表現することがありますが

実際のスピードは伸びてはおらず(速くなっておらず)

伸びて"見える"選手は、他の選手と比べ相対的に減速幅が小さいということ。

(※どこで、何メートル時点から減速局面を迎えるかにもよりますが)

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バトンパスは単に「バトンをパスする(渡す)だけ」ではない

テイクオーバーゾーン

「テイクオーバーゾーン」という言葉

多くの方は、学生時代の体育の授業で習ったと思います。

「この区間内でバトンパスを行いなさい」

"この区間"のことを、テイクオーバーゾーンといいます。

私が現役の時は、テイクオーバーゾーンは20mだったと記憶しております。

(今はルール改定されて、30mらしい)

陸上競技場のトラックには、テイクオーバーゾーンの始点/終点のマークがあります。

ここで一つ補足説明を加えると

「テイクオーバーゾーン内でバトンパスを行いなさい」であって

次走者がスタートを切る地点の指定は、特にないということです。つまり

次走者は、テイクオーバーゾーンの始点でスタートを切らなければいけないわけでなく

テイクオーバーゾーンの始点より、さらに手前からスタートを切って良いのです。

ただ、これはテイクオーバーゾーンが20mだった私の現役時の話で

テイクオーバーゾーンの始点より手前数メートルからスタートを切っていた私は

30mとなった現在に当てはめると

そのスタート地点は「テイクオーバーゾーン内」なのかもしれません。

(ちょっと余談でしたね)

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オーバーハンドパス

部活動レベルでも、日本以外の強豪国レベルでも

バトンパスの主流は「オーバーハンドバス」だと思います。

次走者つまりバトンの受け手は、前方へ走りながら片方の手を後方へ差し出す。

その際、手のひらは「上」を向いているのが一般的か。

前走者つまりバトンの渡し手は

次走者が差し出した「上向きの」手のひらに

バトンを上から下に移動させて"置いてあげる"イメージ。

この点は、チームによって異なる場合もあり

私の現役時代は、高校でも大学でも

次走者が後方へ振り出した手のひらは"前走者"へ向けていました。

結果

前走者はバトンを、次走者の手のひらに「押し込む」ように受け渡します。

(これも余談でしたね)

「オーバーハンドパス」の利点としては

次走者が後方に腕を差し出すので、その分"距離が稼げる"といわれます。

一方で、次にご紹介する「アンダーハンドパス」に比べ

後方に腕を差し出す際、走者の上体はややツッコミ気味になり

自然な走りのフォームを崩す可能性があります。

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アンダーハンドパス

オーバーハンドパスが主流の中

日本チームは「アンダーハンドパス」の技術を磨いてきました。

「アンダーハンドパス」の利点は「オーバーハンドパス」の問題の解消

つまり

バトンを受ける次走者の腕は、手のひらを下に向け

体側からあまり離れないことで、自然に近いフォームで走ることが可能。

一方で、走者間の距離を詰めないと、バトンの受け渡しができず

ハイスピードの中、互いが適切な距離感でバトンを受け渡すには

繊細な技術を要することになります。

(※私自身はこの「アンダーハンドパス」にチャレンジしたことがないので

正直"肌感覚"で理解はしておりません。)

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バトンパスを"攻める"とは、どういうことか

さて、かなり前置きが長くなりましたが💦

今回のオリンピック、男子4×100mリレー決勝で言われた

「バトンパスを"攻める"」とは、どういう意味か。

バトンパスの局面

[su_note note_color="#fdfb9c"]

  • 時速約40km/hのトップスピードからの「減速局面」1走多田選手
  • 時速約40km/hのトップスピードへの「加速局面」2走山縣選手

[/su_note]

相反するスピード局面の両者が「アンダーハンドパス」を行う。

私が思う"究極のバトンパス"とは…

次走者の山縣選手がトップスピードへ向かう助走として"気持ちイイ"位置で

(この辺りの感覚の言語化は、正直難しい…)

[su_note note_color="#e7f7ff"]

  • 「減速局面」1走多田選手のスピートと
  • 「加速局面」2走山縣選手のスピードが

[/su_note]

合致し、そこでバトンの受け渡しを行う。

そして、「バトンパスを"攻める"」とは

"究極のバトンパス"を可能とする「ただ1点」に限りなく近づけること

このために必要な心・技・体全てのレベルを上げた="攻めた"ということではないか。

「技」について…例えば、山縣選手のスタートを切るマーカー

(「マーカー」とは多田選手が到達した瞬間、山縣選手がスタートを切る、その目印)

そのマーカーの位置をどれだけ"伸ばす"か(場合によっては縮めるか)ということ。

「体」ついて…例えば、あの暑さの中で最高のコンディショニングをすること。

「心」ついて…例えば、強豪国の選手達に惑わされることなく、冷静にスタートを切ること。

しかし、これら全て簡単ではない。

国立競技場(旧国立競技場)で、まさに"あの場所"を走った私の経験則。

(私は、この度の山縣選手と同じ2走を担当)

国立競技場独特な"すり鉢状"のスタンドに囲まれたフィールドに立つと

他の競技場のそれとは違う感覚が襲います。

決勝、スタートの号砲が聞こえる

第一走者がトップスピードで(※厳密には減速局面ですが…)こちらに"向かってくる"。

決勝ともなると、1走時点でどのチームも大きな差は見られない。

待つ側(2走)としては、否が応でも気持ちが急いる。

走るコースにもよるが、セパレートのレーンを走るリレーでは時に

  • 他チームの2走がスタートを切るのが目に入る…(アウトレーン)
  • 他チームの1走が自分の横をすり抜ける…(インレーン)

そんな状況下で、自分の記したマーカーで正しいタイミングでスタートを切る

簡単な作業じゃありません。

それでも彼等4人は、メダルを獲るために「攻める」決断をした。

「攻める」ことの難しさを、僅かながら理解できる身として

結果云々の前に、彼等へのリスペクトの思いが強いわけです。

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まとめ

thanks,

「走る」といった、一見単純な行為ほど、言語化が難しいものはない。

ただ、私自身の事を言わせて頂くと

現役時代は、私に比べ遥かに大柄な選手達と、どうやって互角に渡り合うか

そのために、偶然の"走り"を必然とするため

走る動作一つ一つを言語化し理解し、トレーニングに落とし込んでいました。

関東インカレが私の限界点でしたが

もっと、やりようがあったのでは?と、今での悔いが残っています。

そんな私による、今回の4×100mリレーに関する「講釈」でしたが

いかがだったでしょうか?

拙劣な文章にて、理解して頂くに不十分だったかもしれませんが

テレビに映し出された「あの一瞬」に

少なくともここで言われてるような要素が詰まっている…

そのことだけでも知って頂けたら幸い。

今後のレース、例えば

世界陸上や次のオリンピックの見方が変わるかもしれませんね。

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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