中国・武漢に端を発した新型コロナウイルスが、日本をはじめ世界中に猛威を振るい、
感染者数の増大が、世界各地から報告されております。
今回の新型コロナウイルスに限らず、
毎年、インフルエンザウイルスの発生の際、マスコミ報道で耳にする
高齢者や基礎疾患のある人は重症化する
という言葉。
この基礎疾患の中に、必ず
透析患者
は含まれます。
なぜ、透析患者は、ウイルス感染すると、その症状が重篤な状態になる可能性が高いのか?
透析患者が、自身の免疫力について最低限の正しい知識を身に着けることは、
ウイルスに対する正しい防御策を講じられるだけでなく、
ウイルスの脅威に対し、いたずらに恐怖のみを抱き続ける必要がなくなるのではないか。
今回は、私自身の向学もかねて、
なぜ、透析患者は「易感染性宿主」なのか、
Table of Contents
【透析と感染症】透析患者がウイルス感染すると、なぜ重篤な状態につながる可能性が高いのか?
慢性透析患者の死亡原因(日本透析医学会HPより)
日本透析医学会によると、慢性透析患者の死亡原因は、多い順から
- 心不全
- 感染症
- 悪性腫瘍
- 脳血管障害
となっています。中でも、
感染症による死亡は1993年以降、増加傾向にあるようです。
慢性透析患者が、感染症のリスクが高い理由
感染防御機構の障害
慢性腎不全及び慢性透析患者は、
感染防御機構に障害がある
と言われています。
そこで、ここからは、
一般社団法人 日本内科学会 『日本内科学会雑誌』89巻11号
の内容を引用させて頂きながら、
我々透析患者レベルで理解すべき内容をピックアップしていきます。
生物学的・生理学的因子の障害
記事内容をまとめると・・・透析患者は、
- 皮膚の発汗障害
- 食道における粘膜の乾燥
- 尿量減少による尿路の浄化作用の低下
等があり、生体防御上に問題がある、という。
(同記事では、
内シャントや腹膜透析時の留置カテーテルを通して病原体が進入しやすいということ
も挙げております)
好中球、単球、マクロファージの異常
細菌や異物、老朽細胞などを❝食べて❞くれる食細胞である、
好中球、単球、マクロファージが異常を来たし、よって、
その殺菌能力が低下(走化能低下、貪食能低下等)してしまう、という。
Tリンパ球、Bリンパ球の異常
難しいことはわかりませんが、要は、
各リンパ球の産生能力が低下、数が低下することで、
透析患者の免疫能低下に繋がる、という。
免疫不全の要因
先に挙げた、慢性腎不全・透析患者における、
- 生理学的因子の障害
- 食細胞機能の低下
- 各リンパ球の異常
を惹起(引き起こす)主な原因は下記の通り。
(こちらは、XI.慢性腎不全・透析患者の感染症内の資料をそのまま引用させて頂きます)
表1.慢性腎不全・透析患者における免疫不全の要因
A.腎機能低下による因子
1.尿毒症性物質の蓄積
2.腎性貧血
B.腎不全により促進された因子
1.低栄養状態
2.酸化ストレス
3 .副甲状腺機能亢進
4.必須物質の欠乏:亜鉛,活性型ビタミンD,フィブロネクチンなど
C.透析療法や治療に伴う因子
1.ダイアライザの生体不適合(透析膜一血液相互反応)
2.透析液中のエンドトキシン,酢酸の体内侵入
3.鉄過剰
出典元:一般社団法人 日本内科学会 『日本内科学会雑誌』89巻11号
慢性腎不全・透析患者は、
上記要因を同時に複数で認めれられるケースが多いらしい。
ただ、このような免疫不全の状態は、
透析導入直後の数カ月の期間で著しく、
透析期間の経過とともに改善する、とのこと。
先日、同ブログをTwitterで告示したところ
腎臓専門医/透析専門医であり
現在「心療内科」をご専門とする大武陽一医師から
我々素人である患者にとっては、非常に貴重なご意見・情報の提供を賜りました。
ここに、同返信ツイートをご紹介させて頂きます。
あとは、尿路感染(自尿が減ることによって自然に菌が尿で押し流されなくなる)や、結核も多いです。
また、慢性腎臓病による免疫力の低下だけでなく、現在は透析患者さんの過半数が糖尿病性腎臓病由来なので、もともと糖尿病による末梢神経障害や免疫力低下も相まって感染には注意が必要です。— 内科医たけお@カラダ🧘と心❤の専門医 (@NaikaiTakeo) November 16, 2020
大武陽一先生、ありがとうございました。
(追記:2020年11月17日)
慢性透析患者が感染防御能を向上させるためには・・・
慢性腎不全・透析患者の感染防御能を向上させる対策
資料内にいくつか挙がっておりますが、
その中から、私が考える
通院透析に比べて、在宅血液透析でより補完しうる項目を2点
充分な透析量の確保による尿毒症物質の除去
同記事内で、HDP (Hemodialysis Product)という指標をご紹介いたしました。
透析効率の指標の一つで、
1回の透析時間×(1週間の透析回数)の二乗
で表されます。
ここで、通院透析と在宅血液透析を比較してみます。
通院透析の場合、1回透析時間4時間と仮定すると、
4時間×9(3回の二乗)=36
在宅血液透析を行う私の場合、1回透析時間は約3時間、1週間の透析回数は6回なので、
3時間×36(6回の二乗)=108
この「108」という値が、生命予後に直結するかどうかは不明ですが、
単純な数値の比較では、
通院透析よりも在宅血液透析を行う私の方が、透析量を確保している
とは言えると思います。
適切エネルギー・蛋白質摂取による栄養状態の改善
上記に述べたように、
通院透析に比べて、多くの透析量を確保できている私は、
日々の食生活で、その摂取を気を付けたり、制限したりすることは、あまりありません。
食べたいものを、食べたいだけ食べる
もともと小食なので、食べたいだけ食べるといっても、度が過ぎた量を摂取することはありません。
しっかり食べて、しっかり透析する
これは、在宅血液透析の特徴の一つです。
通院透析患者であれば、
リンの過剰摂取を懸念して肉・魚類のタンパク質摂取を制限するところですが、
私の場合は、むしろ透析によるアルブミンの減少を気にするほど。
「適切エネルギー・蛋白質摂取による栄養状態の改善」
という点では、腎移植後当時より、むしろ良いのでは、とも思います。
まとめ
にもあるように、まずは、
慢性透析患者・透析患者自身が、
「易感染性宿主」
要するに、種々のウイルスに感染しやすい身体であることを、十分認識することが大切です。
その上で、
患者自身で感染防御能を向上させる対策がとれるもの、とれないものを知ることも大切でしょう。
実は私自身、今回の記事をまとめる前までは、
ウイルスに対して、少々甘い考えを持っておりました。
それは、在宅血液透析を行っていることへの、過度の自信からくるものです。
しかし、違うんですね。
各種の免疫細胞が、その本来の機能を失っているなんて、知りませんでした・・・
腎移植手術の頃から今の今まで、
自己管理を怠ったことはありませんが、
透析患者としての自身の身体の状態を今一度理解し直すことが出来たことは、
非常に有意義であったと、思います。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
2021年4月21日追記
COVID-19の爆発的流行時においては、医療資源の制約に基づき、無益性も考慮してよりよい結果(健康状態の回復)が得られると期待される患者に優先的に資源を振り分けるという観点から、人工呼吸器などの生命維持装置を用いた治療の差し控え・中止が発生する状況も想定しなければなりません。
他人事ではないですね…