新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るう中
私も含め
多くの血液透析患者が心配しているのは
自分が新型コロナウイルスに感染してしまった場合
- どのような症状に陥ってしまうのか
- 他の健常者と比べて、症状は異なるのか
ということかと思われます。
調べていてもなかなかそういった事例報告が見つからなかったのですが
今回
AJKD(American journal of kidney diseases)というサイト内に
COVID-19 in Hemodialysis Patients: A Report of 5 Cases
という、
中国武漢での
維持透析(MHD)患者で罹患した5人の症例報告
がございました。
専門的内容も一部含まれておりますが
具体的にどのような症状が出現したのかが分かります。
【透析と感染症】維持血液透析(MHD)患者が新型コロナウイルスに罹患した症例
はじめに
まず、我々が理解しなければならないことは
血液透析患者がCOVID-19に罹患した際
- どのような症状がでるのか
- 最適な治療法はあるのか
などを、完全に把握し理解するには
まだまだ時間がかかる、ということ。
同報告記事にも
Some symptoms of dialysis patients with COVID-19 disease
may be difficult to
distinguish from other symptoms common among patients on dialysis.
COVID-19に罹患した透析患者の症状は
透析患者に一般的に見られる他の症状と区別するのが難しい。
ということ、そして
Further observations will be needed
to more fully understand the full spectrum of
clinical features and optimal diagnostic and treatment
approached for
of COVID-19 disease in hemodialysis patients.
血液透析患者におけるCOVID-19疾患の
臨床的特徴と最適な診断および治療の
全範囲をより完全に理解するには
さらなる観察が必要です。
との記述があります。
症状の内訳
対象となった患者は5人。
年齢は47〜67歳。
5人の患者のうち2人は女性です。
症状の内訳としては
- 下痢(Diarrhea) 4人/5人中
- 発熱(fever) 3人/5人中
- 疲労感(fatigue) 3人/5人中
- 呼吸困難(dyspnea) 2人/5人中
- 腹痛(abdominal pain) 2人/5人中
- 乾いた咳(dry cough)1人/5人中
上記以外の報告事例として
全ての患者で
リンパ球が減少(Lymphopenia)した。
また
- 鼻漏(rhinorrhea)
- 喉の痛み(sore throat)
- 筋肉痛(myalgia)、または
- 他の上気道感染症の兆候(upper respiratory tract infection symptoms)
を示した患者はいなかった。
さらに
- 急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome/ARDS)
- ショック(shock)
- 多臓器不全(multiple organ dysfunction)
など、重篤な合併症を発症した患者や
死亡した患者はいなかった(2020年2月13日まで)。
特筆すべき報告
リンパ球減少(Lymphopenia)
一つには
全ての患者に見られた
リンパ球減少(Lymphopenia)
に注目しております。
というのも、前記事
で勉強しました
- 好中球、単球、マクロファージの異常
- Tリンパ球、Bリンパ球の異常
に関連する記述が
同報告記事にもあります。
It has been confirmed that
T-cell immunity plays a key role in recovery from SARS-CoV infection.
Because
the uremia status is associated with extensive impairment of
lymphocyte and granulocyte function,
an abnormal immune system may alter their response to SARS-CoV infection.
T細胞は
COVID-19感染からの回復に重要な役割を果たすことが
確認されています。
尿毒症状態は
リンパ球および顆粒球の機能の広範な障害
に関連しているため、
異常な免疫システムはウイルス感染に対する反応を変える可能性がある。
下痢症状
もう一つ、特筆すべき点として
下痢症状(diarrhea)
に注目しております。
一般的に
新型コロナウイルスに罹患した患者の症状としては
- 発熱
- 咳
が知られるところです。
同記事でも
In a retrospective study of 1099 patients with COVID-19 acute respiratory disease,
fever and cough were the dominant symptoms,
whereas vomiting and diarrhea were rare.
新型コロナウイルスに罹患した患者についてのこれまでの研究では
発熱・咳が主な症状だったが、一方で
嘔吐・下痢は稀であった。
今回の症例では
殆どの患者(4人/5人中)に
下痢症状が見られています。
同記事では
In addition to fever and fatigue,
diarrhea was also common in our dialysis patients.
発熱と疲労感に加えて
我々の透析患者では下痢も一般的であった。
と表現されています。
まとめ
冒頭で述べたように
透析患者が新型コロナウイルスに感染してしまった場合
- どのような症状に陥ってしまうのか
- 他の健常者と比べて、症状は異なるのか
について、現在のところ
一般向けの情報は少ないように思われます。
このことは
現在まで透析患者の感染事例が少ないことも意味し
それはそれで安心材料ではあるのですが、
感染したらどうなってしまうのかについて
多少の予備知識は取り入れたいと思うのが心情。
今回の報告記事にもありますように
血液透析患者におけるCOVID-19疾患の
臨床的特徴と最適な診断および治療の
全範囲をより完全に理解するには
さらなる観察が必要
とのことなので、
我々、特に透析患者は
今の状況を静観しつつも
巷に溢れるfakenewsに惑わされることなく
正しい情報をキャッチする
確かな目を持つ必要がありそうです。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。