今回は
在宅血液透析(HHD)における
「物品発注」について、ご紹介致します。
在宅血液透析を行う患者は
血液透析に必要な医療物品の在庫管理及び発注業務も
患者自身で全て行います。
透析の回数・時間は、患者それぞれ
在庫の考え方も、患者それぞれかもしれません。
現在、HHD導入を検討されている患者様が
導入後のイメージを少しでも膨らませることができるよう
【在宅透析の物品】在宅血液透析の物品発注について
必要日数の算定
これからご紹介する物品全てに共通することですが
物品の必要日数の算定(=予定透析回数)、つまり
在庫確認日から起算して何日分必要か
これをまず決めていきます。
現在の管理医療機関からは、発注の締めは毎月20日と指定されておりますので
在庫確認は、大体毎月10~15日の間に行います。
配送日は翌月初。
曜日が指定されておりますので、自ずと日にちは決まります。
そこで
発注数算出の基準となる、この物品の必要日数ですが
私の場合、在庫確認日を起算日として
翌々月の配送予定日までの日数分+α
というのを、自分の中でルール化しております。
+αの部分ですが、最近は+2週間で落ち着いてます。
土曜日を除いて、ほぼ毎日透析を行っていることも、在庫の安定化に寄与しているかも。
というのは
透析スケジュールが、隔日や週5回(3日連続透析-1日休み-2日連続透析)だった時
+α部分を1週間で発注かけてしまったことで、在庫切れを起こした苦い経験があるのです。
在庫切れを起こしてしまう原因として考えられるのは
日々の透析が必ずしも予定通りにはいかない、ということが挙げられます。
このことは、予定数よりも物品を多く消費してしまうことを意味します。
例えば、透析を開始したものの
脱血不良で一旦セットした物品全てを撤収、再プライミングして透析再開、とか
透析中体調不良で強制終了、透析時間が少ないので
翌日休みの予定を変更し連日透析、などなど。
だからといって、在庫切れを心配して多く発注しすぎると
物品庫スペースの許容量をオーバーしてしまい
置き場に困る可能性も。
これまで色々試した結果、私の場合たまたま+αの部分が2週間だ
ということです。
透析物品一覧
血液透析に必要な物品は、下記の通り
メモ
- 透析液
- 生理食塩水
- ダイアライザー
- 血液回路
- ヘパリン(抗凝固剤)
- 穿刺針
- 消毒綿(ヘキシジン)
- 消毒キット
- シリンジ
- 洗浄用次亜塩素酸
- 洗浄用酢酸
これから、私が日ごろ発注で意識していることを
個別にご紹介して参ります。
透析液
透析液の発注には、非常に気を使います。
というのも、万が一自宅で在庫切れを起こした場合
透析液以外、例えばダイアライザーや血液回路、ヘパリン等は
月一度の外来診療時、場合によっては緊急で来院して
必要数を頂いてくることも可能といえば可能。
なぜなら大きさ・重量的に、これらの物品なら私でも持ち帰られるから。
過去に一度
生理食塩水を外来診療の帰りに、持参したバックに3パック程入れて持ち帰ったことはあります。
自宅から病院までdoor-to-doorで1.5hほどかかるので
約3㎏を持ち歩くのには多少骨が折れましたが。
ここに注意
くれぐれも誤解のないように。
自分の発注ミスで、このようなことをしないことが大前提。
病院はじめ多くの関係者の方々にご迷惑をおかけするので、絶対に避けるべき。
しかし、透析液だけはそうはいきません。
参考
- 透析液6㍑タイプ1セット約12㎏
- 透析液9㍑タイプ1セット約18㎏
患者が電車の行き帰りで持ち運ぶ類の代物ではありません。
もちろん、透析が生命維持的な要素を含んでいることから
透析をやらないという選択肢はないので
万万が一、在庫切れを起こしてしまったら
自家用車で病院へ乗り付けて運搬するなり
追加の配送料等を支払って配送してもらうなり
理論上は可能でしょう。しかし
どれほどの関係者の方々にご迷惑をおかけすることになるか。
そんなことを考えると、透析液発注数の算出には、どうしても気を使ってしまいます。
私の現在の透析スケジュールは週6回
メモ
- 月曜日から金曜日の5日間は3h透析
- 土曜日の休みを挟んだ日曜日は4h透析
タイプ別の使用状況ですが
メモ
- 透析液6㍑タイプ1セットは3h透析×連続2日
- 透析液9㍑タイプ1セットは4h透析を行う日曜日と翌月曜日の3h透析
消費量ですが
透析液6㍑タイプの場合
実際上、3h透析を2日連日行った後には、殆ど残っておりません。
透析中の消費に加え、毎回のプライミングでの消費もあるでしょうから。
一方、透析液9㍑タイプは
4hの透析+翌日3h透析を行った後も、それなりの量は残ります。
ただ、病院側からは
透析液の品質の問題を考慮し、3日間は使用しないように
との指示を受けておりますので、それ以上の日数は使用しません。
となると、単純計算で
1週間の必要数
- 6㍑タイプ×2セット
- 9㍑タイプ×1セット
1カ月の必要数
- 6㍑タイプ×8セット
- 9㍑タイプ×4セット
ということになります。この考え方と、先に述べた
物品の必要日数(在庫確認日を起算日として翌々月の配送予定日までの日数分+α)
とを加味して透析液の必要数を算出し
そこから在庫数を減算した数を、発注数量とします。
生理食塩水
透析液同様、生理食塩水の発注にも非常に気を使います。
前述したように、透析液と比べて最悪在庫切れを起こしてしまった場合
直接病院へ取りに行って持ち帰ってこれるという、心的担保は(好ましくはありませんが)あります。
ただ、生理食塩水は透析をした日数分、消費します。
加えて、先に挙げた透析中のトラブルに見舞われた際
透析液はそのままのタンクを使用できますが
生理食塩水の場合は、返血・回収作業で全て中身を使い切り
新たにプライミングする際は新しい生食パックを使用するので
予定数より多く消費する確率が高い物品の一つなのです。
しかし、発注数の算出自体はシンプルで
発注数=必要日数-在庫数
1セット5パックなので、そこを間違わなければ大丈夫。
(例えば、20パック必要の場合4セットで発注するところを、誤って「20」としないように。)
ダイアライザー・血液回路
ダイアライザーと血液回路は、生理食塩水と同様の❝性格❞を持っております。
つまり、予定数より多く消費する確率の高い物品です。
理由は、生理食塩水で述べた内容とほぼ一緒。
とはいえ
両者とも1ロット24個なので、大雑把な発注数で結構かと。
ただ
備品庫の余剰スペースを考慮せず、いたずらに「3セット」などと注文すると
荷姿が大きな段ボール状なので、後で置き場所に困ります。
大雑把とはいえ、1箱にするか2箱にするかくらいは、気を付けます。
ヘパリン
ヘパリンも毎日使用し、上記生理食塩水、ダイアライザー、血液回路同様
予定数より多く消費する確率の高い物品。
1ロット10個。
バラの状態では3~4個1掴みできる程度の大きさ、もちろん重量もないので
最悪、病院から持ち帰る際もあまり苦労はしない物品です。
とはいえ、重ね重ね申し上げますが
不必要なご迷惑を病院におかけしてはいけないので、発注は他の物品同様慎重に。
穿刺針・消毒綿
穿刺針と消毒綿は、毎月発注する物品の中では一番気を使わない物品といえます(個人的には)。
参考
- 穿刺針は1箱に50本
- 消毒綿は1箱に60枚
毎回の透析で
穿刺針は脱血側・返血側で2本使用
消毒綿は同じく脱血側穿刺部位・返血側穿刺部位を消毒するのにそれぞれ1枚ずつ使用。
穿刺ミスをした分だけ予定数より多く本数、枚数が消費されるものではありますが
1ロット内の個数が多いことと、「未開封のものが最低1箱あればよし」との自己基準があり
その基準を満たしていれば、開封済の中身を細かく数える必要もないかと思って、シンプルに
毎月、穿刺針×1、消毒綿×1
がオーソドックスな発注数となっております。
その他
その他の物品としては
「消毒キット」「シリンジ」「消毒用次亜塩素酸」「消毒用酢酸」
これらについては前回の
在宅血液透析(HHD)を支える陰の立役者「透析備品配送担当者」をフィーチャーする
で記載した内容と重複しますが・・・
「消毒キット」は1ロット360個
毎回の透析で使用するとはいえ、360パックもあれば1回の発注でしばらく、もつ。
「シリンジ」は1ロット100本
透析中、静脈圧が上昇し、その原因が返血側針先に血栓が形成された(であろう)場合に使用する。
頻度はさほど高くないので、これも1回の発注でしばらく、もつ。
「洗浄用次亜塩素」の内容量は1本1800㎖
毎回の透析後の透析機器自動洗浄の際使用。
「洗浄用酢酸」の内容量は1本500㎖
自動洗浄の際週一回、次亜塩素酸消毒に加え酢酸洗浄が行われる際に使用。
こちらも、毎月発注するような物品ではありません。
しかしながら逆に、毎月発注していないぶん
いつのまにか残り僅かに、なんてことのないように、日々それとなく気にはしております。
まとめ
この度の新型コロナウイルス感染拡大において
透析患者つまり❝施設血液透析患者❞の感染リスクが非常に高い旨
各種メディアでも取り上げられておりましたが
HHDの私自身は
「STAY HOME」を実践し、必要な外出時の感染防止対策は徹底していたので
多くの透析患者様に比べると、幾らか不安感は少ない方かな、と。
ただ注意していたのが、今回のテーマであった物品の発注。
自宅で血液透析ができると言っても
そもそも必要な透析物品が欠品してしまったら、当然ながらできないわけで。
医療従事者が必要とする医療品が不足し、物流機能も停滞している
という報道は耳にしていたので
発注した物品が正しい数配送されるのか、非常に心配しておりました。
幸いにも現在まで、欠品や遅れなどは一切なく
普段通りの透析ができる日常にあります。
これもひとえに
在宅血液透析に関わる多くの方々のご尽力の賜物。
感謝の気持ちを忘れず。
巷では「気の緩み」などど言われていますが
引き続き気を緩めることなく、自己管理の徹底を図って参ります。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。